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しおりを挟む私の何処が好きか聞いてみたい、ちゅーしたい、いつ好きになったのか聞いてみたい、ちゅーしたい、どんなところが好きなのかちゅーしたい、ちゅーしたい…
「数日安静にしなければならない者達がおります」
クーパーとちゅーしたい…いや、したくない。
雑音…間違えた…クーパーから伝えられた言葉にそこまで弱かったのかと思う。
核を壊す詠唱中には何も出来ない、厳密には出来る事もあるけれどそれをすると成長しないから討伐は放置していた…そっか…私お腹食べられちゃったんだっけ?
弱いというか…
まぁ、いいか。
「反省会」
「会議室に向かって下さい」
クーパーに素っ気なく言われた言葉に元気よく首を縦に振るけど…どうしよう。
「レン会議室だって」
「………」
まだ固まってるんだよねぇ。
でもクーパーの機嫌がこれ以上悪くなっちゃったら悲しい…
「一代貴族の条件は」
「国を変える出来事を起こした者へ与えられる称号です」
「会議室だって」
「はい………はい?」
キョロキョロと周りを見渡してから私を見て真っ赤な顔をしながらも会議室へと足を運ぶレンはぎこちない。
「「…」」
とってもぎこちない。
「ちゅー駄目なの?」
「きゅっっ……」
あ、今は駄目みたい。鳴き声まで出てきちゃった…
さっきは好きって言ってくれたのに…
「きゅ………」
あれ?なんかこう、討伐してアドレナリンがドバドバ出た勢いで目の前に居るメスに声をかけたとか…?
「その場の勢い?」
「違います!私はあなたを…!」
「…」
待てる。なんなら待ってる気にもならない。そんなに真剣な表情で伝えようとしてくれているレンからは答えを貰っているようなものだけど、続きが聞きたいから待ってる気にもならない待てをするね?
「好き…なんです」
「私も好き」
「………はい」
やっぱりちゅーしてもいいかなぁ?
「こんなところで何を言い合っている」
「ランドン!?」
おお、レンから王の名前を聞いたの初めてだ。なんかちょっと新鮮。
なんかそっくり…
王とベンジャミンが。
ニヤニヤしながらレンを茶化してる2人はそっくりだ。
「伴侶になった認めて」
「ヒナ…!」
「む、まずは婚約の届けを出さねばならないな」
面倒…どうしてそんなごちゃごちゃする必要があるんだ…届け出すって王に出すんでしょ?認めてくれたらそれでいいのに…
「だが早く進めよう、聖女の婚約者問題を解決しろと煩いからな」
なんだそれ。
レンが居なければ私は誰の伴侶にもならないんですけど。
「めでたいな!」
「あ、ありがとうございます」
「我慢出来る。明日までなら」
「うん、反省会が楽しみだ!」
無視するなよ。
どうしてレンも会議室へと歩みを進めるんだ…
あれ?伴侶にならないのかな?もしかして恋人期間が長くなきゃ嫌とか?
それでもいいか?私的には伴侶だし。
「今は恋人?」
「そっ…!?そ、そ、恋人…恋人…」
「「「…」」」
恋人…とぶつぶつ言いながら歩くレンがなに考えてるか分からない…
婚約者と恋人の違いってなんだろう?
