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128【???】
しおりを挟む『デズモンド様!』
なにに焦がれているのかは分からない。
なにを見ているのか分からない。
だが、私は思う。
夢見る誰かは必ず笑顔で話しかけていると。
そして目を覚ますと、消えている。
焦がれ、手を伸ばした形でいつも起き上がるが…その手に掴んだ事は一度だってない。
『お………く……』
「ヒナ………ノ………」
“彼女”はなんて言っているのだろうか。
いつものように夢を思い出そうとしながら階段を降り、仕事部屋へ向かう。
設計図が目に入ると、夢を忘れ没頭するはずだった。
『綺麗です……とても……世界、ですね』
夢の中の彼女ではなく、彼女の言葉が胸を刺す。
弟子入りしてきた煩い女。
私の世界は酷く狭い。
設計図の中だけだ。知っているのは。
けれど、それを美しいという彼女の瞳はキラキラと輝いていて、それこそが世界だと思った。
彼女が何故、私の夢に出てくる名前を知っているのかは分からない。
けれど、思い出さなければならない。
それが望みだからだ。
「一体誰の望みだ」
分からない。
夢に侵食され生きてきたと自認している。
だからこそ分からない。
これの望みが、私の望みなのか、夢の中の望みなのか。
それとも彼女か。
『あの…行ってもいいですか?』
彼女が話しかけてくる問いには答えられない。
答えを知らないからだ。
だが、答えはある。
それは目の前に。
彼女に似合う設計図を書けば必ず答えに導けると信じ、誰の望みかも分からない望みを果たす為にペンを走らせる。
『デズモンド様!今日も美味しいですね!』
美味しい料理は知っている。
彼女が作る料理だ。
『美味しい緑茶!』
ああ、そうか。
彼女は緑茶が好きなのか。
一体、彼女とは誰なのか、どちらなのかは分からない。
『デズモンド様、愛しています』
デズモンドとは誰だ。
何故、設計図を書き進めれば夢の出来事を思い出せるのか。
『デズモンド様を、ぐすっ、殺した、のは、私、です』
彼女は殺さない。
デズモンドを殺す理由がない。だから、あの時放った言葉は嘘だ。
私は嘘が嫌いだ。嘘ほどくだらなく、時間の無駄になる時はこれ以上ない。
いいや、そんな事より彼女は知っている。
デズモンドを。
いや、そんな事より、“殺すはずがない”と、嘘だと感じた。まずはそれを追及すべきではないか。
『デズモンド様ああああああ!!!』
デズモンドは死ぬ。
彼女を守れず死んでいく。
必ず、死ぬ。
それは彼女が殺したから……果たしてそうだろうか。
彼女は、彼女は……ああ、駄目だ。
彼女が誰かが分からなくなっていく。
「……部屋が、足らない」
そうだ。
彼女が好む部屋が足りない。
だが、これで合っているはずだ。
いいや、間違っている。
部屋が、部屋が足りない。
一体どんな部屋だ。
なにが足りていない。
『海のとパジャマパーティーがしたいんです。いいですか?』
そうか、彼女には友がいる。
その友の為、部屋を作らなければならない。
それが望みなのだから。
どのような部屋なのか、私は知っている。
私とは誰なのか。
『デズモンド様、愛しています』
「私も……わた、し……も………」
ひゅぅっとその時、風が吹いた。
「デズモンド………?」
「誰だ?」
「………デズモンド、ヒナノのところに行かなきゃ。連れて行ってあげるか」
また“ヒナノ”か。
何故この精霊が知っているのか分からない。
「出ていけ」
「っっ、ヒナノの事覚えてないの!?」
知りたいのは私の方だ。
私の人生全てを支配している“ヒナノ”がなにか知りたくもなる。
だが、どこにも答えがない。
「煩い」
「………」
やっと目の前から居なくなった精霊に気にせず、また設計士を書き上げようとした途端、地響きが届いた。
ドンッッッッ!!!
その瞬間。
ザバアアアァァァッッッ!!!
目の前の設計図も、
私の家も、
“彼女”との空間も、
全て、
海にと消えた。
「魔王!!!」
繋がりが消えていくと感じた。
バンッッッ!!!
「海の!!!」
「どけ!阿呆が!余は無事じゃ!」
よく分からない苛立ちが湧き上がり、私の全てを消し去った原因を私の手で消すことにした。
「ヒナを忘れるなど許さぬぞ!!!」
忘れている訳ではない。
「このっっ!阿呆が!!!」
知らないだけだ。
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