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10【魔王の息子】
しおりを挟む人体に関することは魔法でどうにか出来ない。治癒魔法なんかないし、人になにか魔法陣を施すのも無理。それは動物相手でも一緒。でもな?ほら、思ったんだけどさ、この間馬車を浮かしたみたいに物を通してなら人に影響を及ぼすことができるって気付いたんだよ。ああ、そういう意味では他にもある、攻撃魔法なら人に当てられる。だけどそれも直接人体に攻撃してる訳じゃない、結界みたいに一度宙に魔法陣を描いてから攻撃するんだ。だからな?なにか物を通せば色んなことが出来ると考えた俺はお父さんに守りの魔法陣を施そうと思ってる。だってさ魔王な訳じゃん?ちょろ~っとだけ聞いた話でもいつ殺されてもおかしくない。さすが魔王。という訳で指輪をお願いした。なんでもいいんだけど普段つけるようなやつがそれしか思い浮かばなかった。んで、指輪を頼んだ日からだいぶ経った今日、手元に届いた。届いたっていうかお父さんから見せられたんで国に施してるモノと攻撃魔法を全て弾くモノを付与しておいた。これならぱっと見分からないだろうし、なにかあった時には俺に分かるようになってるから大丈夫だろう。んでもう1つ。人体に直接なにかをしようとするから駄目なんだとまたまた気付いた俺は色々と試してる。怪我なんか治せたらいいだろ?ささくれを取った後の指とか痛いし。
それと最近、一言二言だけどプレスコットさんと話せるようになってきた。あっちから話しかけてはこないけどな。しょうがないよな、魔王の息子だし。でも、もうちょっと気軽に話しかけてきてもいいんだぞ?俺はいつでも大歓迎だ。
「プレスコットさん、きょ、今日は……………いい、天気、ですね」
「ええ、とても」
相変わらず会話デッキには天気だけしかないけどな。
「たまには別の場所にも行ってみませんか?」
は、は、は、話しかけてきただと……!?大丈夫か!?魔王の息子なんだぞ!?
「あまり根詰めると倒れてしまいますよ」
しかも心配までしてきた………根詰めてるつもりはないんだけどな。いつも通りだ。場所が変わっただけ、いや、それは結構重要なことなんだけど、それでもやってることに変わりはない。ああ、でも…インスピレーションはいいかもな。やっぱ誰かが居ると違う見方ができる気がする。
「ご希望はございますか?」
ご希望………そうだなぁ………筋肉は見れてる。最近は部屋の扉を開けるのが楽しみなんだ、プレスコットさんが居るからな。今日こそは話をするぞ、なんて思ったり、筋肉をいつもありがとうございます!とも思ってる。だから筋肉については充分なんだ。街に出てみたいけど今はいい。情勢が落ち着いてきたとは聞いたけど魔王の息子は瞬殺されそうだから。痛いのはごめんだ。
希望ねぇ………生涯独り身確定だった俺は人恋しかったんだと思う。でも、今は人がたくさん居る、関わろうと思ったら関われる人達が大勢、ご飯だって一人で食べることはないし、研究してる時にガヤガヤとした賑わう声だって聞こえてくる。今までとは考えられないほどに充実した毎日を送れてる。もちろん街にはいつか出てみたいし、夜遊びだってしてみたい。でも…ゆっくりでいいと思うんだ。焦ることなんてない、だってこれからたくさんの機会に恵まれるんだから。
「良ければ案内をさせてください」
「…………………は、い、……お願いします」
ご希望のない俺を案内してくれるプレスコットさんは先導してどこかに向かってる。そのどこかは庭園だったり厩舎だったり室内庭園だったりよく分からない置き物がたくさんある部屋だったり絵画が飾ってあるところだったりした。1日で回れる訳じゃないとは思うけど、1日でお城全部を見たんじゃないかってくらい色んなところを見せてくれた。何度も休憩をしないかと聞かれたけど、思いのほか楽しくて急かすように案内を頼んだ。人をたくさん見て何度かビクついたけど、そんな事気にならなくなるくらい楽しんだ。
「お疲れではないですか?」
「ない、です」
「良ければお茶に致しましょう」
そう言われて入った部屋はこれまた用途不明の置き物が棚にたくさんある場所だった。
「こちらをご用意致しました」
そう言われてテーブルの上を見たらケーキがあった。それはまぁまぁ衝撃だった。だってケーキだぜ?俺、この世界で生まれてからケーキなんて……多分お父さんが食べさせてくれた時もあったんだろうけど、小さな頃なんて覚えてない俺はケーキを見て震えた。むしろなんで今まで気付かなかったんだ、甘い物がこの世には存在していると!存在しているだけで誘惑してるようなケーキを遠慮なく口に運んだ俺はまた衝撃が走った。めっちゃ美味い!ありえんくらい美味い!!!なにこれ!?ケーキってこんな美味かったか!?
もう無我夢中で食べたね、噛みしめながら食べたね、美味すぎる。んで、俺気付いちゃったんだよ。いや、元々気付いてはいたんだけどな?俺って魔王の息子なんだよ。だからな?ある程度わがままが通ると、いや、通させてもらおう!!!
