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しおりを挟む魂を取り込む行為は一瞬だけ眠りについてしまう。
それを知っているからこそ、もし生き残るのなら早く目を開けようと意識して眠ったお陰かすぐに覚醒した。
「すー…すー…」
「良かった………」
瓦礫の上で横になっている私の上で眠っているデズモンド様は死んでいない。そして私も。
けれど私は永遠に失ったモノがある。
魔王の魂だ。
まるで返すというように、主の元へ戻ったかのように、魔王の魂がデズモンド様の魂と混じり合っている。
どうしてかなんて分からない。憶測だけなら立てられるけれど、それは答えではない。
でも、イセトの言葉を借りるなら私が「正しい」と思ったならそれは世界の正しさになる。
うん、そう思おう。
デズモンド様は生まれ変わった。
記憶だけを継いで。
でもそれでは足りなかった。デズモンド様という存在になる為に、魔王だと己を認識しているデズモンド様に足らなかったのは、魔王の魂だった。
それを返してもらおうと、無意識に取り込んだんだ。
「デズモンド様、起きてください」
伏せていて分からないデズモンド様の顔はきっと、
「デズモンド様、愛しています。どこまでも」
「………ヒナノ!」
ほら、デズモンド様だ。
年老いたと分かる皺はなくなり、私が知っているデズモンド様がそこに居る。
長髪になったデズモンド様もまた、デズモンド様のあるべき姿だ。
「愛しています、魔王様」
「名で呼べ」
黒目黒髪だけど、私への愛が溢れている時は濃い赤の瞳になるんだ。
今のように。
「ふふっ、魔王様になってますよ、デズモンド様」
「…」
「私が取り込んでしまった魔王の魂をお返ししただけです」
「…」
「とても素敵です、魔王様」
「…気に食わない」
「へ?」
今のままでよかったとか?
「お前を守るには魔王の魂だけでは足りない」
こんな私をまだ守ろうとしてくれている。
「また力及ばない事柄が出来てしまうのが嫌だ。どうしたらお前を守れる」
「私は強くなりました」
「どうなるか分からなかっただろう」
魂の事かな?
「はい」
「抗える私でいたい」
「どうしてですか?」
「お前を守り、お前の平穏を守りたいからだ」
「は、はい」
「強くなれる方法を知っているか」
そういう意味でなら知っている。
私の眷属となれば神と変わらない存在になり、寿命もなくなり、神が扱う力も手に入る。永遠に生きると言ってくれたデズモンド様なら眷属になると言ってくれるだろう。
でも…
「私の眷属になれば今よりも死ににくくなります、神の力を手に入れられますから」
「お前に縛られるのも悪くない」
久しぶりに見たニヒルな表情に目を奪われる。
「でも…デズモンド様の周りの人達が死んだあとに」
「嫌だ」
「え?」
「敵わない私でいたくない。お前を守れない今を生きていたくない」
「でも、長く眠りについちゃうんです」
「………お前を一人にさせてしまうのか」
一人じゃないよ。
たくさんの子も、愛してくれる伴侶もいる。
「私はあの頃のようになにも知らない存在ではなくなりました」
「…」
「今の私は強く、傍にいてくれるみんながいます。だから、大丈夫、怖くないですよ」
「眷属に」
「は、はい、い、いえ、」
「時間がない」
「え、っと、………はい?」
「死ぬ可能性がある今を生きていたくない」
「で、でも…」
「お前と永遠に生きていく」
「っっ」
「永遠を与えてくれ」
「……デズモンドさま……」
「お前を私の眷属にしたい」
「っっ、は、はい!」
いつだってデズモンド様は魔王様だ。
これからする行為はあくまで、私が眷属にする為ではなく、デズモンド様の眷属として生き、そして……
「私がお前の命を操り、守る」
「いいえ、私も守ります」
「……一緒だ」
「はい、一緒です」
全てはあとに。
「愛しています」
「愛している」
残虐さの残る笑顔はデズモンド様だけのもの。
「私も生きた、訳の分からない感情と共に」
デズモンド様の頬に触れて、
「伝えられなかった言葉を今なら分かる」
顔を近づける私は熱い涙を流していて、
「見過ごした全てを聞き、そしてお前にも聞いてもらいたい」
無表情に見えるデズモンド様も、どうしてか涙を流している。
「私たちには時間が足りない」
ゆっくりとおでこにおでこを当てる。
「永遠でなければ駄目だ」
眷属となれ。
そう願うと、デズモンド様の魂がくるくると回るように変化していく。
「ヒナノの全てを食らい尽くし、私だけの存在に」
そう言い放ったデズモンド様は私に噛みつくように、荒々しいキスをして、
トサッ…
深いねむりについた。
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