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しおりを挟む護衛の数が増えた………
どうしてだろう?減らしてと伝えたはずだ。クーパーが間違えるはずもない。
なんであんなに可愛らしいレンを守る為に護衛を割かないのか本気で疑問が浮かぶ私は、今日の訓練が終わった後、王の元へと向かった。
忙しいらしい王からは後日…という返答をクーパーが持ち帰って来たけど、待てない。
なので、突撃です。
騎士団と神殿内?というか、私の部屋を行き来しかしない私は王宮では目立つらしく視線が鬱陶しい。
「会議中ですので、こちらに」
いつだって国は会議ばかり。
そんな必要あるのかな?
だって私が………
「こちらです」
どうやらこの間の会議室と同じ場所で話しているらしい。
クーパーが扉を叩こうとしたので止めて、私だけが室内に入る。
「聖女?」
「護衛を減らして」
どうして増やしたの?とは言わないでおくね?みんなの前で怒られる王っていうのもどうかと思うからね。
「へ、減らしたぞ?」
王は嘘を付くのが下手みたいだ。
はぁ…と、1つ、ため息を吐く人がいたからその人の方が理解してくれそうだと声をかけてみる。
「護衛多い」
「あ、ああ、悪い、いや、申し訳ございません」
「敬語敬称不要」
「あ、ああ」
王の伴侶なんだろう、いつも王が纏っている匂いの人は呆れてる?のかな?そんな雰囲気。
「16人」
「そんなにか!?おい!」
「ぅ゙………」
ふむ。
今度から王に言わず伴侶に話を通そう。
「クーパー椅子」
「はい」
私が預けている椅子を空間収納から取り出したクーパーは伴侶の横にと置いてくれる。
お世話はされよう精神なのでなんでもかんでもお願いしてるのだ。
「ヒナノ、名前教えて?」
「ベンジャミン・ウォーカー………王妃だ」
「ベンジャミン、王がわがまま」
「そうだな」
「ぅ゙………」
ベンジャミンはピンクにも見える紫の髪色をしていて、猫目の可愛らしい………
どっちも受けにしか見えないぞ?待って?待ってね?2人とも受けにしか見えないよ?どちらも…なんて事はあるけど、それは私が許さないかな?どちらも受け手であって欲しい!
「へ、減らした!聖女の気のせいではないか?」
「「へぇ?」」
「ビクッ!!!」
わざとらしく指をパチンッ…と鳴らし、私の周りに居る護衛を会議中の机に乗せた。
ぐえっ!だの、ぐあっ!だの言いながら折り重なっている護衛達を指差して…
「気のせい?」
「………す、すまん」
「2人にしてくれたら許します」
「そんっ!」
「おい」
「ぐっ……分かった」
話がある時はベンジャミンに言いに行かせよう!
「ベンジャミン友達になって?」
「あー……その、王妃だ」
「聞いた」
「………もう戻った方がいい」
「うん、遊べる時教えて?」
「ああ………」
王妃と友達になっちゃいけない国だったかな?
「ベンジー!」
「うるせぇ」
そういう事でもなさそうだ、王はなんだか嬉しそうだから、気にしないでおくか。
会議室を出て部屋に戻る私の後ろには護衛が2人。
うん、これならレンの護衛も戻せるよね?16人てなんだよ、多すぎるだろ。
それにしても…
ベンジャミンが受けっぽい………
うん。
現実を受け入れて新たに友達となったベンジャミンに似合う夜着でも作ろう。
*********************************
【ベンジャミン・ウォーカー】
「聖女召喚を試してみたい」
そんなことをランドンから言われた。
弟のレドの容姿についてガキの頃から“こんなくだらないことをやめさせてやる”と、意気込む姿を側近として見続けている。
俺から言わせれば理想主義。
そして、今までの風習などくだらない事をなくしていきたいと思ってる奴は、時期国王で
なければすぐに潰されて使い物にならなくなってるだろうな。とも思う。
そして、新しい事が大好きで子供みたいな奴。
俺を王妃なんかにする馬鹿な奴でもある。
聖女召喚。
確かに淀みはひどくなる一方だ、被害も甚大とくれば、眉唾モノでも試したくはなるだろう。
いつからその書物はあるか分からない。
けれど、気付けばそこにあった。あまりにも曖昧な内容と歴史がない事からいたずらだろうとは思う。
だけども、試しても害はないならやってみてもいいんじゃねぇか?というのが俺の心境。
「いいんじゃねぇの?」
「っっ!そうか!賛成してくれるか!」
なんて、まるで俺が最終決定を持っているような言い方をする。
まぁ、小さい頃からよちよちと俺にくっついて俺のやることなんでも真似したがる奴だったからそういう思考が染み付いてるのかもしれねぇな。
聖女召喚をする事に決め、臣下たちを集め弟のレドも王宮に呼び出し話し合いをしていく
が、大体俺とレドが集まれば…
「男で王妃など………まだ居座り続けるか」
「弟がアレで王も気が狂ってるのではないか?」
「にしても相変わらず醜悪な………」
「やめておけ、王の耳に入ったらどうする」
「王妃など所詮お飾りだ、見目は良いが男ではな………」
「側妃なら問題ないであろうに………」
なんて口汚く罵る奴らばかりだ。
どうせならと、わざとレドの側に居て言いたい放題言わせておく。
「王妃、相変わらず趣味が悪いですよ」
「いいじゃねぇか、一緒になってれば言いやすいだろ?」
「はぁ………」
どうせ召喚は決定事項だ。
このままあぶれ者同士傷でも舐め合ってればいいだろ?