あとで小説読んでみようかな。
*********************************
【レドモンド・ウォーカー】
居なくなってしまうと本気で思った。
人ならざる者になってしまうような力と、神聖な輝きを体から放っていたヒナノは泉が引きずり何処かへと消えてしまうと…
そんな現実は耐えられない。
仕事が忙しくとも、やらなければならない事柄も、ヒナノが“ここに居る”という安心感があったからこそ時間が出来た時に告白を。と思っていた。
だが、あの時全てが壊れてしまうと恐れ、核というモノに触れた時に体感した温もりが消えてしまう事は国の崩壊に繋がる。
そして、ヒナノが居なくなる事は私の崩壊に繋がると恐れ怯えた私は…
掴みたかったんだ。
ヒナノを私のモノとし、崩壊など訪れない未来へと繋げたかった。
愛しい彼女へ。
どこまでも深い泉のような、どこまでもあたたかな温もりのような、どこまでも私を諦めないでいてくれた美しくも可憐で芯のある、不思議な泡沫さも持ち得ている彼女に愛を伝え傍に…いつまでも傍に居て欲しかった。
会議室の中でも当然のように私の膝に乗る愛しい方は愛を返して下さった。とても嬉しく心温かになったはずなのに…
まだ欲しいと、何故か足らないと思ってしまう。
全てが欲しい。
愛に気付き、与えられる愛を享受している私に足らない事柄は…
恋人………だからなのでしょうか?
ヒナノの言う通り伴侶になれば乾きにも似た飢えが収まるのか?
なにが足らないというのか…
「聖女、討伐が成功した事、そして今も王都を浄化し続けていることに感謝する」
はっ…!
いけない、今は討伐の…
あの食い破られた腹はなんともないのでしょうか?今は上着を羽織り破れた箇所は目に入らないが…
「!」
ああ…確かに破れているな…
あのような怪我を7分も放置し、完全に治せるなど…
本当にヒナノは毎日加減しながら生きているんだな。
「反省会と聖女は言っていたが具体案を聞いてもいいか?」
「討伐を記録した、見れるのは1度だけ。それを今から映す。駄目なところもいいところも吸収して、それと今回の核は1番淀みが少ない場所だった、あんなに簡単な場所はもうない」
ヒナノの言葉でざわつくのも無理はない。集まった者達は討伐に参加した者、これから討伐に参加する者ばかり。
そして今回の場所は簡単だったというが…戻って来た者達の傷を見れば簡単などとは思えない。
体感した私でさえそんな風に思えないというのに…
「記録を見せて欲しい」
「その前に浄化は済んでいない、あれは浄化とは別物」
「王都のように長く居着く事が重要なのか」
「伴侶と長く居着く事が重要」
「………その話はあとでするとしよう」
飢えが少し抑えられた気がした。
変わらぬヒナノに安堵し、手の内に居るのだと実感したからなのか…
「クーパー机の真ん中に座って」
「かしこまりました、陛下失礼致します」
「?ああ」
クーパーが位置に着くとヒナノは手の中から綺麗な鉱石を取り出したそれは魔力増長石とよく似ているが、それよりも輝きを放ち、宝石よりも価値がありそうな…吸い込まれそうな鉱石を宙に浮かした。
38個ある鉱石が頭上に浮かぶと…
「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」
今しがた討伐を終えたあの森が映し出されていた…
配置に着いた全ての者達が映し出され、あの時ヒナノが消えた瞬間さえも捕らえている。
天高く飛び、足元に何重もの魔法陣を展開し、土を掘ったのか…だから土が降ってきて…
音はないそれらは全てを記録し…
「なっ!?ヒナノ!腹を喰われたのか!?」
「静かに」
「っっ」
兄が声を荒げるがヒナノが制した。
全てを見て吸収しろ。と言っていた。そうだ、ヒナノばかりに気を取られるよりも小隊の動きや私の動きが最適だったかどうか…
ここでは背後の様子が分からない…もう少し真ん中へ…
ああ…ヒナノはクーパーに期待しているのか。だからこそ真ん中へと座らせて…
「比較対象、同じ人種、他世界、今回の淀みの数倍、人数は6、魔物は速くて飛ぶ尚且つ魔法使用あり、音声なし」
核を壊した所までを記録したのだろう。
浮かんでいた鉱石がバラバラと落ち、溶けるように消えて行ったのを見て本当に1度しか見れない物なのだと痛感する。
また、同じように鉱石を浮かし、配置につかせた後に出てきた最初の光景は…
「は?」
「?」
ヒナノの頭を乱雑に触り笑う男の姿が目に入った。
いくつか会話した後、ヒナノがした行動は変わらないが…
全てが違う。
使用している魔法陣は読み解けず、笑いながら…そう、楽しそうに魔物を討伐しつつ、ヒナノが居る場所から遠く離れた場所で討伐し、決して近付けないようにしている。
力の差は圧倒的だ。
武器を携えてはいるが、誰も手に取っていない。魔法陣で魔物を…あんなに巨大な魔物の首を取り、連携して魔物を捕らえ生け捕りにしている場面もあれば、競い合うように軽々と宙へと飛び魔法陣を展開し放出した魔法は見た事もない高度な陣だ。炎を出し、炎と…なんだ?紫色のなにかが合わさったモノを放出し、1人の男が殺し損ねた瞬間、他の魔物と戦っている者から魔法陣が飛んで…
連携も対策も力も魔力も…
なにもかもが違いすぎる。
そして1番目についたのは…
「終わり」
今のように体の全てを隠しているような服装ではなく、傷1つ付かなかったヒナノの腹は最初から見え、腕も、動くと見えてしまう足も…
「露出が多すぎる」
「…」
あれは下着ではないのでしょうか?
