化け物天使は常識知らず!

ユミグ

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ルーシャンたちの双子である男の子のクィンは父親のように運命の人と結ばれたいと、海のの背を抜かす前から言っていた。
女の子のセネットはじーさんの仕事仲間である庭師に恋している。毎日のようにアタックしているけれど、相手の方が何枚も上手で、ひょろりと躱されているとは聞いて、見て、知っているけど、相手も満更ではないのも見て、知っている。どちらが先に折れるのかは言わずもがな。
そんな二人の将来の夢は同じ。
ダウエルの補佐として支えられる人間になりたいと、日々お勉強を黙々と続けている。
ダウエル本人も、貴族らも、そして家族もダウエルが跡を継ぐ事に関して文句はないようで、今のところは平和だ。
でも、ダウエルが跡を継いでしまったら運命を探しに行く時間がなくなるからと、3年前から城を出て愛を見つけようとしているクィンがなんと、運命を見つけた。
相手は魔人らしく仕事もしていたので、口説くのには時間がかかったけど、なんとか口説き落とせたらしいので、風のが連れて帰って来てくれるらしい。というか、もう帰って来ている。
数日前に帰って来たクィンは家族に紹介し、なんなら仲の良い貴族達にも顔を見せたんだとか。クィンは閉じ込めたいという欲求よりも、好きな人を見せびらかしたいという欲求が強いらしい。まぁ、それでも、好きな人にだけは自分の事しか見て欲しくないという性格は変わっていないと思うけど。
私に会わせてくれるのは今日。
まだダウエルと同じ場所には居られないので、天使様の部屋ではじめましての挨拶をする事になった。

『ヒナ』
「ひっ!?」
「どうした」

もう少しでクィンが来てくれるという今、なぜだか聞いたことのない、おどろおどろしい声音で声をかけてきたのは、

『う、海の、ど、どうしたの?』
『しばらく会いに来るなよ』
『は、はい!………ど、どうし』
『黙っとれ』
『はいぃぃ!!!』

どうしたのでしょうか。
そんな恐ろしい声音を出しちゃって。
一体誰がなにをしたんでしょうか。

「おい」
「うん、海のが怖かった」
「あん?」

気を取り直して……う、うん!気を取り直して!コ、コホン!

まだ正式に家族になっていないので、ニウの紹介はまだ。メルは周知の事実なので一緒に居ます。
最近はアルフかイセトの家に居るので、リンジーのお世話も久々だ。

コンコンコン…

軽やかなノック音の後に続くのはクィンと運命の人。
どんな人なのかな?なんてワクワクしながら待っている私の視界には………

「え?淫魔?」
「あ?」「え?」
「………淫魔に会った事あるの」

クィン違うよ!誤解だよ!嫉妬しなくていいからね!
ていうかそんな事より…!そんな事より…!

「え?天使………様?」

やべぇ!やべぇやべぇやべぇ!
彼のチャレンジャーじゃん!仕事仲間じゃん!ええ!?世界は広いよ!?なんでよりにもよって彼なの!?チャレンジャーなの!?

「ヒナノ………」
「はひっ!」

今日はもうおどろおどろしい声を聞きたくないよ!
クィンは相変わらず好きな物や者に対しての執着が凄いね!

「知り合い?」
「「………」」

別に知り合いと言ってもいい。
私が自由奔放なのはクィンもセネットもダウエルだって知ってるだろうし、別にいい!
でもでも……彼が彼のチャレンジャーだと知ったら………

「ねぇ」
「「………」」

ね!君もマズイと思うよね!?
言ってた!?ちゃんとそういう過去もあるって言った!?言ってなかったら私が言うのも違うと思うから無言を貫くよ!

「おい」
「うん、アルフは黙ってて」
「ヒナノは黙らなくていいよ」
「………」

黙るよ!?

「あー…えーっと…はじめまして?かな?」
「わー、ハジメマシテー」
「………ペラーズ、ヒナノ」
「「はい」」

ペラーズって名前なんだね!

「説明して」
「「………」」

どう説明しよう………
私がしてもいいのか?

「えーっと、ペラーズ?説明、してもいい、のかな?」
「ど、どうだろうか。天使様の事情もあるだろうし」
「いやいや、私に事情なんてないよ。うん。まっさらだよ!」
「………クィン、話しただろう?前に、その、」
「片思いってやつね」
「「………」」

そんなピリピリとした空気で聞かなくてもいいと思いますよ!

「その人の弟子として紹介されたのが天使様なんだ」
「弟子?ああ、運命か」

アルフ!!!今は言わないで!なんかちょっと気まずいから!!!

「運命?」
「ペラーズ、君、大丈夫。気にしないで」
「あ、ああ」
「行くよ」
「「………」」

そんな不機嫌になりながらいなくならなくても………

「どうした」
「ぅぅ……運命にアタックしてた人だよぉ…」
「あん?」
「なるほど…クィン殿下が不機嫌になるのも無理ないね。はい、紅茶」
「ぅぅ……ありがとだよぉ……」

こ、怖かった…。
い、いや、怖いのはペラーズだろう!
だって私と違って逃げられない!
ああ、でも…今から籠もり期間に入っちゃうかもしれないなぁ…。

「ぅぅ…一応バーナビーに籠もり期間に入るかもって伝えるぅ」
「俺が伝えてくる、そのまま護衛に戻るから大人しくしとけ」
「分かったぁ」

暇になったし、海ののところでも………
うん、やめておこう。
というよりなんだったんだろう?「来るな」なんて言われる事、今までなかった。
エロエロな雰囲気でもなさそうだし…風のに聞いてみようかな?

