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しおりを挟むさっきはバーナビーに手を繋がれてたから平気だったんだと思う。歩くなんてしてなかった私は盛大にコケた。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます」
側仕えのリンジーが支えてくれたけど多分…
「わっ!」
「…良ければ抱き上げても?」
せめて長い時間、浮いても余裕があるくらいの魔力を今度から保持しているように見せようと、またコケた時に決めました。
歩くって難しい…
「ごめんなさい」
「!謝らなくて大丈夫ですよ」
「うん…お願いします」
「はい」
ニコッと笑いながら私を抱き上げたリンジーに私も笑う、無邪気に笑う。
「わあ…!高い!とっても高いよ!リンジー凄い!」
「ふふ、お気に召しましたか?」
「とっても!あ、あのね?」
「はい?」
リンジーは気安く人の懐に入り込むのが得意なんだろう、そして気安く話しかけられるのも好きだ。
「私、敬われるのなんだかドギマギしちゃって…む、無理にとは言わないんだけど、えっと、あの、」
笑みを深めてくれるからこの世界では、無邪気な人間は好ましく見えるのだと確信する。
「使い分ける事になるけどそれでもいい?」
私は擬態するのが得意。
そして長生きだ、とても。
だから表情を読み取るのが得意だし、求められている性格や必要な返しも分かる。
「わっ!リンジーかっこいい!そっちの口調の方が好き!」
「ふふ、天使様はお優しい」
天使様…天使様だからこそもう少し賢い人間の方がこれから先上手くいくとも思うけど…
「ヒナノだよ?」
「呼んでも?」
「もちろん!」
無邪気で弱い私でいたい。
「ヒナノ、来てくれてありがとう」
「私もリンジーと友達になれて嬉しい!ありがとう」
私の護衛や他の側仕えなんかは多分まだ選定中なんだろう、今歩いてるのはリンジーと運命のアルフだけ。
二人共竜人だけど、昔の世界よりずっと強い。
人間や神に必要な時は見ていたり、話したりと…随分昔にしたけど、ここまで強いのは知らないな…変わった世界は新しい発見がまだあるのかもしれない。
「ここだよ」
「扉もおっきいねぇ」
「ヒナノに比べたら全部が大きい」
「むーっ!」
「ふふ、気に入ってくれたらいいけど」
きっと私を連れて転移も出来るだろうけど、わざわざ城内かな?城の中を見せながら歩き案内してくれた。
中に入るとまぁ、想像通り。
棚もソファも大きすぎる、棚は手を伸ばさないと届かないくらいの高さ。
この世界は1つの部屋に寝室以外を全て詰め込むんだろう、広い部屋には全てが置いてある。ダイニングテーブルもソファも鏡台も。
「ここ全部が私の部屋?」
「当たり前でしょ?」
「広すぎるよ!追いかけっこ出来るくらいの広さだよ!?」
「走ったら転びそうだから駄目」
「転ぶだけなら平気だよ?」
「絶対に駄目」
私をソファに置いて紅茶の準備をテキパキするリンジーには感心するけど、紅茶を置いてもらっても机まで手が届かないよ、ソファに置いてもらってもいいかな?
「すぐに家具を用意するから」
「い、いいよ!こんなに整えてもらってるんだから!」
「駄目、ヒナノには危ないから」
危ないというよりは色々と届かない。が正しいかな?誂えて貰ってもいいかな?
「子ども扱いされてる?」
「天使様扱いしてるんだよ」
「ヒナノ扱いして?」
「ふふ、なら念入りに家具を調べてくるね?」
「複雑ぅ」
くすくすと笑いながらアルフの側に行き、しばらく席を外すと伝えてる、気安い態度に二人は仲が良いと気付く。
連携が上手く取れそうな二人だ。
そしてアルフの強張った態度にリンジーが気付いてる。
部屋から出て行ったリンジーを見てソファからジャンプして降りて、紅茶を頂く。
さっきより美味しい紅茶にリンジーは側仕えとして優秀なのだと嬉しくなった。カップまで大きいから量も多いけど、飲み干してからまたソファに戻って横になる。
きっと帰って来るまで時間がかかるだろうと眠る、悪夢をよく見るから眠ってる時に発する言葉は聞こえないようにでもしておこう。
ふあ…おやすみなさい。
「……ヒ……ナノ、ヒナノ?」
声に気付いて目を少しだけ開ける。
「良かった…体調はどう?」
リンジーが聞いてくるけど、すっかり寝起きが悪くなってしまった私はまだ覚醒出来ない。
「眠いの?」
眠いけど起きなきゃだね、今の私は生活してるんだし。とは思うけど、寝起きがとても悪いから何度か目をパチパチしてるとリンジーがベッドに…どうやらベッドに寝かせてくれたらしい。
ベッドに登って私の側に来るから手を繋いで大丈夫だよーって伝えてみる。
「ちゃんと聞いておけば良かった…ヒナノの世界ではどれくらい寝るのが普通?」
「……目覚ましない、なら、何年でも…」
「そんなに?起こすのは可哀想だからとやめておいたけど…6日間眠ってたんだ」
