『ブラックボックス』

うどん

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〜最終章〜

176.『闇医者×闇医者』

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リンの部下からの電話。
しかし様子がおかしく、リンは嫌な予感がしたがそれは見事的中してしまった。


部下が最後に言い残した言葉は『便利屋の事務所にしおんと2人で来い。』だった。




みつ「どうしたリン?」


様子がおかしいリンにみつれは声をかけた。


リン「・・・事務所にしおん君と2人で来いって……」


リンは少し震えた声で言った。


しお「ハナさんから!?」


リン「いや…私の部下からだったけど……多分すぐ側にハナちゃんがいた。それで銃で………」


みつれ達はリンが何が言いたいか分かってしまった。


ハナがリンの部下を射殺した。
けど誰もそのことを口にしなかった。


みつ「・・・リンとしおんだけを呼んだのか?」


リン「うん。……私、行くよ。ハナちゃんが待ってる。」


罠だと分かっていても行かないわけにはいかなかった。


しお「僕も行くよ。」


みつ「私とよつばさんは近くで備えよう。カエデ、お前はここで防犯カメラをみて私達を援護してくれ。…しおん、セッティングしてやってくれ。」


しおんはこくりと頷き、タブレットで事務所近辺の防犯カメラのハッキングを始めた。


カエ「えっ…わ、私……」

責任重大な仕事を任されたカエデは少ししり込みする。


みつ「お前なら大丈夫だカエデ。お前なら出来る。」

みつれはカエデを勇気づける。


リン「しおん君、コレ渡しておくよ。」


リンはしおんに拳銃を渡そうとしたがしおんは断った。


しお「僕は銃を扱えません。僕は大丈夫です。」


リン「・・・分かった。」


リンは渡そうとした拳銃をしまい、自分の準備を進めた。



ハッキング作業してるしおんによつばは声を掛けた。

よつ「安心しろ。危なくなったらワタシが助けに行く。」

よつばはしおんの肩をポンと叩いた。


しお「ふふっ、頼りにしてるよ、よつばさん。」


しおんとよつばは拳をコツンと合わせた。


みつ「リン……大丈夫か?」


リン「うん、大丈夫……ではないけど、行くしかない。」


みつ「・・・そうだな。……なぁ、なんでハナさんはお前としおんだけを指定したと思う?」


リン「・・・多分シロサキの指示だろうね。しおん君は多分ユウゼンの件だよ。」


リンはあらかた予想はついていた。
それはみつれも同じだった。

みつ「やはりお前もそう思うか…。気をつけろよ。私とよつばさんもすぐに突撃出来るようにするからな。」


リン「ありがと。」


リンとみつれは握手を交わした。



しお「準備出来たよ。カエデちゃん、後は分かるよね。」


しおんはカエデにタブレットを渡した。


カエ「はい。日頃からしおんさんに教えてもらってましたから大丈夫です…。」


しお「頼んだよっ。」


しおんは笑顔でカエデの頭に手を置いた。


みつ「よし、行こう。」



みつれ、しおん、リン、よつばは指定された場所、便利屋『カモミール』の事務所へと向かう。


カエ「・・・みんな、気を付けて。」




一方その頃、
みつれ達にクスリの調合を頼まれていた闇医者のカオリはある場所へと向かっていた。

そこは街から離れた公民館のような廃墟だった。



カオ「・・・」


カオリは廃墟へと入っていく。


どんどんと廃墟の奥へと進んでいく。
すると向かう先にある人物がいた。



カオ「・・・やっぱりいましたね……。エト。」


廃墟の奥には組織『BB』の闇医者、エトがいた。


エト「・・・誰かと思えば懐かしいツラだな。」


カオ「アナタならここにいると思ってましたよ。変わらないですね、アナタは。」


カオリは微笑をうかべた。
それとはうらはらにエトはカオリを睨んでいる。


エト「私になんの用だ?医者崩れが。」


カオ「それはアナタも同じでしょう。今はテロ組織の闇医者ですか。大したものですね。ふふ。」


エト「お前だってヤクザ専門の闇医者やってんだろが。…お前のことは調べた。随分私達の邪魔をしてくれてるみたいだな。」


エトは一連の出来事にカオリが絡んでいると知っていた。


カオリはコツコツと足音が響かせながらエトに近づく。


エト「・・・で、わざわざ私に会いに来たくらいだ、いったい何の用だ?」



カオ「・・・単刀直入にいいます。アナタがつくったクスリ『オビディエンス』を私に渡してください。」


エト「・・・なぜお前がソレを知っている?」


カオ「アナタがクスリを使って人を『犬』にしてるのは知ってます。……そもそも『オビディエンス』は裏社会で一部で出回ってたことくらいは知ってます。私も裏社会の人間なのでね。」



