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しおりを挟む「天使様にはこちらを」
そういえばリボンが好きってどうして知ってるんだろう?
そんな事を思いながら、ワンピースやら軍服やらが掛けられているので見てみるけど。なんか………やだ。
「荒いわね」
「っっ、どうされました?」
「縫い目が全体的に荒い、リボンの部分は全て後付けね?襟も流行りとは違う……雑な仕事だわ」
「っっ………失礼致しました」
はっ!?ついつい洋服を見て偉そうな事を…!
だって!リクならこんな服持ってこないと思ったらなんだか愛情が薄い気がして…!
拗ねる心が芽生えちゃって…!
「ご、ごめんなさい!生意気な事を言いました!」
「いえ、こちらの不手際ですので」
「そんな事ないよ!私用にって大変だよね?ち、小さ……小さくない!けど、この国にとったら小さいもんね?一からだったから、えっと、急にお願いしちゃった?ごめんなさい」
「いえ……」
リクじゃないリクじゃないリクじゃない!
彼はリクじゃない!
気をしっかり持って!私!
「ライ遊んでくるー」
「いってらっしゃい」
「ヒナノもー」
「私は今、洋服選んでるー」
「えー」
「えー」
「むー!ヒナノはライのだからね!」
「「…」」
なんでだろうか。
アルフに言うなら分かるけど、どうして彼に言うんでしょう。
そしてそのまま消えて行かないでくれ…
本当に本能って凄い………
私には本能が全くないから羨ましくなってきたぞ。
「髪につけるリボンも好きなんです、ありますか?」
「ございますよ」
「見てみたいです!」
今度はテーブルの上に…あ、空間収納だけは使っていいらしいよ?
なんか細かい禁止事項があって面倒だよね。
ああ…
私にって選んでくれたんだ。
出されたリボンは多分、彼が買ってきたんだろう。
私を思って……
「ふふ」
「…」
あのリボンには血の匂いが濃くついてる。
どこかから盗んできたのかな?
こっちのリボンはちょっと生ゴミのような…ドブかな?そんな匂いしてる。落としちゃったとか?
空間収納に入れておけばいいのにね。
あ、あっちは淫魔の………
んー?
人間世界の物じゃないな。
淫魔から盗んだのかな?
「ふふ」
「…」
どうしよう。
この人も馬鹿だ。
「ふふ」
「…」
私の姿形は知ってたんだろうけど、見た事はなかったんだと分かるリボンたち。
不器用な人。
リクなら私の好みを知ってるのに。
「ふふ」
「…」
「失礼、天使様、一度お戻りを」
「え?」
「お早く」
どうしよう…
そういえば、アルフも本能が鋭い人だった。
なにを嗅ぎ取ったかは知らないけど、彼を捕まえて欲しくない。
「リンジー、連れて行け」
「分かった」
ど、どうしよう!
彼をいぶかしげな顔で見ている!
今すぐにでも殺しそうだ!
「天使様」
転移されたらマズイ!
どどどど、どうしよう!?
「私!彼と一晩過ごしたいと思っています!」
「あ゙あ゙!?」
「………」
どうにかなれ!
「あの!私の国では一晩だけの付き合いが普通だったんです!一晩一緒に過ごしませんか!?」
「………私でよけ」
「駄目に決まってんだろ!?」
「煩いよ!」
「駄目だ!お前は俺のモンだ!」
「はあ?有り得ないんだけど!」
「なるんだよ!」
「なる訳ねぇだろ!阿呆が!」
「そいつは怪しいから駄目だ!」
「怪しくない!全っっ然!怪しくない!どこがどう怪しいかきちんと説明出来れば納得してあげるわよ!」
「……雰囲気か?」
「はい!ばかー!」
「あ゙あ゙ん!?」
「雰囲気だけで天使様の、国の騎士が動いちゃったら彼が可哀想じゃん!なんの証拠もないのに!仕事に影響及ぼしたらどうすんだよ!このっっ!阿呆!」
「なんもなければそれでいいだろ!?」
「はい!ばかー!」
「あ゙あ゙!?」
「二人とも落ち着いて…」
どうして本能で動く奴ってこうなの?
なんで分かるの?ねぇ、教えてよ!
観察してやっと分かる私と、“あ、こいつ駄目な奴だ”なんて本能が働くなんて…!
羨ましいな!ちくしょう!
「天使様の言う通り、なにもないなら捕らえる事はしないでおく。でも、アルフの勘も正しい事が多いから帰ってもらう。それでいい?」
「だ」
「いいよ!さ、帰ろう!今すぐ帰ろう!とっとと帰ろう!」
「………失礼致します」
御前失礼してくれ!
君が捕まるのはなんかちょっと心苦しいから!
隣の獣人は冷や汗かきすぎだよ!
もう少しいい奴いなかったのかな!?
「どこ行くのよ」
「確認すんだよ」
やめてくれる!?
彼、多分真っ黒だから!
追わないで!指示も出すな!
「炎のとなに話したのよ」
「…なんでだよ」
「なんか煩い」
「「…」」
よし!止まったああああ!
ついでにリンジーも止まったああああ!