リンジーの声を子守歌にしてまた目を瞑る私を抱き上げて部屋を出る、今までも何度か声をかけられたのかも…
「体調が悪いのかもって調べ尽くしたけど何もなくて」
「ふあぁ…心配かけて…ごめん、なさい、」
「お腹空かないの?」
「食べなくても…ふあぁ……へーき」
「凄いね」
新しくなっているソファに座らされたから、ポスッと横になると目の前にバーナビーが居た。
護衛もたくさん。
リンジーから説明を聞いて安堵した王様の…バーナビーの表情に、明日から寝たら起こしてもらおうと決意する。
「本当になんともないのか?」
「…あい」
「…眠いのか?」
「…寝起きわるぃ…」
「そうなのか…」
どうやら相当に心配かけちゃったらしい…
リンジーが私を起こして水を渡すからゴクゴク飲むと目が覚め…ないけど、無理矢理覚ます。
「ぷはっ、心配かけてごめんなさーい!」
「いいんだ、何もなくて良かった」
ほっとしたのはバーナビーだけじゃなくて周りの人間達も。
「リンジー、明日から起こして欲しいな?駄目?」
「お任せ下さい」
夜は寝ないで本でも読んでようかな?寝ても朝になったら起こされちゃうだろうし。
「聞いておいてくれ、色々と違いがありそうだ」
「かしこまりました」
「バーナビーもう行っちゃうの?」
そういえば数日眠らなくても問題ない人間はいたけど、起きない人間はいなかったっけ。
「ふっ、落ち着いたら遊んでくれ」
「やったー!」
「ヒナノが来てくれて良かったよ」
バーナビーはそう言うと立ち上がるから良かったって、もうこの性格で大丈夫だろうと最終確認のような事を思う。
バーナビーが出て行った後の室内はアルフとリンジーだけ。
「リンジーとアルフはずっと仕事してるの?」
「そんな事もないよ」
筆頭と言っていたから他の人間も側にいる事がこれからはあるんだろう。
「忙しくさせちゃった?」
「心配はしたけど…忙しくないから気にしないで」
「うん…お休みもらえる?」
「ふふ、うん」
アルフの顔色はまだ悪い、心音は鍛えているのか正常だ。
「他に違いがある?」
「この世界の事が分からないから違いも分かんない」
「そうだった」
私の眠りや、目に見えて分かる違いは仕方がないから、他世界の当たり前だとでも思わせておこう。
「だから常識とマナー本が欲しいな?いい?」
「いいけど…そんな事しなくていいんだよ?好きな事して遊ぼう」
「それなら早く常識を学んでバーナビーと遊びたい!」
「ふふ、もう」
リンジーは外にいる人間に声をかけて本を頼んでる、アルフは護衛対象の私を見なければならないのか運命だから見てしまうのか…
私には抗えない程に惹かれてしまう愛情も、当たり前だとも思う正しさも理解出来ない。
中途半端だから。
全てが中途半端。
それがいいのか悪いのか、今の私には分からない。
「お腹は空いてないの?」
「これくらいなら食べたい」
お皿の形を作ってお願いする。
ご飯も楽しみだから食べてみたい。
「…それだけ?」
「食べたい時にこれくらいの量があれば満足するの」
「…だから小さいんじゃない?」
「普通だもん!私の世界ではそうなの!」
「…うん」
欲の全てが娯楽な私は必要な事柄もない。
眠りたいならいくらでも寝て、食べたいなら食べたい時に食べる。
必要な物も大切な者もいない。
「魔人?」
「そうだよ」
そういえば自己紹介も最小限で寝ちゃってたっけ?アルフと二人きりなら寝ちゃえっ。って寝たんだった。
「俺は竜人、アルフも」
「分かった」
「王様は魔人だよ」
「分かった」
「運命が居たらどうしたい?」
ここでは選べるのか?
「私の世界ではおとぎ話みたいな奇跡だったけど…違うの?」
「奇跡程じゃないけど、珍しい事ではあるかな」
そう…そうなんだろうな。
多分、もしもアダムとイヴが結ばれて果実を2人で食べない選択をしたらこんな風に世界は広かったんだろうと思う。
アダムの世界だった頃とは違う広さと人間の強さはきっと…本来の姿なんだろう、世界の。
私の中にアダムの魂があるから…
あの頃は世界すらも中途半端…いや、今の私もまた中途半端なんだ。
私が私の全てを取り戻しても…アダムとリクを取り込んでしまった魂では本来の世界など見れない、永遠に見る事が出来ないだろうな。
「じゃぁ、運命が居たら考える!」
「…それがいいね」
「うん!」
リンジーには気付かれたんだな、アルフの運命が私だと。
きっとアルフの事情も知ってるんだろう、友達なのかな?
本を届けてもらいその日から読み切るまで読んでた。
また心配されたけど、寝たい時に寝るけど眠くはならないよ。とも伝えたらまた驚かれた。
睡眠を数日に1回くらいで足りる人間はいるけど、寝なくてもいいなんて聞いた事がないと。
ゆっくり読んでたまに食事を貰って楽しんでた。
その間もずっとアルフの視線を痛い程感じてたから、護衛が要らないと言おうと……常識を学んだ後に声でもかけようかな?
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