「………また、食べたい、です」
「はい」
ケーキを所望しよう!俺は魔王の息子だ!作る工程がたくさんありそうなケーキを毎日でもくれと言える立場だ!わっはっはー!
ちょっと、いや、かなりテンション高めな俺はウキウキで研究に戻り、しばらくはああでもないこうでもないと試行錯誤してたんだ。そしたら早速と言っていいのか、こんな機会なんて訪れて欲しくなかったんだがお父さんの指輪に付与した魔法陣が起動した。もしかしたら正しく機能してないで誤作動なのかもしれないが確かめに行った方がいいだろうと思いお父さんがどこに居るか魔力質を探したらもう遠いのなんのって、いや、ほんとに、どうしてこう一緒の家(お城)に居るのにこんな距離があるんだと若干、嘘、だいぶ焦りながら椅子に飛び乗った。
「殿下?」
座るところに足を乗せて背もたれに手を置いて風魔法を展開した俺は机の足を切って、1本の足を思いきり窓ガラスに当てた。
ガシャァァァァァァァンッッッ!!!!!
まだ足は使うかもしれないと4本とも浮かして着いてくるようにして、俺が乗ってる椅子にも浮遊の魔法陣を施して壊した窓ガラスから外に出た。
「殿下!!!」
びゅんっ!と速度を上げればすぐにお父さんが居る部屋の外に着いたがここからじゃ安全かどうかが分からないと持ってきた机の足を思いきり窓ガラスに当てた。
ガシャァァァァァァァンッッッ!!!
壊れたところから室内に入ると、どうやらだだっ広い場所にドレスだか正装だかの姿をしてる人達が大勢目に付いた後、驚いた表情をしてるお父さんを見つけた。見た目的には無事だけど見えないところに怪我をしてるかもと思い椅子をお父さんのところまで動かして目の前に着いたらぴょんと降りてペタペタと体中を触った。攻撃魔法はきちんと弾いたみたいだしどこにも血がついてないから大丈夫だとは思うんだけど………
「お父さん平気?」
「…………あ、ああ、………もしかして助けてくれたのか?」
「指輪の魔法陣が起動した」
「魔法陣?」
ぽわんと魔法陣が浮き出るようにして見せると驚愕の表情をして固まったお父さんにどうやら言いたいことがある人が居たようだ。
「っっ、この!化け物家族が!!!」
後ろを振り向くと血走った目をして凶弾してる相手はどう見ても………お父さん。
ああ、もう、本当にうちの父がすみませんと言おうとしたら激昂した声が背後から聞こえてきた。
「レオカディラのことを化け物だと言ったか………?」
「「「「「「「「「「ひっ…!」」」」」」」」」」
怖すぎるよお父さん………俺は恐怖で声も出なかったよ。
「ひぃっっ…!お、お、お、俺がその座に座るはずだったんだ!返せ!」
「息子を親子で侮辱しておいて座を譲れと?」
もうやめようよお父さん、みんな恐怖でお顔が真っ白だよ。もちろん俺も。
「お前のような醜悪な人間が王家だったとは………まだ私の方がいくらかマシだ」
どうやら王族のお方らしい。というかお父さんて“私”って言うんだね。
「魔王であるこの私を害そうとした罪………重いぞ」
もう魔王って言っちゃってるじゃん。自分で魔王って言ってるよこの人。
「お父さん」
「うん?どうしたの?」
その変貌ぶりが逆に恐怖を煽ってるよ。
「王族の人がお父さんを怪我させようとしたの?」
「“元”王族だ」
「………はい」
「そうだね、でも、レオが守ってくれたから無事だった。ありがとう」
いや、そうは言ってもだよお父さん。またいつこんな状況に陥るか分かんないじゃん?敵が多そうだし。攻撃を弾けるとはいえ、攻撃されないに越したことはないんだよ。せめてもうちょっと怪我しないように………あ。この台詞いいかも。
「魔王の配下につけば幸福が約束される………だが」
続きの言葉ってなんだっけ?みんなにお父さんは怖いぞーってもうちょっと恐怖を煽ってみれば攻撃しようと思わないかなと思って昔見たアニメの台詞を思い出そうとしてるんだけど………えーっと、えーっと……
「恩恵から外れた者は排除する、この俺がな」
そうだったそうだった、こんな台詞だった。…………ん?あれ?この台詞って側近の台詞だったわ。間違えちゃった。
「「「「「「「「「「ひぃぃぃぃっっ……!!!」」」」」」」」」」
みんながまた恐怖してるからどうせお父さんが怖い顔してるんだろうと思って見上げたらなぜか満面の笑みだった。
「今日からしばらく忙しくなるんだ」
「うん」
「だからちゃんとご飯を食べること」
「……ケーキ美味しかった」
「じゃぁ毎日ケーキも食べること」
「うん」
「もう遅いからおやすみ」
「おやすみ」
ああそうだ、一応指輪に施した魔法陣がきちんと起動してるかどうか確認しないとな。…………うん、問題ない。でも少し魔力がなくなってるから足しとくか。………これでよし、寝るかー。……………やべ、プレスコットさんが居ないから帰り道が分かんねぇ。
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