「お前の方が疑わしいじゃねぇか!」
「どこがだ!?」
「全部だよ!全部!コソコソして、周りから押されないと駄目駄目な奴!」
「うん、ヒナノ…部屋に戻ろうか」
「ふんっ!」
「アルフも」
「ふんっ!」
良かった………
私のこれからが危うくなろうとも、彼が危うくならなくて良かったよ……
部屋に転移したアルフは煩く喚いてるけど、無視だ。
「どこが怪しいんだよ!」
「リンジー!私が周りから言われてるって知ってるでしょ!?」
「う、うん」
無視したら逆に怪しいな!
「バーナビーもルーシャンも炎のも「伴侶にならないのか」「あいつはいい男だ」って、周りからのフォローがないと駄目な訳!?」
「なんだその声真似、気持ち悪いな」
「リンジー…!!!」
「分かったから…アルフはもうちょっと歩み寄ってあげて」
「あん?」
「ヒナノも。知らないフリもいいけど、もう少し優しくしてあげて」
「知ってるフリしたら私こいつに襲われる!」
「う、うん…えーと、一回デートしてみたら?」
「はああああ!?」
「デートするぞ」
ちくしょう…!
彼の安全を確保する為の代償がこれなの!?
アルフはアダムに似てるけど…
似てるからこそ私心を全く理解していない!
どこかでお勉強でもしてこいよ!
「天使様がデートってどこ行けるのよ」
「「…」」
「ふんっ!」
良かった……
二人でデートコースを考えてくれて本当にありがとう!
あ。
彼も城から出て行ったよ。
跡をつけてる人間がいるけど……うん、それくらいなら逃げられるね!
「ライと遊んでくる!」
「え!?」「駄目だ!」
「やだ!ライ!遊ぶ!迎えにきて!」
「あそぶー!」
「「ヒナノ!」」
「アルフに協力的な人間ばっかり!私の気持ちなんて全部無視されてる!」
「「…」」
「遊んできます!探さないで下さい!」
適当にライと空の上に転移してから、遊んでた場所に案内してもらった。
「「…」」
人間と遊んでたのか。
「こんにちは」
「………はっ!こ、こんにちは!このような所までよくぞ来て下さいました!私はバッグイグナ国王、シュワール・マクマートリーと申します。天使様」
どうやらどこかの国王が氷のの友達で、三人で遊んでたらしい。
帰ったらバーナビーに報告しておこう。
「国超えしちゃって大丈夫でした?」
「問題ございませんよ」
「一応、バーナビーに今日会った事、伝えておきますね」
「はい、こちらでも手紙を出しておきます」
「なにして遊んでたのー?」
「あのねー、ポーカー。アレスがずっと天界でやってるの教えたら好きだって、シュワールが」
大丈夫かな?仕事に影響出てないかな?
5日続けてポーカーとかしてない?大丈夫そう?
「私もまーぜーて」
「「いいよー!」」
ストン…と、氷のが腰を降ろすのはシュワールの膝の上。
それじゃ、手札が見えちゃうけどねー?
「シュワールと伴侶なの?」
「違うよ?」
「ならないの?」
「なったらどうなるの?」
「毎日一緒に居られる」
「え!?本当?本当?シュワール」
「本当だよ」
どうやらシュワールが押せ押せしてたらしい。
でも、氷のってライとはまた違う純朴さがあるから伝わってなかったんだろうな。って、シュワールがいいパスをありがとう!みたいな顔で見てくるから思った。
「じゃぁ僕!」
「でもお勉強しないとねー?」
「してるよ!ありがとう!たくさんの本、毎日見てるの!」
どういたしましてー。
それはあまり人間の前で言わないでねー?
悪用されちゃうから。
「違うよ、シュワールの常識を学ばないと駄目なの」
「どうして?」
「雪だるま作るの楽しかった?」
「「うん!」」
「ふふ、そういう“楽しい”が増えていくんだよ」
「本当!?僕、シュワールの常識知りたい!」
「……退屈だよ」
「それでもいいよ!だって楽しいが待ってるんだもん!」
「うん…うん…ありがとう」
シュワールもほわほわーってしてるから、なんだかここに居ると溶けちゃいそう。氷なのにね。
「ライ、氷のはしばらくお勉強だって」
「いーよー!ライちょっと呼ばれたの!」
「内緒の相手だね」
「そうなの!いってくる!」
「いってらっしゃい」
私は天使様の部屋に戻る前に、彼の元でも行こうかな。
だってね?
リボンまだ買ってないんだもん。
不可視化をつけて彼の元へ転移すると、どうやらさっきの獣人と商会の痕跡を消してる最中だった。
聞いちゃ駄目かな?と思って、音を遮断してぷかぷか浮きながら、本を読んで待っておこう。
「「…」」
と、思ってたんだけど、なんでか目が合う。
浮かんでるんですけど。
匂いも全て遮断してるんですけどね。
あ。
なんか、手を広げてる。
来て。って意味かな?
後ろから獣人が話しかけてるけど……
いいのかな?
音を戻して…
「こちらに」
不可視化も解いて…
「捕まえた」
彼の腕の中に飛び込んでみた。
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