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しおりを挟むヒナノちゃんのお願いは保留になりました。
落ち着いた時にでも考えてくれたら嬉しいよ。
でも早めがいいかな?
だってね?
「おい、外すんじゃねぇよ」
「…」
部屋に戻ってもこんな調子で煩い乙女は、本を読んでるのにも関わらず話しかけてくる。
「デートしてから考えろ」
「…」
なんで押せ押せアタック♡になったのかは分からないけど、そんな事を考えるより本を読んで過ぎ去るまで待つに限るのだ。
「ヒナノ」
「なんでリンジーは止めないの?」
「今は怖がってないからいいかな?って」
いいかな?じゃないよね。
怖がってはないけど、ていうか怖くない……
怖がっておけば良かった……
ちくしょう。
寝起きで頭が回らない時にあれこれ言われたせいだ。
明日から図書館に行こ。
部屋にいるから煩く声かけてくるんだ、この乙女は。
「ヒナノ、話聞け」
「…」
今からでも図書館に行って…
「頼む……見てくれ……」
「けほっ…」
「またか…」
いつか誰かに言われたような台詞は過呼吸を起こすには充分だったらしい。
私をいつからか座ってる膝の上に置いて包むように腕を回すこいつは心底鬱陶しい。
寂しくて、ただ愛されたかっただけなのに。
リンジーが与えてくれるような愛が欲しくて、それだけで召喚に応じたのに。
休憩のような居場所なのに。
ちっとも休ませてくれないこいつが心底鬱陶しい。
ぜぇぜぇ、はぁはぁ、と息を乱す私をなんでかニヤつきながら見てるこいつは…
「また俺の腕を掴んだな」
鬱陶しいんだよ!
*********************************
『馬鹿かお前は』
今日はアダムの夢だ。
『 』
ああ、きっと楽しそうに私へと話しかけてるんだろうけど、楽園にいた頃の私は聞こうともしていなかったから…
どんな表情だったのかな?
再会したアダムはいつもつまらなそうにしていたけど、本質は違うと感じていた。
『楽園に帰るか?』
どうしてそんな事を聞くんだろう。
楽園に帰ったら何があったのかな?
帰れば良かったなぁ…
アダムとリクとロロと仲良くいつまでも……
楽園はどこにあるの?
『 』
楽園にいた頃のアダムはどんなだったんだろう…
きっと…
きっと?
あれ?
アダムって………
「ヒナノ、起きろ」
「…」
「また魘されてたから起こした」
「…」
「いつも魘されてんな」
「…」
座ったままのアルフに抱えられている私は、あれから呼吸が落ち着いて寝てしまったのか。
なんだか力が抜ける。
アルフに抵抗しようとも思えない程に力と心が抜けていく気が…
「飯食うか?」
「…」
その言葉に思い浮かんだのはアダムと食べさせ合いながら相手の全てを見ようとしていた光景だった。
「食わせるぞ」
「…」
その言葉に心底疑問が浮かぶよ。
私は食べなくてもいいって知ってるでしょ?
だから別に無理矢理食べさせなくても問題ないじゃん。
なのになんで食べさせるんだい?
「ほら、口開けろ」
「…」
「……まだ食えるな?」
なんだか一生食べていたい気持ちになったよ。
これが、イライラするとやめられない。というやつかい?
「っっ~!」
「ほら、口あけ」
「やめてくれる!?興奮しないでよ!この阿呆が!」
お前精力が強いんだよ!興奮は目でも見れるんだよ!淫魔でもあるからな!鬱陶しい!!!
今!私は!ご飯中!
「お前が興奮させてんだ、抑えろ」
「「…」」
馬鹿だ!
「そうだ。ヒナノ、仕立て屋と会う?」
「どうして?」
「いつも可愛い服を着てるから、要望があるなら直接言ってみたら?」
うーん…
渡される軍服はいつも可愛いし、私の意見を出しちゃうと私の好みになっちゃうからなぁ。
「可愛いリボンがあるって」
「……それって誰に言われたの?」
「新しい商会があってね?目新しかったから一度俺が見に行ったんだ」
「リボンはどこから?」
「ん?……なんでだっけ?」
私はリボンが好き。
でもその事実を口にした事はない。
もちろん近くに居る人間にはリボンが好きなのかな?って思えるような服を着てたりする、ワンポイントにどこか1つリボンにしてたりするから。
でも、ごく僅かだ。
普段使いしてる洋服を見れる者達は少なく、逆に大勢がいる場では渡された物を身に纏っているから分かるはずがない。
密偵?
私が眠ってる間とかなら分からなかったし、忠告してもいいんだけど。
こんな風に無意識にリンジーを誘導する人心掌握の術を持ち合わせている人間に会ってみたいかも。
リンジーは優秀だ。
それなのに、私まで話を通すような人間がいる。
楽しそう。
「会ってみたい」
「うん、整えておくね」
「ありが、もがっ!……」
「まだ食うだろ」
「リンジー!図書館に行く!」
「もう夜だから駄目」
「じゃぁ寝る!おやすみなさい!」
「うん、おやすみなさい」
「一緒に寝るか?」
「…」
「寝る訳ねぇだろ!このっっ!ど阿呆!」
「あん?」
*********************************
次の日から、リンジーが部屋に来ると必ず図書館に行って夜まで過ごすようにした。
「「「…」」」
言いたげな表情をするアルフは無視してる。
自制心はあるようで…
というか、気付いたんだけど、この人凄い我慢強いんだよ。
運命に会っても、私を抱き上げても、決して手は出さない。
今まで自制する人生を送ってたのか、我慢強く忍耐強いんだよね。
私を口説いてる最中なのかはちょっと、いや、だいぶ疑問が浮かぶけども…押せ押せになったのに、ちっとも奪おうとも、他の者から見えないように視界を遮ろうともしない。
不思議な竜人なのか、新しくなった世界の人間達が私の認識と違うのか…
「運命に関する書物が読みたい」
「かしこまりました」
リンジーに渡された書物をペラペラと捲り、他の書物にも軽く目を通すけど…
うーん…
どれもこれも認識通りだなぁ。
もちろん脚色はされてると思うけど、ここまで囲おうとしない者は……
ああ、ストーカー気質な……
うん、それもないな。
黙って気付かれず側に居るなんて事はない。
「夜ですよ」
「はあい」
部屋に戻るとどうしてか抱き上げられるけど、それ以上はなにもしてこない。
「なんで抵抗しねぇ?」
「私が何度も言ってるのに分かってくれないから諦めてるだけ。無理矢理なんでもしたら?」
「ふざけんなよ!」
なんでかお怒りです。
「んな事しねぇ!」
「今してるけどねぇ」
「っっ~、……どうすりゃいいんだよ…」
「「…」」
私に聞かれても………困ります。
「惚れるのやめたら?」
「無理に決まってんだろ!?お前に惚れねぇなんて有り得ねぇ!」
運命だからねぇ。
「お前は俺の…!」
「遊ぼー!」
「いーよー」
助かった…!
なんていい子なの!
私が困ってるところにはいつだってライが現れてくれる!
ちょっと最近、腹立たしくて本気の喧嘩腰になってつい焚き付けちゃったよ!
俺の運命だ!なんて言葉を聞かなくて本気で良かった…!
「ボードゲーム!」
「寝室でやろうねぇ」
「うん!早く早く!」
ライが居るからライのせいにして、寝室に転移する。
「あぐっ!あぐっ!」
ああ、困ったな。
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