カオリはクスッと笑いながらそのまま話を続けた。


カオ「そしてその『オビディエンス』を使って拉致した刑事を幹部の忠実な『犬』にした……というところまでは知ってます。まったく…たいしたマッドサイエンティストですね。」


エトの顔が少し歪む。


エト「お前には言われたくないな。残念だがお前の知ってることは少し間違えている。」


カオ「ほぉ、では教えてもらえますか?」


エト「ふっ、まぁいいだろう。確かに『オビディエンス』は『犬』を製造するために調合したものだ。裏社会に一時期、試験的に流通させたのも事実だ。だがシロサキの『犬』に投与したモノは違う。」


カオ「・・・なるほど。つまり新作だと?」


エト「そうだ。『オビディエンス』は旧作。新作は『オビディエンス』より遥かに強い効力を持ったクスリだ。まだ完成とまではいってないがな。」


エトは少々自慢げにカオリに話す。
まるで自分の方が優秀だとアピールするかのように。


エトはそのまま話を続けた。


エト「…私の推測からすると、お前らは『オビディエンス』で刑事を元に戻すつもりだったんだろうが、生憎ソレでは不可能だマヌケが!」


カオ「・・・相変わらず口が悪いですね。……なるほど、少し困りましたねぇ。」


カオリは再びエトに近づく。

エトもまたカオリに向かって歩く。



エト「昔のよしみだ、お前とお前のペットは殺さないよう私からリカ様にかけあってやる。これ以上リカ様の邪魔をするなら容赦はしない。」


カオ「やはりあの女でしたか、アナタが入れ込んでるのは。ふぅ~ん、こっちではリカっていうんですね。」

カオリはニヤケ顔で言った。


カオ「あの女に惚れ込んで、いつかは自分のモノにしたくて闇医者としてそばに居るって感じですか。」


エト「・・・待て。お前、リカ様を知ってるような口振りだな。何故知ってる?『こっちでは』とはどういうことだ?」


カオリはリカを知っているようだった。



カオ「おや、思わず口が滑っちゃいましたね。守秘義務があるのでこれ以上は御答え出来ませんねぇ。」

エトの表情が少し歪んだ。

エト「ふざけんな殺すぞ。答えろッ!!」

エトは怒声をあげるが、カオリは薄ら笑いを浮かべている。


カオ「おやおや、嫉妬ですか。アナタの知らないリカを私だけが知ってて羨ましいですかァ?」


エトはギリギリと歯を噛み締める。


エト「お前は昔からそうだった!このクソ野郎が!!ぶっ殺す!!」


エトはカオリに近づき、カオリの白衣を掴もうと手を伸ばした。


エト「ッ!?……てめぇ………ッ!」


カオリの白衣を掴んだエトの手から血が滲み出ていた。

カオ「こう見えて日頃ヤクザを相手に仕事してますからねぇ。身を守る術は心得てます。まさか私が丸腰でノコノコと来たと思ってたんですか?」

カオリは白衣の内側に自身に刺さらないよう細工された針を仕込んでいた。


エト「く、クソが……」


エトはその場で膝をつく。


カオ「頭に血がのぼりやすいのが昔からアナタの悪い癖です。アナタが昔と変わらない馬鹿で助かりました。」


カオリは薄ら笑いしながらエトに言った。


エト「ぶっ殺す……ぶっ殺す!」


しかしエトは身体が上手く動かなかった。


カオ「安心してください。麻酔薬ですよ。人間を無力化するにはこれが1番効果的ですからね。」


エトは意識はあるものの、麻酔薬のせいで身体の感覚が無くなっていた。


カオリはトンッとエトを床に倒して馬乗りになり、メスを手に取った。


カオ「選びなさい。クスリを渡すか、今ここで意識を保ったまま解剖されるか。」


エト「・・・クスリを使ったところで刑事は元に戻らねぇよ。お前なら分かるだろ!」


カオリはニッと笑った。


カオ「分かってますよ、そんなことは。」


エト「だったら!何故危険を犯してまで!?」


カオリは立ち上がり、エトを見下ろす。



カオリ「・・・愛する娘の為ですよ。」
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