『ブラックボックス』

うどん

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〜第3章〜

67.『痛み』

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逃亡に成功したスイとみつれは旧トンネルの隠れ家に戻っていた。

スイ「なんとか帰ってこれたね。」

みつ「・・・そうだね。」
戻ってきてもみつれの表情は晴れなかった。

あんな逃走劇があった後だ。無理もない。
今のみつれには刺激が強過ぎた。


スイは元気づけようと明るく振る舞う。

スイ「ポチ!一緒にお風呂入ろうよ!」

みつ「うん。はいる。」

スイ「じゃあ準備してくるよ。部屋で待ってて」

一度湯に浸かれば落ち着くかもしれない。
スイはそう考え、風呂の準備をした。

この旧トンネルの隠れ家にも風呂が付いており、普通に生活する分には充分な設備が揃っていた。
強いて言うなら電波が弱い、又は繋がらないのがネックだろうか。

スイは鏡の前で服を捲り、身体の傷を確認した。

スイ「うわ……」
自分でも引くくらい大量にミミズ腫れがあった。
しかし、事故で切った腕は血が止まっていた。
スイ「これは大丈夫そうだな…。」

スイは風呂の準備を終え、みつれの部屋に向かう。

スイ「ポチぃ~準備出来たよ。一緒にはい……」
スイがドアを開けるとみつれは全裸で立っていた。

みつ「ねぇ、スイ。わたし…胸が痛いの…。怪我してないのになぜか痛いの…」
みつれは自分の胸に手をあて、スイに痛みを訴える。

みつ「なんか…穴が空いたみたいに…痛い。」
みつれは立ったまま俯いた。

スイはみつれに歩み寄り、そっと抱き締めた。

スイ「大丈夫。私が一緒にいる。私がポチの痛みを治してあげる。」

みつ「・・・ほんと?」

スイ「うん。約束する。」

みつれは抱き締めてくれるスイに腕をまわす。
みつ「・・・ありがとう。スイ。」

スイ「・・・愛してるよ。」

2人は静かに抱きしめあった。

お互いの心臓の鼓動を感じあう。
その時間はお互いがお互いを癒し、幸せを実感する。


スイ「お風呂…入ろっか。」

みつ「うん!一緒に入る。」

2人は手を繋ぎ、風呂場へ向かった。

みつ「スイ…傷だらけだね…痛くない?」
みつれは椅子に座るスイの裸体を見て心配した。

スイ「大丈夫だよこれくらい…いつぅ!!」
みつれはスイの背中にシャワーをかけたら、スイは傷がしみて思わず声が出た。

みつ「ほら。絶対痛いでしょ…。」

スイ「だ、大丈夫だって…。心配しないで…くぅ…ッ!?」
再びシャワーをかけられるスイ。

みつ「湯船に浸かるのはやめよう?絶対痛いよ。」
無慈悲にスイにシャワーをかけるみつれ。

あまりの激痛に自ら口を塞ぐスイ。

みつれはシャワーを止めた。

みつ「スイ…強がらないで。わたしにだけは…弱いスイもみせて…。スイの全てをみせて…」
みつれはスイの背中にそっと手を置いた。

スイ「ポチ……。」
スイは嬉しかった。
みつれは自分の全てを受け入れてくれるんだと。

するとみつれはスイの背中をバチンと叩いた。


スイ「ひぐっ!?わ、わかったから!痛いから!!めっちゃ痛いから!!」
スイはみつれに聞かせたことのない情けない声で涙目で痛みを訴えた。

みつれはその姿をみて満足そうな表情をうかべた。

みつ「スイがわたしの全てを受け入れてくれるように、わたしもスイの全てを受け入れたいの。」

スイ「ポチ…。」

みつ「スイがわたしの痛いを治してくれるように、わたしもスイの痛いを治したい。…だから痛い時は痛いって言ってほしい。悲しい時は悲しいって言ってほしい。」

スイ「・・・ありがとう。ポチ。」
スイは椅子から立ち上がりみつれを抱き締めた。

スイ「ほんとはね。凄く怖かったんだ。上司に呼び出されて…すごく…怖かった……」

みつ「うん。頑張ったね。スイ。」
みつれはスイの頭を撫でた。

スイ「うっ…うっ……それに…ホテルに戻ったら…もしかしたらポチが居なくなってるんじゃないかって……すごく怖かった。」

泣きじゃくるスイ。

みつ「わたしは何処にも行かないよ。スイのそばにいる。」

スイ「うん。…ありがと……ポチ………うっ…うっ……」

こんな弱りきったスイをみたのは初めてだったが、みつれは嬉しかった。
みつれの胸の中で子どものように泣きじゃくるスイ。

みつれはスイが落ち着くまで頭を撫で続けた。

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