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しおりを挟むお風呂から上がってお昼ご飯を食べ終わった後、ソファに座りながらお父さんが軽々しく吐いた言葉が。
「お父さん魔王になっちゃった」
そんな♡を散らばして言う台詞か?と思うが、可愛いからいいかとも思う。ていうか魔王って言ったか?魔王…魔王…魔王ってなんだ?そんな存在がいるのか?ていうか「なっちゃった♡」感覚でなれるもんなのか?
「レオカディラが連れて行かれた時は絶望しててね…まさかこんなすぐに結界守護者が亡くなってしまうとは思っていなくて…でもどうすることも出来なくて…」
顔を傾けながら話し出すお父さんに焦ったが、すぐに少し顔を上げて目尻を下げるから安心した。
「連れ戻すことはできないし…そんな可哀想なことをするのも憚れて…」
ん?なんで連れ戻すことが“可哀想”になるんだ?どっちかといえば連れ戻さない選択肢を取られた方が可哀想だろ。
「そこでお父さん考えてね?結界守護という存在を失くせば戻ってくるんじゃないかって」
いきなり大きく出たな、おい。
俺が言うのもどうかと思うが最重要任務だぞ?あ、いや?違うのかもしれないな。勝手にそう思い込んでただけで本当はなくても困らないとか?………そうならいいな。だってそうだろ?それくらい平和ってことだ。
「結界守護という役目が重要だという認識は誰にでもある、だけどこんな風に閉じ込めて劣悪な環境で過ごさせるのはおかしいと詰め寄ったんだ、そうしたら陛下だったアレはなんて言ったと思う?」
もうネタバレしちゃってるじゃん、もう陛下じゃなくなっちゃったんだ。なら王家は潰せちゃったんだろ?ていうか、「ふふ♡」なんて笑いながら言うことか?
「「魔力量が高すぎる者は危険因子となり得る、自我も育たないような環境にするべきだ」だって、ふふ、おっかしいよねぇ?僕の息子は可愛くていい子なのに魔力量が高いだけでまるで大罪人扱いだ」
どうかな?俺が普通に育ってたら悪役令息になってる可能性も捨てきれない。でも…そうか…俺は追いやられたんだな…ここに。まるで捨てるみたいに。
「そこで僕、閃いたんだ!王家を潰せばいいって」
なに軽々しく言っちゃってるんだ。
「僕の息子を使い捨てにさせるような人達は不要でしょ?」
いや、でしょ?って言われても……確かにそう聞かされれば酷い扱いだとは思うけど、もしかしたら過去に魔力量の高い奴が国を滅ぼそうとしたのかもしれないだろ?もう二度とそんな事を犯さない為の措置だったかもしれねぇじゃん?
「まずは王妃だったアレを篭絡したんだ、簡単だったよ?」
なに色仕掛けしてんだ、確かに可愛い顔はしてるけども。
「そこで色々と情報を流してもらってね?城内の状況は粗方掴めたんだ、それから地道に貴族を一人ずつ消していったんだけど……ああ、本当、こんなに時間かけるつもりなかったのに…」
あっさり怖いこと言うんじゃねぇよ。消したってなんだ、消したって。その言い方だとまるで指先一つでパチンとこの世から失くしたみたいに聞こえるぞ。
「協力的な人達も居てね?ある程度地盤が固まってきたから王家を凶弾という形で…少し荒々しかったけど退いてもらったんだ。ああ、そういえばその頃から“魔王様”って呼ばれてたな…なんでだろ?」
そりゃ恐ろしかったんだろ、妄想力が高い俺の脳内にはお父さんの言う事に「はい」と言わなければ殺されるようなイメージがあるぞ?魔王っていうより暴君とか反乱軍とかだよ。
「それが5年前、本当はその頃でも迎えに来れたんだけど……色々と危険だったからね、息子を隔離しておかないと殺されちゃう可能性があった」
うん、そうだろうね。
だってそんな無理やりみたいな感じで国というか王家を滅ぼしちゃったなら身辺が危ないだろ、むしろ今でも危ないんじゃないか?俺、街に出て遊びに行きたいとか思ってたけど、今はしたくない。絶対嫌だ。だってあっさり殺される、絶対。お父さんの子どもだからっていう理由で簡単に殺されちゃう。
「一応、今は国王となってるけど……後継が育てばすぐに変わってもらうからね」
だから大丈夫だよ♡みたいな話し方されても納得できないよ?
「ああ…本当…色々と大変だったけど……うん、こうして会うことが叶った」
えへへ♡じゃないだろ、“大変だった”の一言で済ます内容じゃないぞ?
「今でも結界守護が必要だという声は消えない、結界があるお陰で我が国の安全が保障されてるんだから。でも…それでももう息子と離れたくないんだ」
ついに我が国って言っちゃったよ。
「お城を建ててもらったからね」
一軒家買っちゃったみたいなノリで言わないでくれ。
「情勢は落ち着いたし、守りも強固にしたから、だから……かえろう?」
すげぇツッコミどころはたくさんある。
色々と端折られたアレコレを聞きたくないような、聞きたいような…いや、やっぱいい。無知な俺でいたい、むしろそうさせてくれ。
俺はなにも思ってなかったのにお父さんは離れてから会う為だけに翻弄してくれたんだ、やり方については苦言を呈したくなるが、もうやっちゃったもんはしょうがない。だから………
「……だめ?」
首をかしげるな。
「お父さん」
「うん!」
というかな?前世を思い出す前から…なんなら連れて来られた時から思ってたんだけどな?
「その城とかいう場所で結界を張り続ければいいんじゃね?」
「へ?」
確かにこれからも行動の制限はされるだろうけど、なにもこんな辺鄙な森の中でやらなくてもいいと思ってたんだよな。だって入り口さえ変えてしまえばそこで魔力を流せる。
「え?で、でも、移動はできないでしょ?」
「張り替えたらいいじゃん」
「そんな簡単にできるの?」
……………あん?
「ここに来た時に張り替えたぞ」
「………気付かなかった」
え?だって先代の魔力質が入ってる魔法陣を使う訳にはいかないだろ、だから一度新しくして俺の魔力で満たしたんだけど……ん?連れて来られた時、お父さんも居たのか?ん?というか一緒に着いてきてたお偉いさんたちは一体なにを見てたんだ。
「え?え?そんな簡単に消せるの?」
「3分くらいは時間が欲しい」
「みじかっ!」
口を開けてぽかんとしてるお父さんは色々と勘違いしてたみたいだな。
そんな複雑な魔法陣じゃないだろ、ただ魔力が大量に必要なだけだ。1人の魔力がな。
「……そっか……守護を続けられるんだね……良かったね」
「………………なにが?」
「言ってただろう?「僕にしかできない仕事をやり遂げたい!」って、「僕のしたいことを邪魔しないでパパ!」とも」
「……………………覚えてない」
「………ふふ、そっか、そうだよね」
なにヒーローぶってんだ、殴りたいぞ、過去の俺。
「いまは………」
「うん」
「………かえりたい」
「うん、かえろう」
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