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淫魔編
5-28
しおりを挟むなんでか朝ご飯をアディティの膝の上で食べて、魚だから美味しく頂いたけど…ドレスまで着せられてるんだろう?
君、昨日は放り投げたじゃん。
リクは心得たのかノックなしに入って来たから柔軟な対応するリクに惚れ惚れしながら、一緒に入って来たアルナブにアディティの世話を頼む。
「リクおはよ」
「おはようございます」
「アルナブ、今日からしばらくアディティよろしくね」
「なんでだよ」
「嫌になったか?」
そんな笑顔で聞かれても…嫌じゃない事は体で分かってるんですね、そうですか。
「補足は今日聞くけどー、しばらく夜中まで仕事するからアディティのちょっかい頑張れー」
「そうか!アルナブ、拒絶するなと命が出ては仕方ないな!」
「そんな事は言ってねぇだろ!」
私をリクに渡してアルナブと出て行くアディティは元気だな。
化粧は私がして髪はリクにしてもらう。
「おおう?」
ぷるぷるな足は立つのがやっとだ。
王城でリクが抱える訳にもいかないからしばらく慣らす為に突っ立ってる私の手を持つリクは…
「なんで!?」
「この方がよろしいと」
髪を撫で付けたリクはお貴族様バージョン。
お金は貴族をしてた時より手元の潤いはあるだろうけど、城からも出てるし多分支給されたんだ…
だってリクの趣味じゃない。
旅をしてる時や商人の時はもっとシンプルだったもん。
「ちょっと!誰よ?リクをこんなのにしたのは!」
「くすっ、国王の命ですよ」
「リクの服装は私が決めます!」
「私もその方が嬉しいです」
「最初はその話からお願いします!」
「くすくす」
仕立てを呼んで私のデザインと流行りを取り入れた物を作った、もちろんリクの好みも聞きながら。
私が1番リクを理解してるし!こんなジャラジャラキラキラよりもシックで所々遊び心がある服装の方がリクは好きだし似合ってるの!
私のお金から出したけど全然余ってるし!なんなら使い切っても問題ないし!あの国王センスねぇ!
大体私にと贈ってるドレスも宝石やら何枚も重ねたり面倒すぎんだよ!我慢するけど!妃として…いや、アルナブに相談しよ。
お昼も魚を食べてアルナブが執務室に来たから手を止めて、とりあえず昨日の続きを聞いた後に問い詰める。
「このドレスって趣味?」
「女の喜ぶもんだと思ってる」
「趣味悪すぎだって伝えておいて」
「だろうな」
「私が仕立てと相談するから無駄な贈り物はやめてとも伝えて」
「ああ」
「ちなみに無駄を強調しといて」
「だろうなぁ」
私の部屋はまだ見てないけど、ていうかリクと一緒の部屋だけど絶対げんなりする。
「あとモラレス伯爵とロス子爵は繋がってるから気を付けて」
「どれだ?」
「こちらに」
「あ、ああ」
歴史は知ってた、本は覚えておこうと暗記してたし、これから先の事も少しなら分かる。
バーズリー国ほどではないけど。
だからこそ人間の面倒臭さにげんなりする。
どことどこが仲が悪くて、どことどこの男が妻を取り合ってるだとか、女のワガママに翻弄されて領地を動かしたりとか。
領地経営は嫌というほど頭に入ってる。
だからこそこんなに頭の悪い人間が蔓延っている事に改めて驚いた。
領地は生き物だ、だからこそ流れを掴み全てを理解しなければならない。
そうして国は成り立っているのに。
「リク、全部渡しておいて」
「かしこまりました」
「んおっ!?全部か!?」
「国王の権限はアディティでしょ」
リクには速読やらなんやらの魔法陣を使ってもらって昨日見た、毎日魔力を使わせて申し訳ないけど、気長に見てたら一生今に追いつけない。
私は魔王じゃないから。
「式が終わり次第、各部署の見学していいかも聞いておいて」
「わ、分かった」
「そうだリク」
「はい」
「私とアルナブとアディティ3人って嫌?」
「なっ!?」
「いえ、馬鹿な夫が増える以外なら私に嫌はありませんよ」
「分かった、アルナブ考えておいて」
「なっ!?なんて事考えてやがる!」
「アディティ好きそう」
「っっ、考えるだけだ!」