『風のー?』
『言えないよ~』

どうやら口止めされてるらしい。
なんなんだろう?
気になるけど、まぁ、いっか。
そのうち教えてくれるでしょ。

なんて考えてたら、むしろ忘れていた私に緊急要請が入ったのはその日から3日後の事。

あ、ちなみに、クィンはやっぱり籠もり期間に入りました。





『ヒナノ、今すぐ会議室に来れるか?』

バーナビーからのお願い久しぶりでわくわくしちゃう!
最近は天使様してる感じしなくて、このままでいいのかなぁ?なんて思ってたから!

『すぐ行くね』
『助かる』

楽しみです!!!

ニウをじーさんに預けてから、天使様の部屋に向かって、リンジーから渡されていた軍服に着替えて化粧してる途中でリンジーがやってきた。

「続きは俺が」
「わあーい!リンジーのお世話だー!」
「くすくす、もう少し天使様らしくしてくれたらいつだってお世話するのに」
「えへへー」

最近はアルフもメルもイセトも忙しそうだったから精霊たちと遊んでたのだ。

「どうやら他国の人が困ってるらしいよ」
「天使様にお願いするほど?」
「みたい。王様も耳を傾けるほどだし」
「だあれ?」
「ニューベリーレ国王が直々に」
「へ?」

ニューベリーレ国とは最近、縁があるな。
イセトが根城にしてる国からのお願いだなんて……あ、だからイセトも忙しいのかな?
んー?でもでも、ワルワルの人はもう少し大人しくしてる時期だと思うし………。

「はい、できた」
「いつも可愛くしてくれてありがとう!」
「ふふっ、いつも可愛いよ」
「おお…!リンジーがますますいい男になってる!」
「それなら良かった」

リンジーにエスコートされながら部屋の外に出ると、いつもより多い護衛たちに疑問が一瞬浮かんだけど、そうだよね。他国からしたら天使様の護衛ってこんなもんだよね。なんて思いながら、バーナビーたちが待ってる部屋に向かった。

「初めてお会い致します。私、ニューベリーレ国を率いているプリチャード・マクラウドと申します」

はじめましてじゃないよー、久しぶりだよー。男の姿で会ってたよー。

「はじめまして天使です。どうぞお座りください」
「ありがとうございます」

私も座ると時間がないのか早速本題に入るニューベリーレ国王。

「このような事を天使様に願うのは間違っているとは存じております。ですが……ですが天使様にしか、いえ、仲の良い方を天使様しか存じなく、お恥ずかしくもお願いに来ました」
「はい」

仲の良い?ワルワルと?それなら普通かな?

「どうか………どうかお願いです!精霊様の怒りを鎮めて頂けませんか!?」
「………?」

精霊?誰かが暴れてるって事?
うーん………。もしそれが本当だとしても、止める理由がないなぁ…。

「街に被害は然程ありません。ですがこのままでは国が崩壊してしまいます」

どうやら相当暴れ回ってるらしい。
うーん…炎のと音のは違うでしょ?宴会に途中参加した土のと森のも違うし。

「このままでは海の渦で国が沈んでしまいます」
「「「………」」」

その言葉で私とバーナビーとルーシャン、リンジーと護衛してるアルフは気付いた。
十中八九、海のだろうと。
そして、「来るなよ」という意味もなんとなく理解しました………。

「お力になれません」
「っっ、ですが!このままでは」
「落ち着け、ニューベリーレ国王よ」

バーナビーが落ち着かせてくれるけど、うん。海のに禁止までされてる事をする勇気は誰にもありません。

「対話はできぬのか」
「どうやら一人の人間と敵対しているらしく、その者以外の言葉に耳を貸さないのです」
「相手は分かっているのか」
「ええ、最初に被害のあった住宅街に住んでいる設計士のようです」
「…」

え?設計士?設計士って設計士?
建物を作る設計士?
え?え?もしかして彼の事?

え?

「姿形は分かりますか?」
「あまり表立つ者ではないので情報は少ないですが…空中戦を繰り広げている場所の近くまで行けた騎士によると黒髪だったと。あまり背も高くないようです」
「「「「………」」」」

いや、やめてね!?
みんなして私を見ないで!?
私じゃないよ!?

ど、どうしよう…
もし彼なら…ていうかなんで海のと彼が……

………………

デズモンド様と姿形が同じだからか!

『海の!彼はなにも知ら』
『黙っとれ!』
『風の!彼はなにも知らないの!』
『ヒナノは手、出しちゃだめ~、これは僕たちが相手するんだから』

いや、なに敵対してんの!?
ていうか合ってたね!え!?もしかして私の為!?嬉しいけど!なにしてんの!?

「私が仲の良い精霊とも限りません。一度、声をかけてみますが…」
「ああ…!ああ…!ありがとうございます!」

そんなに感謝しないでくれ………胸が苦しくなるよ。

『バーナビー…どうしよう…』
『………なにをしたんだ………』

私まだなにもしてないよ!?
説明するから!
とりあえず説明してから呆れてぇぇぇぇ!!!
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