『ブラックボックス』

うどん

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〜第4章〜

91.『後輩の気持ち』

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みつれのおかえり会は無事(?)終了し、
4人はふたつに別れて解散した。


ハナに引っ張られながら歩いて行くしおん。

しお「ちょっと!ハナさん!どこ行くんですか!?」

しばらく歩くとハナは立ち止まった。



ハナ「・・・しおん君。ちょっとつきおうてや。」
ハナはしおんに背を向けたまましおんに言った。

しお「それは構わないですけど…どうしたんです?」
しおんはハナの様子が少し変なのに気づく。


ハナ「・・・少しお腹空かへん?しおん君あんま食べてへんかったやろ?」
ハナは笑顔で振り向いた。

しお「え、えぇ、まぁ。」

ハナ「じゃあ行こうや!」
ハナはしおんを連れてこじんまりとした焼き肉屋に入って行った。


ハナ「遠慮はいらへんよ!好きなだけ食べや!」
ハナは肉を焼いていく。

しお「あ、ありがとうございます。」

ハナ「さっきはなんやえらい気ぃ使ってたなぁしおん君。あぁいうのは苦手なん?」

しお「苦手…ていうか…」

ハナ「まぁ酒飲まれへんからおもろないよなぁ。オマケに酔っ払いには絡まれるし!」
ハナは明るく笑った。

ハナ「けどリン先輩もよかったなぁ…両想いやんかぁ。」

しお「・・・」
しおんは少し神妙な顔をした。


ハナ「どないしたん?」

しお「多分リンさんはまだしこりが残ってると思います。みつれさんも。」

ハナ「しこり?」

しお「テロリストだったスイのことです。」
みつれが最終的には愛してしまった女 スイ。
しおんはそれが気掛かりだった。


ハナ「・・・話には聞ぃてんで。リン先輩を銃で撃ち抜いたヤツやろ?」

しお「そうです。ただみつれさんは本当にスイのことを乗り越えれているのか……」



ハナ「・・・別にええんちゃうん?」

しお「え?」

しおんは思ってもいなかった返答に驚いた。

ハナ「・・・ウチ的にはそのほうが……」

しお「どういう意味ですか?」
しおんはハナに質問した。

ハナ「ウチな…リン先輩のこと好きやねん。」

しお「・・・そういうことだったんですね。」
しおんはハナの心情を察した。

スイの存在が2人を結びつかせないままでいることが、ハナにとってはそのほうがいいとしおんは感じた。


ハナ「もちろん、リン先輩はみつれさんが大好きやから叶わへん恋やのはわかってる。ほんまつらいわァ…」

ハナはため息をつきながら焼けていく肉をじっと見つめていた。

しおんは返す言葉がみつからなかった。

少し困ったしおんに気付いてハナは明るく振る舞う。

ハナ「ごめんごめん!辛気臭くなってしもたな!ほれ、焼けたで!食べてやァ!」

ハナは焼けた肉をしおんの皿に移した。

しお「ありがとうございます。いただきます。」
しおんは焼き肉を口にいれた。

しお「んッ!美味しい!」

ハナ「そうやろ!?ここの焼き肉屋めっちゃ美味しいねん!…ちょっと高いけどな。」
ハナは最後だけコソッと言った。

ハナ「どうせ向こうも二次会でよろしくやってるやろし、こっちも二次会で楽しもうや!ちょっとお酒飲んでもいい?」

しお「いいですよ。僕に構わず飲んでください。いつもお世話になってるし。」

ハナ「ほんまええ子やなぁしおん君!よし!おっちゃん!!生ビールちょーだい!!!」
ハナは元気よく注文した。



その後、2人は楽しく飲み食いした。




ハナ「せやからなぁ…リン先輩はぁ…ダメやねん…ウチが守ったらんとぉ……」
 
ハナは酔っ払っていた。

しお「ハナさん強いですもんね。」

しおんは相づちをうつ。
しかし何故か嫌な気分では無かった。


ハナ「ウチなんか強ないよォ…弱い人間や。」

普段は明るくてポジティブなハナだが、酔っぱらうと少しネガティブになるようだ。



しお「ハナさんには稽古つけてもらって本当に助かってます。ありがとうございます。」

ハナ「なんや改まってぇ~ウチなんかがチカラになれてこっちこそありがとうやわァ。」
ハナはケラケラと笑う。

ハナ「けどしおん君、結構逞しくなったなァ。1ヶ月前とはえらい違いや。」

しお「そ、そうですか?ありがとうございます///」

ハナ「けどリン先輩から頼まれた時は驚いたでぇ。身体を鍛えたいから稽古つけてぇゆうてひょろひょろの男の子連れてぇ。」

ハナはニカッとしおんに笑顔をむけた。

ハナ「それがこう逞しくなってくれたのは素直に嬉しいわァ。」

しお「色々ありましたからね…このままじゃダメだと思ったんです。」

ハナ「けど、危ないことはアカンで?危ないことはお姉さんたちに任せなさい!ゲホゲホ!」
ハナは胸を叩きむせかえる。

しお「・・・ありがとうございます。」


その後も2人は満足いくまで飲み食いした。


ハナ「ふぇえ…の、飲み過ぎた……」
勘定を済ませ、ふらふらと店を出るハナ。

しお「ご馳走様でしたハナさん。すみません奢ってもらって…」

ハナ「大丈夫やでェ~また行こなぁ!おっとっと…」
よろけるハナをしおんは支えた。

しお「大丈夫ですか!?ハナさん飲み過ぎですよ。」

ハナ「あかんな……大の大人が…まっすぐ家帰られへんわ……」

しお「しっかりしてください。家まで送りますよ。」

ハナ「ほんまええ子やなァ……あッ……終電間に合わんやん……」
ハナはスマホで時間を確認した。

ハナ「やっぱウチあかんわぁ……しおん君困らせてもうてるし……どうしよ……」

しお「僕は構わないですよ。どうせみつれさんは今日帰って来ないだろうし。タクシー呼びますか?」

ハナ「いや…ウチタクシー嫌いやねん…なんか運転荒いやん?酔ってまうねん……まぁもう酒には酔ってるけどな!アハハッ」
ハナはケラケラ笑った。

しお「じゃあどこかで休みましょう。」

ハナ「お、誘ってんのかいな…やるなぁ…」
ハナはニヤニヤとしおんを見つめる。


しお「そ、そういう意味じゃないですよ!何言ってんですか!」

ハナ「・・・じゃあお互いなにもシないって条件で……行く?」
ハナはピンクのネオンが光る建物を指さした。

しお「・・・仕方ないですね…。行きましょう。」

2人は建物へと入って行った。。。
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