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淫魔編
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しおりを挟むどうやら匂いが凄いらしい。
私の匂いだ。
とてもかぐわしいらしい、ちょこっとツガイかも?なんて思う程に香しい匂いを放っているんだとか。
ちなみに凄いのはそっちの匂いじゃない、性行為をした相手の匂いを纏ってるとヴァージルに言われた、とっても気まずい顔で。
「奔放ってどんな常識?」
「男も女も好まれませんね」
そんな感じ。
だから匂いなくなれーってやってみたら相手の匂いだけなくなったみたい、ヴァージルも驚いてた。
うん、次からこれも忘れずに。
私を架け橋とするにも話やら条件やら色々と大変みたい。
私としては長くなれば長くなるほどいいと伝えておいた、それに全部投げた。
私は知識が欲しい。
全ての知識が。
獣人の小説は面白い。
ほとんどがツガイに関連してる。
歴史もだ。
ツガイを奪いツガイを愛しツガイを求めて戦争を起こす。
面白い。
それといい事を聞いた。
獣人の寿命は平均200歳、そして噛むと相手も引っ張られる。
だから寿命を延ばす事は確実に可能だ。
それならと、色々試してみたいけど、せっかく獣人の居る世界に留まってるんだから特訓がしたい。
私は魔人という事になった、そして魔人の子どもを発見したと、その者が浄化出来ると…そういう事にしたらしいよ!ふんっ!
だから匂いなどの訓練は1人の先生が着いた。
ツガイが居てツガイとも挨拶をしたし、2人になんの興味がない事も伝えた。
だけど困った事がある。
「ヒナノ様!」
「ごめんなさーい!」
「今は鼻の訓練だろう!?今心音がザワついた!また俺の耳見てただろ!?」
「獣人ってツライぃぃぃぃ!」
そうなのだ、ぴょこぴょこ動く丸みを帯びた茶色の耳に細長い尻尾。
くはあぁぁぁっっ…!可愛すぎる!
「ヒナノ様!」
「ごめんなさーい!」
心音で相手の考えている事までは分からない。
だけど、訓練すればその心音がなにを示すのか分かってくる。
これは人の表情を読み取るのと同じだ。
だから心音を隠すのは簡単だったんだけど、心音を判別するのが難しい。
匂いも耳もやっぱり劣ってるらしい私は魔人でも通用すると思ったんだろう。
即座に判断し行動するヴァージルは凄いと思う、尊敬している。
「ヴァージルは今まで見てきた者達の中で3番目に判断が早い、それは誰にも真似できないわ、この世界では間違いなく最強の獣王だ」
「っっ、あ、ありがとうございます」
ちなみに1番はと聞かれたから魔王様って言っておいた。
2番がリクなのは私の為にだけ動くからちょっと異なるかなと思って言っただけで遅いなんて思ってないからね!?愛してるよリク!
耳と尻尾も制御出来るらしい。
その勉強はずっと後にしようと思ってる、出さないからね。
それと私の匂いは消せないらしい、だから薬を探してみた。
匂いを消す薬、ちょっと息抜きしたい時にだけど、探して調合しては確認してもらう。
知識は頭に入ってるけど、作った事ないから試行錯誤だ、魔力の流れを陣で目にかけて薬草を1つ1つ見ていった。
「ヒナノ様!」
「先生が悪い気してきたよぉ」
「ちゃんとやれ!」
「ああああっ…獣人ってツライぃぃぃっ!」
獣人にむやみやたらと触ってはいけない。
そして絶対に触れてはいけないのが耳と尻尾だ。
ぐはっ…!ツライよぉ…!誰か触らせてぇぇ!
獣人には一途な者が多い。
それはツガイという存在が居るからだ。
いつか現れる相手の為に清く生きていく者が多い、もちろんそんな獣人ばかりではないけど、先生とヴァージルに話を聞いているとツガイにどんどん魅力されていく。
そんな風に思われたい、思いたい。
もちろん思ってたし、今も思ってるけど、心から焦がれて無理矢理にでも捕まえたいという衝動を体感してみたい…ん?ああ、なるほど
私の頭はどこまでも実験体質になったらしい。
「ヴァージル、ここの書類変だよ」
「ありがとうございます」
ちょこちょこ手伝いもしてる。
私は先生とヴァージル以外、護衛は別だけど、まだ見せるには危ういらしい。
浄化機能は召喚ではなく勝手に現れる人間だからとっても位が高いみたい。
「ヴァージル、どうしてこうなった?」
「それは私が聞きたい…ですが、とても助かります、たくさんの福音を運んで下さって本当に感謝ばかりが増えていきます」
「…」
私が作った匂い消しは匂い消しにならなかった、興奮を抑える薬になった。
獣人がツガイを見つけても飲めば少しは治まる…ようになるまでは数十年とかかるだろうけど、妊娠しててもツガイ相手に襲いたくなる衝動なども抑えられる薬になる。
どうしてこうなった…
獣王を召喚する陣は覚えて写した。
それと悪魔を召喚する陣も見つけたからこっそり奪っておいた、悪魔にとってこの世界は楽しいらしい。
いつかナインとエイスに会えたらいい。
会えないのはきっとデズモンド様と獣王のおじいさんだ。
だけど探したよ。
認識阻害をかけながら探したよ。
見つからなかったね。
どこにも…この世界にもデズモンド様は居なかった。
どこかに居るかな?
会いたいです。
どうやらこの世界はお風呂に浸かる習慣があるらしい。
だけど今は訓練やらで忙しいから後で…
「決まりました」
「うん」
「危ないのでまだ内密に」
「うん」
「送りは」
「転移で行けばいいんじゃない?」
「では一応送る事にしておきますから」
「うん」
「本当にありがとうございました」
「うーん…」
「どうされました?」
「ツガイがずっと心配してる、1回話し合ったら?」
「本当…ありがとうございます」
最大級のお礼らしいそれは頭を撫でてっていってるみたいだから、耳を触らないように気をつけてわしゃわしゃと、今度こそ撫でた。
「これが撫でるだよ」
「くすっ、ありがとう」
私がこの世界に来て3年で隣国に向かう事になった。
愛し方を習った。
相手を思う事はいつだってしていいと習った。
共有したいと思う心を習った。
抱え込まないでいつだって半分この愛を習った。
この国は愛で溢れてる。
「ヒナノ様」
「んえ?」
「ヒナノ様はそこまで出来ないと思う」
「諦めろって先生が…!酷いっ!」
「子どもでも出来る!」
「なんであんな場所の声が聞こえるのおおおおっ!」
「諦めろ!」
「獣人ってツライぃぃぃっ!」
「尻尾を見るな!」
私はとても劣化品らしい。
人間より魔人よりいい耳と鼻と目は獣人にとっては病気かと思える程に弱いみたいだ。
時間はあるしゆっくりしよと決めて隣国に行った後。
私はまた召喚の旅に出るんだ。
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