*********************************
え?気になるとこそこなの?映像を映した瞬間からクーパーが持ってきてくれた上着の前ボタンを閉めた後、レンは空間収納から自身の上着まで取り出して着せてくれたから寒そうに見えたのかな?なんて考えてたけど…
「露出が多い服をお持ちですか?」
「…」
はい!持ってます!
とは言いにくい…どうしてかレンの雰囲気が暗くどんよりしてる…とっくに起きている煩い精霊だって逃げ出すように何処かへと消えて行ったし…
「確認しましょう」
「はい…」
必要かな?私の持ってる服は莫大なんだけど…全部確認するつもりですか?
「クーパー」
「……少し考えます」
やっぱり次から着いて来るよりは他のお勉強をした方がいいと思ったんだろう。
好きな結論を出してくれ。
「出来んのか」
「出来る」
団長は少し不安げに問いかけてきたけど、そんなに変わらないよ。
訓練続ければすぐにあれくらいは身につく。
「反省会を開いてくれて感謝する…我々も考えさせられる事が多いようだ」
それはそうだ。
そもそも命を奪われるような相手と敵対する時に事前情報なし、なんてまず有り得ない。そして下調べをしないなんていうのもはっきり言って馬鹿だ。敵の実力を理解せず、土地を理解せず、己の力と小隊の崩れを理解しているのにも関わらず行けると判断するのも馬鹿だ。やれるもんもやれない。
「聖女には移動してもらう事になる」
なんで今更そんな事言うんだろう?浄化の範囲が決まってるなら移動するのが当たり前。
「レンと伴侶になってから新婚旅行で国一周」
「………考えさせてくれ」
「無理、レンと離れない」
「………」
「絶対に離れない」
嫌だからね!?私だけ旅行するなんて…!無理!無理!ぜぇぇっったいに無理!
「転移して夜だけ浄化場所にレンと一緒に行く」
「………」
「レンと一緒」
「………」
「一緒」
「………」
嫌だ!レンと離れ離れなんて!1日も嫌だ!
向かい合わせになってレンに抱き着く私は行動でも示していく。
離れない。好きって言ってくれたんだもん。益々離れない!嫌だ!
「あ!」
「どうされました?」
「レンと一緒じゃないなら逃げてやる」
「っっ~」
もちろんレンも連れてね?でもレンは国思いだからレンの寝室から出ないとか、そういう逃げ方をする!
「………分かった、夜だけの案を進めてみよう」
お願いね!ベンジャミンもお願いだよ!特にベンジャミンにお願いしたいよ!煩く言う奴らにはガツンッと言ってやって!
「はなれない…」
「はい…はい…」
ふん!何があっても離れてやらない!
離れる事になるならこの世界にある人間が住んでいない場所へ国ごと転移してやる!そうしたら淀みなんて関係ないし!聖女も必要ないし!
ふんっ…!
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