化け物天使は常識知らず!

ユミグ

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「多分だけど…」
「だがしかし、何故暴れてる」
「だって海のだし…」
「「…」」

海のがどうして彼とふぁいっ!してるのか分からないけど、海のだし…。口よりも先に手が出ちゃうだろうから…。
というよりなにを話してるんだろうか…。

「止められないか?」
「ルーシャン…私が海のを止められると思う?」
「…」

ね。

「来るな」とも言われてるところに行ける勇気もありません。

「だがこのままじゃ」
「あ、それは大丈夫。海のはちゃんと考えて暴れてるよ」

人を殺したりなんてしない。
ちょこーっと街を壊すくらいはすると思うけど。
どちらかというより、彼の暴れ具合が……
待てよ?
なにも知らないのに海のたちに凶弾されてるのは、あまりに可哀想では?

『あ、あの…大丈夫ですか?』
『…』

うん、無言だよね!知ってた!

「どうしよう………」
「「「「…」」」」



*********************************


【???】


「デズモンド様!可愛くできました!」
「お前の方がずっといい」
「あう…」

魔国。
それは私が治める国。
私が作り上げた国であり、終わりは存在しない国。
私という存在が「唯一無二」だという事は、知っていた。
いつから知り得ていたのかは分からない。だが知っている。
寿命が存在せず、私という存在が私しか存在しないという事を。

「ん……デズ、モンド、さま」
「ヒナノ」

私には妃がいた。
魔人ではない人間の女。
ヒナノもまた、唯一無二だ。
そう感じているのは私だけ。
寿命がなく、己とはなにか。という事を探している女。
精霊に紹介されたその女は魔力を持たず、無力だった。
だから守った。愛しているから。
守られている事すら分かっていない、弱弱しい私の妃。

「おはようございます!」
「おはよう」

私の魔力は強すぎる。
そして、魔王としての畏怖が強すぎて誰であろうと近寄れなかった私の横で気持ちよく眠る者がいる。
無垢で、柔らかく、むき出しのまま存在しているようなヒナノが。

「わあ!緑茶!飲みたいと思ってたんです!ん-!美味しいです!」
「…」

私もヒナノも寿命がない。
だからこそ憂いもなく、生きていける。
私が守ってさえいれば、生き続ける彼女と共に。

「デズモンド様!!!」
「ヒナノ!」

だが守れなかった。
一万年記念だと、可愛らしい事を思い付く彼女の背後を悪魔に取られた。
私は唯一無二だ。
だからこそ死なないでいられると、彼女を守れると信じていたが、数千の悪魔に囲まれ、魔力が枯渇するまで戦ったあげく、このざまだ。
目の前でヒナノの耳と腕が切られ、守りの陣の装飾も失くしたヒナノはなににも守られていない。私自身が守ることも叶わない。

「デズモンド様!デズモンド様!」
「ふざけるなよ!」

背後を取った仮面を被った悪魔に…いや、あれは悪魔ではなかった。
悪魔ではないナニかがヒナノの残っている腕を掴み、私の心臓を捕えた。
その時だ。私が…デズモンドが死んだのは。
いや、デズモンドは私だ。
そして私の妃はヒナノ。
私のモノで、唯一無二の愛。

「魔王!まだ寝ぼけているか!」

ああ、そうだ。

何故忘れていたんだ。

私の唯一。

私のモノを。

「ヒナノ」

そうだ。彼女を守らねば。

「ヒナノ」

あれを私のモノにしなければ気が済まない。

「ヒナノ」

あれは私だけのモノだ。

「ヒナノ」

そして、私もまた、あれだけのモノだ。

「デズモンド…思い出せたの?」
「ヒナノはどこだ」
「このっ!阿呆が!遅いぞ!風の!」
「分かってるよ~」



*********************************



「どうしよう………」

困り果てていた時、風のの気配がして、転移されるんだと分かった瞬間、安堵した。もう終わったんだと。

でも違った。

「ヒナノ!」
「………え?」

どうしてか彼までもが目の前に居て、一瞬だけ見えた海のは少しだけ泣き腫らしたような顔だったけど、すぐに風のと居なくなってしまって………

「ヒナノ、もう大丈夫だ。怖くない」

宙に浮いている彼の声が、デズモンド様のように思えた。

「ヒナノ」
「デズ、モンド、さ……ま………?」
「そうだ、なにがあった」

分からない。
なにもかも分からない。
私にはいつだって分からない事だらけだ。

「デズモンドさま…」
「ヒナノ」

でも…思い出してくれたんだ。
不必要な事はないと、二人にとって不必要な思い出が一つもないと言ってくれるように、

「ヒナノ」

思い出してくれた。

現れてから抱きしめてくれるデズモンド様に、抱きしめ返そうと、両腕に力を入れて、持ち上げるように手を伸ばした私の手を、まるで支えるように伸ばしたデズモンド様の指先が。

「え?」
「っっ、」

私の胸を鷲掴んだ。

まるで心臓を取り出し、デズモンド様のモノだけになるように掴まれているんだと思った瞬間、デズモンド様の手が私の胸をすり抜け、魂を握った。

「え?」
「っっ、もうお前を失いたくはない!!!」

デズモンド様を取り込んでしまった時と同じように、魂の輝きが部屋中を覆い、音なき音で耳が支配される。今度は逆の立場で。

デズモンド様が取り込もうと私の魂を握っている。

「………デズモンド様………」
「っっ~~!無理だ!お前が居ない人生など要らない!」

どうなってしまうのか私にも分からない。
でも…もしこれで最期だとしたら伝えておかなくちゃ。

「愛しています。デズモンド様」
「っっ、ヒナノ!ヒナノ!」

どんどんと音なき音が大きくなって、やがて、何も聞こえなくなった。

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