70 / 197
〜第3章〜
67.『痛み』
しおりを挟む逃亡に成功したスイとみつれは旧トンネルの隠れ家に戻っていた。
スイ「なんとか帰ってこれたね。」
みつ「・・・そうだね。」
戻ってきてもみつれの表情は晴れなかった。
あんな逃走劇があった後だ。無理もない。
今のみつれには刺激が強過ぎた。
スイは元気づけようと明るく振る舞う。
スイ「ポチ!一緒にお風呂入ろうよ!」
みつ「うん。はいる。」
スイ「じゃあ準備してくるよ。部屋で待ってて」
一度湯に浸かれば落ち着くかもしれない。
スイはそう考え、風呂の準備をした。
この旧トンネルの隠れ家にも風呂が付いており、普通に生活する分には充分な設備が揃っていた。
強いて言うなら電波が弱い、又は繋がらないのがネックだろうか。
スイは鏡の前で服を捲り、身体の傷を確認した。
スイ「うわ……」
自分でも引くくらい大量にミミズ腫れがあった。
しかし、事故で切った腕は血が止まっていた。
スイ「これは大丈夫そうだな…。」
スイは風呂の準備を終え、みつれの部屋に向かう。
スイ「ポチぃ~準備出来たよ。一緒にはい……」
スイがドアを開けるとみつれは全裸で立っていた。
みつ「ねぇ、スイ。わたし…胸が痛いの…。怪我してないのになぜか痛いの…」
みつれは自分の胸に手をあて、スイに痛みを訴える。
みつ「なんか…穴が空いたみたいに…痛い。」
みつれは立ったまま俯いた。
スイはみつれに歩み寄り、そっと抱き締めた。
スイ「大丈夫。私が一緒にいる。私がポチの痛みを治してあげる。」
みつ「・・・ほんと?」
スイ「うん。約束する。」
みつれは抱き締めてくれるスイに腕をまわす。
みつ「・・・ありがとう。スイ。」
スイ「・・・愛してるよ。」
2人は静かに抱きしめあった。
お互いの心臓の鼓動を感じあう。
その時間はお互いがお互いを癒し、幸せを実感する。
スイ「お風呂…入ろっか。」
みつ「うん!一緒に入る。」
2人は手を繋ぎ、風呂場へ向かった。
みつ「スイ…傷だらけだね…痛くない?」
みつれは椅子に座るスイの裸体を見て心配した。
スイ「大丈夫だよこれくらい…いつぅ!!」
みつれはスイの背中にシャワーをかけたら、スイは傷がしみて思わず声が出た。
みつ「ほら。絶対痛いでしょ…。」
スイ「だ、大丈夫だって…。心配しないで…くぅ…ッ!?」
再びシャワーをかけられるスイ。
みつ「湯船に浸かるのはやめよう?絶対痛いよ。」
無慈悲にスイにシャワーをかけるみつれ。
あまりの激痛に自ら口を塞ぐスイ。
みつれはシャワーを止めた。
みつ「スイ…強がらないで。わたしにだけは…弱いスイもみせて…。スイの全てをみせて…」
みつれはスイの背中にそっと手を置いた。
スイ「ポチ……。」
スイは嬉しかった。
みつれは自分の全てを受け入れてくれるんだと。
するとみつれはスイの背中をバチンと叩いた。
スイ「ひぐっ!?わ、わかったから!痛いから!!めっちゃ痛いから!!」
スイはみつれに聞かせたことのない情けない声で涙目で痛みを訴えた。
みつれはその姿をみて満足そうな表情をうかべた。
みつ「スイがわたしの全てを受け入れてくれるように、わたしもスイの全てを受け入れたいの。」
スイ「ポチ…。」
みつ「スイがわたしの痛いを治してくれるように、わたしもスイの痛いを治したい。…だから痛い時は痛いって言ってほしい。悲しい時は悲しいって言ってほしい。」
スイ「・・・ありがとう。ポチ。」
スイは椅子から立ち上がりみつれを抱き締めた。
スイ「ほんとはね。凄く怖かったんだ。上司に呼び出されて…すごく…怖かった……」
みつ「うん。頑張ったね。スイ。」
みつれはスイの頭を撫でた。
スイ「うっ…うっ……それに…ホテルに戻ったら…もしかしたらポチが居なくなってるんじゃないかって……すごく怖かった。」
泣きじゃくるスイ。
みつ「わたしは何処にも行かないよ。スイのそばにいる。」
スイ「うん。…ありがと……ポチ………うっ…うっ……」
こんな弱りきったスイをみたのは初めてだったが、みつれは嬉しかった。
みつれの胸の中で子どものように泣きじゃくるスイ。
みつれはスイが落ち着くまで頭を撫で続けた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる