聞こえてますか!?聖主様!(格好良すぎて聖主以外目に入りません)

ユミグ

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固まっちゃったレンを無理矢理椅子に座らせてから膝に乗れば元通り。

どうしてか腕は回らないけど…!なんなら膝の上に居る私を極力触らないようにしているけれども…!

気にしない!

気にしたら負けだ!

「聖女様は豪胆なお方ですね」

私の宣言の後でも構わず、宣言したからこそ声をかけてきた人。

「座る?」
「よろしいのですか?ありがとうございます」

レンと同じくらい所作が綺麗だ。レンも意識を取り戻してお仕事顔になってる。

「精霊様を見れるなど…いやはや…領地から出た甲斐がありましたねぇ…」
「クーパー要る?」
「先程の側仕えですか?若造を鍛える趣味はありませんのでご遠慮させて頂きます」

なんだ。クーパーの教育に相応しい人だと思ったんだけどなぁ…残念だ。

私はレンしか見てないからそこまで教育してあげられないから丁度良かったんだけどな。
ご褒美に紹介した者も気まぐれだろうし。

「聖主はどうです?」
「口説いてる最中なの」
「ヒ、ヒナノ…!」
「若さはいいものですなぁ…聖主も顔付きが良くなった」
「…ありがとうございます」
「だがまだ若い」
「っ」

レンはこの人が苦手みたいだ、そして王も苦手なのか警戒してチラチラと見ている。

「レン」
「はい」
「若さは悪い事じゃないよ、捉え方次第だよ」
「はっはっはっ!」

お、驚かせるんじゃないよ…そんな腹から声を出すような雰囲気なかったじゃん…どちらかといえばねっとりひそひそ話してたじゃん。

「これ以上は私が危うくなりそうだ、失礼」
「伝言お願いしてもいい?」
「…」
「ヒナノ?」

淀みを意図的に発生している者の側に居る可能性は低い、そもそも関わりがないのかもしれない。

でも歴史は知ってると思う。

この人は歴史を知っても尚この国に居る人間だ。

それは貴重だと思う、そしていい人だとも思うから。

「私は浄化を続ける」
「…」
「けれど言いたい事があれば聞くと」
「……私からでもか?」
「どうぞ」
「…」

少しだけ考えてから無言で席を立った。

「ヒナノ?」
「秘密」
「そうですか…」

なんと…!また腕が回っている!

「先程の方はラッセル・スタンリー前辺境伯です…」
「苦手?」
「昔から王家と敵対しているのです、辺境に住まう方々なので理解出来ない事もあるのでしょう」
「レンも理解出来るといいね」
「っ」

レンはきっと相手を理解して寄り添いたい気持ちもあるんだろう。兄である王を慕ってはいるみたいだけど、それでも全ての否定を頭ごなしに拒絶する人じゃない。

「はい…」

幸せだ…

レンが少しだけ私の肩に顔をうずめて、お腹に当たる手がしっかりと私のお腹を支えていて…

「はぁ…」

悩ましげな…!艶のある吐息が私の肩にかかるのは…!もう!もう!

「一緒に寝たい」
「私もです」
「!」

淀みなく言った!確かに言った!聞こえた!?ねぇ!クーパー聞こえ………

なに怒ってるの?

「私を捨てるのですか?」

クーパー…その言い方はまるで私が教育を途中で放り投げているみたいだよ?

「いい環境」
「っ、それでも私はあなた様に仕えたい!」

わ、分かったよ…そんなに大きな声で言わなくても大丈夫だよ…また周りが騒がしくなっちゃうでしょ?

うんうんと何度も頷けば怒りは収まっ…多少は収まったのかな?

「ヒナノ説明出来るか?」

王とベンジャミンが来た。

ようやく貴族を捌けきったところなんだろう。

「全部言った」
「ずっとレドの側に?」

うんうんと頷く視線の先にはレンが置いてある金平糖の瓶の中で精霊が寝ている。

「精霊は存在するのか?」
「どう思う?」
「言えねぇのか?」

ベンジャミンにそう問われるけど…言えない訳じゃない。

でも言ったら2人共頭を下げに行かなきゃいけないところが出来てしまう。

知らないというのは罪なのか、知らないからこそこれ程の被害で済んでいるのか…あの子にとってはどちらか分からない。

「知りたいなら調べたらいい、先人達の本はたくさんある」
「「「…」」」

そんな事よりもう顔見せ終わった?レンとデート……デートが出来るなんて約束してない…

「デート…」
「連れて行きたい場所があります」
「行く」

やったぁ!デートだぁ!

その後は一緒に寝るでしょ?伴侶になるでしょ?ずっと一緒でしょ!?

私の告白聞こえてたよね!?

大丈夫。今は嫌でもそのうち愛情が芽生えるかもしれないから!頑張るからね!

仕事手伝う!?

なんでもするよ!

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