そう言いながら出て行ったアルナブに、それってもう了承してるようなものなんだけどねーなんて思った。
その日から食事を1食増やしてきちんと食べる代わりに睡眠時間を減らしてもらった。
リクには寝てもらいたかったんだけど、今だけですからと一緒に起きて手伝ってくれた。
式までの間にアディティの仕事とマナー、それとアイリッシュを度々見に行き世話を変わってもらった、アディティには許可も出たし。
ナルマイとの子であるアイリッシュはか弱くてびくびくした。
魔国に居た時はみんなこんな気持ちだったんだなぁって痛感した。
「アイリッシュこんにちは」
「あきゃっ!きゃっ!きゃっ!」
「抱き上げてもいいですか?」
「きゃっ!きゃっ!」
まだ言葉を話せないアイリッシュを見て子育ての本を読み漁ったら、どうやら3ヶ月過ぎても話せないし投げてもいけないらしい。
本を読んであげる事しか出来なかった私にはちょうどいい相手だ。
「いいですか?攻め時を間違えてはなりませんよ」
「きゃぁっ!きゃっ!」
「相手を蹂躙出来なければ攻撃してはいけません」
「きゃっ!きゃっ!」
そうやって魔国に居た時と同じように気まぐれでアディティの子育てを手伝った。
ちなみに罪人の腹は膨れてきたみたいで魔力の流れと成長を日々観察してもらってる。
式は半年後に、そして盛大に行われるらしい。
それらを取り仕切ってるのが私だ。
なんでだよと抗議したけど、そういうものだが式は嫌いか?と問われ、どうでもいいと答えたらなんでか襲われた。
アディティのスイッチは日に日に変態な部分で発揮する。
アイリッシュの子育てを手伝いに来た今日、アディティとバッティングした。
「下がれ」
周りの者を下げて私達4人とアイリッシュだけになった、なんで?
「きゃーっ!ちゃ!ちゃ!」
「はい、こんにちは。今日はアディティが来てくれて良かったですね」
「ちゃー!」
「む?ヒナノがいいのか?ほれ」
「ちゃ!ちゃ!きゃー!」
「アイリッシュ、今日の勉強は骨の折り方ですよ」
「ちゃ!」
「まず関節を理解しましょうね、私の指を」
「おい!」
「なに?アルナブ」
「なんて事教えてんだ」
「?教育だけど」
「ははっ!よいよい」
なにか間違えてたのかな。
それならこの国の風習に合わせないと。
「間違ってたら教えて?なにが違う?」
「「…」」
「うん?」
「まずなんで敬語なんだ?」
アディティが不思議そうに言うから私も不思議に思う。
「なんでって私より立場が上だから」
「ふむ…その教育はなんだ?」
「え?骨の折り方だけど」
「必要か?」
「どうやって撃退するの?」
「「…」」
ううん、困った。
というのもこういう事が最近多い。
大体は異世界の者だからで通るんだけど、つい出てしまう常識や考え方がどうにもおかしく見えるみたい。
リクが何も言わないから気付くのが遅れた。
他の生もこうやって表へ出たり子育てをしなかったから魔国以外では目立つらしい。
「ちゃ!ちゃ!」
「失礼しました、では骨を」
「やっ」
「眠いのですか?」
「やぁ…」
「では歌にしましょう」
「ちゃ!」
アイリッシュを抱き上げて頭を撫でて体を支えながら歌うとすぐに寝る。
こんなに寝ては体調を崩さないかと度々心の中で心配するけど、その都度本を思い出してそんなもんかと思う。
寝たのを確認してアディティに渡す。
「「…」」
「骨は触らないと分からないので、絵の描き方を」
「なんで話す?」
「え?寝てても理解しないの?」
「…せん」
「それは本になかった」
「「…」」
ううん、今までの子育てが培わないな。
「ふっ、いい歌だ」
「ありがと、リク戻ろ」
「かしこまりました」
「寝顔を見ないのか?」
「どうして?」
「「…」」
「アディティの子育てを手伝ってるけど、寝たら手伝う事もないと思った。寝てる時になにかあるの?」
「…ないな」
「そっか」
「ふっ、なるほどな」
ううん、その、私を1つ理解したみたいな顔はやめろ下さい。
最近はこういう事が多いから戸惑うアディティとアルナブをよく見るけど気にしない事にした。
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