聞こえてますか!?聖主様!(格好良すぎて聖主以外目に入りません)

ユミグ

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「そのようなお顔をしても手伝いません」
「…」

クーパーの反抗期が早くも訪れてしまった…

顔見せは恙無く………終わらなかった………

精霊が居るだの、聖主は王都から出してはいけないのでは?なんていう馬鹿が馬鹿な事を考えて、レンを引っ張り出した…というか、引っ張って持って行かれたよ…

あの日の会議は長引いたらしく、その後の仕事も詰まって昨日も会議………

クーパーは預けようとしたのが気に食わなかったみたいで反抗しだしたので、レン突撃に協力してくれない…

つまり2日も顔を見ずに騎士と神官を連れた、魔物討伐に行く日になってしまった。

「ヒナノ様が私に対するお気持ちは理解致しました」

うんうん、預けた方がより良い教育を…

「ですが」
「…」
「気持ちが追いついておりません」
「はい、ごめんなさい…」
「なっ!?あや、謝る事などなさらないで下さい!」
「心が育っていないと理解していなかった私が悪いです」
「そっ…!?そのような言い方ではまるで子供扱いです!」
「…」

また怒っちゃった…

どうしよう…クーパーは私の子どもみたいに思っちゃってたから教育にも力を入れてたんだけど…

そうだよね…

勝手に子どもに思われても嫌だよね…最近誰とも関わっていなかったから接し方をまだ忘れてたみたい…

「………子供で結構です」
「今日は連れて行かない」
「………前言撤回致します」
「…」

子どもでいいって言ったのに…自慢の我が子だからこそ連れて行ったら簡単に討伐出来そうだから、親として却下してみたのに…

子どもって難しい………

そういえばレンの側仕えだったんだよね?ならレンにアドバイス貰おうかな!?今日の討伐には来るって聞いたし!来なかったらいつまででも待つし!

「「大丈夫か?」」
「…」

王とベンジャミンがやって来た…私の親というか、心配性な2人は何かあるとこうして訪ねてくる。

別にいいんだけどね?レンがいいなぁ?なんて、思ってないよ?

うんうんと頷くけど心配なのか、不安そうな表情だ…それなら聞きに来なければいいのに…

あ。

「反省会する」
「「反省会?」」
「戻って来たらすぐに反省会、参加する?」
「ああ」「用意しておこう!」

最近のクーパーは大人しいから2人の忙しなさが目立つな。

「私も参加します」
「クーパーの為でもある」
「っ、はい!」

見たら必要ないと思うでしょ。まだまだみんなの訓練が必要だと理解してもらえたらいい。

「整いました」

椅子から立ち上がり歩く私の視界には慣れしたんだ家具、私のサイズに合わせてある私が作った家具はそのうち変わる。

この国で作っているみたいだから。

大きすぎず小さすぎない家具が結局は使い勝手がいい。



*********************************



「レン!」
「ヒナノ、おはようございます」
「!」

だ、抱き上げ…!?まさかの抱っこですか!?

「レン好き」
「…必ず仕事を終わらせます」

それって…!?それってつまりそういう事ですか!?

訓練場に着いたら早々に抱き上げられた私はレンが真面目に小隊の構成を最終確認しながら、団長達とあーでもないこーでもないといつまでも長く……

え?いつまで続くの?

「行かないと分からない」
「「「「「「「「「…」」」」」」」」」

そんな想定に想定を重ねたところでどんな魔物かすら分かっていない場所に行くんだから話し合ったって仕方ない。

それもこれも調べが足りない能力不足だ。

そんなに心配なら下調べしておけばいいのに。

「聖女様の言う通りだ、不足しかねぇんだ」
「…そうですね」

ちなみにクーパーはまだ怒ってるみたいで、転移陣に1人で魔力を流すと言い出した。
さすがにこの人数を1人で運べないと止めたけど…

「「…」」

不満そうです。

「行けるぞ聖女様」
「敬語敬称不要」

そろそろ団長の敬称も取れないかな?訓練中は聖女だのヒナノだの言いまくってるじゃん。



*********************************


【レドモンド・ウォーカー】



転移はもっと目に見える全てが歪む…なんて想像していた。
ヒナノに教わりやったことはあるが、ひどい酔いが襲ったのを覚えている。
曰く魔法陣からはみ出さず、正確な魔力さえ流せればそんなことにはならないと、そんな事を言っていた。

「敬語敬称不要」

聞き馴染みのある言葉を吐いたヒナノとクーパーは一瞬で転移陣に魔力を流してしまわれたのか…

「準備」

小さな、けれど、はっきりとした声が聞こえた直後、私達は森の中に居た。
そんなにも違和感なく転移が出来た事実に動揺していたらヒナノが腕から消えた…その後魔物の気配に気付いたが………遅すぎる…!

団長がいち早く動き、魔獣討伐をしながら皆を位置につかせていく。

ドオオオオオオオンッッッッ!!!