話し合いにもならねぇ会議は王の独断で決まったような聖女召喚に、期待してる奴は多くない。
*********************************
「ベンジー!ベンジー!娘が出来たぞ!」
なんて言いながら部屋に入ってきた馬鹿にクッションを投げつける。
「あ゙?」
聖女召喚には赴かなかった。万が一気に入られても困るからだ。
「い、いや、間違えた!いや!間違えてはいない!聖女を娘にしたい!」
なんてもっと訳のわからねぇことを言い出すから一から話せと脅しのような声をかけた。
つまりなんだ?“綺麗過ぎる”ということか…
まぁ、でも美醜で騒ぐのはこいつにしては珍しいな…別に俺に嫌はねぇよ。
ただ、聖女が嫌がるんじゃねぇかとは思ったが口には出せない。
面倒くさいことになるからな…
だが、暴走気味だから騎士はそのままでいいとは進言したが聞いちゃいねぇ…
その後の聖女の噂はすごいもんだった。
曰く、美醜が狂っている。
曰く、聖主に押し迫っている。
曰く、宝石や娯楽に興味がない。
曰く、この国に慣れる為歴史やマナーを学んでいる。
曰く、精霊様のような美しさである。
曰く、誰にも敵わない力を持ち合わせている。
など、他にも挙げたらキリがないほどの噂が流れてくる。神殿側がイメージの為に流した嘘かとも一瞬思ったが、ランドンが持ち帰る話も同じような内容で、そんなのは人間じゃなく精霊でも召喚したんじゃねぇの?とは、内心思ってた。
そんな俺達の元に突如現れた聖女は“護衛が多い”と不満を言いに来たが、ランドンではなく何故か俺に言いながら横に座ったんだ、気安く、王妃だと伝えても気にせず、俺に相談のような口調で話し、“友達になって”と言い残し立ち去った部屋では会議どころじゃなくなってた。見た事はあるんだろうが、美しさと強さに圧倒されて興奮してんだろう。
「ベンジー!ベンジー!良かったな…!」
「うるせぇよ!」
ランドンも別の意味で興奮して俺に話しかけてくる。
こいつが俺を王妃なんかにしたせいで友達も居なく、周りからの視線が煩いんだと悔んでいた。
「友達だぞ!」
「だからうるせぇな!?早く大人しくさせろよ!」
「む…」
悔やむんじゃねぇよ。
俺だって望んでお前の傍に居んだから。
「静まれ!」
ったく、そんな風に俺の前でも堂々としてろ。
会議が再開されたが俺は…他の奴もそうだろうが、聖女の姿が消えてくんねぇ。
気安く接してくるのに、高貴さは失わず思ったことだけを口に出し目で語る。そんな方だった。
友達になりたいと言ってくれ、男の王妃に目もくれずただ不満を言いに来た麗しい彼女を思い出す。
噂はただの噂でしかない。
噂では語れない素晴らしさがある事を初めて痛感した。
そこから文通が始まり手作りのぬいぐるみや、一生着ないであろう手作りの夜着など、本当に友達としての付き合いが始まるとは誰が思うんだよ…
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