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しおりを挟む「まだ成長途中な君に仕事をさせたりもしないから安心してくれ」
久しぶりに頭をガツンと殴られた感覚に陥った。
確かに私の背は160cmと小さいけれど、それは私の世界とアダムの世界だからだ。地球の器しか私に合わなかったからそこで生まれたけれど、日本では標準な体型だったと…思う。
「その…皆さんはとても背が高いのですが…普通?なの?」
180cm~2mが標準な背の高さだ。だから私の背は小さく見えてしまう。
「?ああ」
「…私、これでも100歳は超えてます」
「え!?」
「………」
魔人として生きてみようかな、王様も魔人だし。
神々にもバレないように魂を魔人に見せておこう、この世界を管理している神はきっと、覗きに来るだろうから。
「嘘では…」
「嘘じゃない!」
「す、すまない」
子どもっぽく生きれば可愛がってくれるかもしれない、魔人で子どもっぽくて笑顔が絶えない…そんな人間になろう。
「むー…」
「ふはっ!す、すまなかった、ふふ」
「私の世界では普通だもん」
「普通…」
大好きな友人とはいつも小さくないのにねぇ…って愚痴ってたから普通じゃ…なかったのかもね。
「むー!」
「ふふ、分かった」
デザートを食べて紅茶を飲む私にくすくすと笑いながらほっとした表情を出す。罪悪感はなくなったんだろう。
私に居場所なんてどこにもないんだから気に病まなくていいんだよ。
「しかし魔力量も少なくそんなに小さくては…」
うんうんと唸り出す王様は私に心を砕いてくれている。
取り込んだ全ての力が強く、神さえも近付けなかったから、3つのピアスに漏れないよう、魔法陣と力を込め、魔力も抑えるピアスも着けたけど、それでも漏れてしまったから、左の太ももにリボンを着けて漏れた分だけを抑え込むようにしたらやっと弱く見えたのが今の私。
そして愛する色のピアスが3つと私の色を1つ。
左耳に3つ、軟骨に2つ、右耳に2つあるピアスは多いけど、どれも外せない物だ。
「今すぐ護衛と側仕えを…ああ、あの者達なら安心だ!すぐに呼んでくれ」
王様が側仕えだろう人に頼むとすぐに目の前から転移で消える。美味しい世界は魔法に長けている者達が多いけれど、こんなに多い魔力量も、陣の扱いに長けている者も知らない。
「あ、あの、そんな贅沢するなんて…」
「贅沢でもない、君を守る為に必要な事だ」
「は、はい」
城だろうこの場所にかかっている守りの陣には…淫魔対策までされている。
ん?だけど、悪魔対策はしていないのは何故だ?ここまで細かく丁寧な魔法陣を考え付くのに悪魔だけ対策出来ていないのは何故だろう?
「しかし小さすぎる…このように小さく弱いのなら守りも増やして…」
ぶつぶつと言いながら私を守ろうと一生懸命考えてくれる。
ここに滞在する間は馬鹿で居たいな。
「私って本当に何もしなくていいんですか?」
「可愛らしい男の子にはなにもさせられないよ」
ううん、流石に驚いたよ?一応胸の膨らみも、ワンピースも着てるの分かんないかな?分かるよね?
「私、女なんですけど…」
「女とはなんだ?」
「…」
女はいた。アダムの世界が消滅して、私の世界になり、あちこちの世界を見て回った事があったから存在しているのは知ってる。どの世界も女が3割という少ない人口なのも同じだった。
これは国なのか世界なのか…
どうして女が居ない?
「性別の違いって分かる?」
「性別…っ、ヒナノは女性なのか!?」
どう見たら男に見えるんだよ。
「そうですけど…」
「なんと…」
「いないんですか?」
「絶滅したからな…」
「…」
女が絶滅ってあり得るか?調べた方が…
いや、調べなくてもいいか。いいよね。
だって今は休憩中だ。
滞在が終わればまた死ねる方法を考えるだけなんだから…
「昔の書物に確かあったはずだが…違いはあるのか?」
「え、と、性器と胸の膨らみがある違いくらい?」
「せい……」
他にもあるだろうけど私にはそれくらいだろう。
あ…
近付いて来る人間の中に魂の伴侶…運命がいる…
昔感じたよりも強く愛おしく思うけど、抗えるな。
私の魂は中途半端だから。
相手はどう反応するんだろう?
聞こえてくる足音は軽々しくまだ気付いてないようだ。
未だ女について考え込んでいる王様の元にさっき出て行った側仕えが耳打ちしている。
そして私たちの横に傅いている2人。
一人は運命だ。
まだ気付いていなさそうな運命を覗き見ると…
驚愕と絶望と恐れ。
私と目が合った事で気付いた彼は竜人だ。後退りたい…ここから逃げたいという意思があるようで、少しだけ体を引いたけれど、王様を見てぐっと堪えたようだ。
私の運命は運命に出会いたくなかったみたい、私と同じで。
王様を見ていたのに抗えないのか私を見てしまう運命は顔を真っ青にしながらも逸らせないのか、見続けている。
うん、それなら近寄らなくていいだろう。
私は魔人だ。獣人と竜人以外は運命の相手だと分からないんだから無視でいい。
「護衛と側仕えを紹介しよう」
「はい」
私の横に跪いている二人は対照的だ。
「リンジー・アーチボルドと申します。天使様の側仕えに任命されました」
白銀の髪に青の瞳は少し神経質そうな竜人だけれど、喜びが体から溢れている。天使様という存在に仕える事は誉れな事なのだろう。180cm程の背筋は伸びていて、綺麗な男という印象を受ける。
「アルフ・コパーフィールドと申します。天使様の筆頭護衛に任命されました」
金色の髪に緑の瞳は鋭いが顔色が悪い。
ここに居る誰よりも肉体と魔力が鍛えられている。天使様という存在は大切に慈しむ存在なのだろうと運命を見て分かる、王様の護衛よりも屈強な男を側に置く程だ。
嫌がっている運命の側に居たくもないんだろう、逃げ出したい気持ちが伝わってくる。そんな運命は2m程はあるように見えるな。
「はじめましてヒナノです。分からない事だらけですが、よろしくお願いします!それと100歳は超えてます!」
「「!」」
笑顔で挨拶してる私を信じられないような目で見てる。ううん、子どもじゃないよー。
「ヒナノは女性だ」
「「!」」
王様の言葉に納得する、女という事も言わないと駄目か。
「天使様の部屋はあるから案内してもらうといい」
「バーナビー!これからお願いします!」
ニコニコと挨拶すると王様もニコニコしているからこれでいいのだと、こういう対応で間違っていないのだと思いながら周りの反応も見ていくけれど…うん、大丈夫そう。
「ああ、楽しくなりそうだ!部屋に案内してやれ」
早速側仕えのリンジーにイスから降ろしてもらって後ろを歩く。
運命は絶望したまま。
どこかのタイミングで護衛の任を解けば関わる事もないだろうからもう少し頑張れー。
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