音がしたと思ったら土が盛り上がって降ってきた。

「おい!聖主様ぼさっとしてんじゃねぇ!動けっ……!!!」

そんな団長の怒号でやっと体を動かす事が出来た。

ヒナノが何処へ消えたのか探したいが、襲いかかってくる魔物の対処で精一杯…

数十匹の魔物が群れているだけだと油断している私の目の前に魔獣が一斉に溢れ出てきた。

そう、突如として目の前に現れたのだ…倒していた魔物よりも凶暴で凶悪な魔物が…

今、ここに現れた?なぜ?
むしろ何故今まで疑問にならなかったんだ…魔物はどこから生まれ…一体何が母体となって…

「ヒナノ!」

土の中からヒナノが出て来たが、傷1つない様子で安心した。

ギュワァァァァッッッ!!!

「なっ!?」

魔物達は一斉にヒナノへと襲いかかるのを見て無理矢理に体を動かし魔法陣を放つ。

「訓練通りにやれ!焦るな!」

動揺し無駄な魔力を放っている者達へと注意する。教えて下さった事は正しいのだ、だからそれ通りに動けばいける…!

魔獣を討伐する為に…!
ケガを負わせないように…!!
騎士達も離れヒナノを襲う魔物を追うように討伐していく。




あれが核なのですか…………?

とても綺麗なモノ、何故かよく似合うと思ってしまった核を両手で持ち詠唱を始めている…

核の浄化には7分必要だと仰っていた、それならばその間の討伐は私達の役目…!

魔獣なんて居ないかのように振る舞い核の消滅の為に動き詠唱するヒナノは何故かキラキラと光輝いている気がする…

まずいっっっっ!!!!

右端の視界から外れたところから魔獣がっ…!団長も気付いてすぐ剣を振るが…

「ヒナノっっっ!!!!」
「✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼!!!!」

魔獣がヒナノの腹を食いちぎる…そして苦痛な顔をして聞いた事のない言葉を叫ぶ…何故詠唱を止めて攻撃をなさらないのか…!

もう一匹が首を噛もうとしているのを見て魔法陣を展開する。

「っっっ!!!」

焦りながら剣を刺すが…

首の怪我は免れたようだが…食いちぎられた腹からは血が流れ出て…

首を噛まれそうになっても、腹を食われても、また次から次へと襲おうと増え続ける魔物にも臆する事なく、食いちぎられた腹の痛みにも耐え、そのまま詠唱を続けるお姿は…

なぜここまで………

「今治します!」

全て回復させるのは無理でも出来うる限りの…!

バンッッッッ

???

何故か私の体が吹き飛んだ…
回復が効かないのか…弾かれ…弾かれた…!

なら、討伐でしか力になれない!



「聖主様!負傷した!治してくれ!」

次々と使い物にならなくなっていく…回復も多くできるようにはなっているが、限度がある。

「団長!あとどれくらい持ちますか!」
「2分だ!」

次々と負傷し魔獣は増え続け護衛対象が的になり…

いや!絶対に守ると決めた!諦めるな!

パキッパリンッ……

7分が経ったのか核が消えた。

何故か魔獣が少し弱まり動きが鈍くなった…

今のうちに…!

「お前ら畳み掛けるぞ!!」

団長の声に続こうと剣を持ち、水の魔法陣を展開した瞬間…

「あ?」

ヒナノの魔法陣だ…私達が怪我を負い、がむしゃらに戦っていた魔物、数十を一気に片付けてしまわれた…

立ち上がりキョロキョロと周りを確認した後、小さな声音で詠唱を始めた森の中には魔物が存在していない。一匹も。

食い破られた腹は治癒したのか、服は破れているが肌色が見えている。

「これが………」
「やっぱすげぇなぁ…」

民達への顔見せの時に浄化をしたと聞いた。その瞬間を私は見れなかったが…

浄化の仕組みは未だに分からない。

そもそも浄化が出来る者というのが不確かな存在だったのだから、私達には理解が出来ないのだろう。

ひび割れた大地に緑が徐々に広がっていく、
折れそうな大木はそのままだが、まるで葉が生えてきそうな程に麗しい土、淀みで汚れた空気も澄んでいく。

これが……

浄化……



     ぴちゃん………


そんな音がした、何故か聞き馴染みのある音と匂いに体の力が抜けていく。

今までのは幻想だというように、ヒナノの立っている場所がボロボロと崩れていった。

危ないと手を伸ばそうとしたがいつの間にか浮いていて、落ちそうにもない。

崩れていった足元から水の匂いがした、昔から嗅いだ事のある匂いだ…と思った。

同時に精霊様が側に居るというのは、こういう感覚なんだと理解した。

そのまま水が競り上がって泉になる光景も美しく思わず見惚れてしまう…光景に、景色に、自然を感じる大地に…

ヒナノの体が光る、光る。

怖かった、消えてしまうと思った。

だから浄化を止めてしまうとしても、これ以上淀みを悪化させてしまうとしても、なんでもいいから引き留めたかった。

思わず泉に飛び込むように歩みを進め抱き止めてしまった。

そしてそのまま…

泉に落ちた。

その時のヒナノは見たこともない程嬉しそうに、幼い子供みたいに笑うから思わず私も顔が緩む。
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