182 / 197
〜最終章〜
176.『闇医者×闇医者』
しおりを挟むリンの部下からの電話。
しかし様子がおかしく、リンは嫌な予感がしたがそれは見事的中してしまった。
部下が最後に言い残した言葉は『便利屋の事務所にしおんと2人で来い。』だった。
みつ「どうしたリン?」
様子がおかしいリンにみつれは声をかけた。
リン「・・・事務所にしおん君と2人で来いって……」
リンは少し震えた声で言った。
しお「ハナさんから!?」
リン「いや…私の部下からだったけど……多分すぐ側にハナちゃんがいた。それで銃で………」
みつれ達はリンが何が言いたいか分かってしまった。
ハナがリンの部下を射殺した。
けど誰もそのことを口にしなかった。
みつ「・・・リンとしおんだけを呼んだのか?」
リン「うん。……私、行くよ。ハナちゃんが待ってる。」
罠だと分かっていても行かないわけにはいかなかった。
しお「僕も行くよ。」
みつ「私とよつばさんは近くで備えよう。カエデ、お前はここで防犯カメラをみて私達を援護してくれ。…しおん、セッティングしてやってくれ。」
しおんはこくりと頷き、タブレットで事務所近辺の防犯カメラのハッキングを始めた。
カエ「えっ…わ、私……」
責任重大な仕事を任されたカエデは少ししり込みする。
みつ「お前なら大丈夫だカエデ。お前なら出来る。」
みつれはカエデを勇気づける。
リン「しおん君、コレ渡しておくよ。」
リンはしおんに拳銃を渡そうとしたがしおんは断った。
しお「僕は銃を扱えません。僕は大丈夫です。」
リン「・・・分かった。」
リンは渡そうとした拳銃をしまい、自分の準備を進めた。
ハッキング作業してるしおんによつばは声を掛けた。
よつ「安心しろ。危なくなったらワタシが助けに行く。」
よつばはしおんの肩をポンと叩いた。
しお「ふふっ、頼りにしてるよ、よつばさん。」
しおんとよつばは拳をコツンと合わせた。
みつ「リン……大丈夫か?」
リン「うん、大丈夫……ではないけど、行くしかない。」
みつ「・・・そうだな。……なぁ、なんでハナさんはお前としおんだけを指定したと思う?」
リン「・・・多分シロサキの指示だろうね。しおん君は多分ユウゼンの件だよ。」
リンはあらかた予想はついていた。
それはみつれも同じだった。
みつ「やはりお前もそう思うか…。気をつけろよ。私とよつばさんもすぐに突撃出来るようにするからな。」
リン「ありがと。」
リンとみつれは握手を交わした。
しお「準備出来たよ。カエデちゃん、後は分かるよね。」
しおんはカエデにタブレットを渡した。
カエ「はい。日頃からしおんさんに教えてもらってましたから大丈夫です…。」
しお「頼んだよっ。」
しおんは笑顔でカエデの頭に手を置いた。
みつ「よし、行こう。」
みつれ、しおん、リン、よつばは指定された場所、便利屋『カモミール』の事務所へと向かう。
カエ「・・・みんな、気を付けて。」
一方その頃、
みつれ達にクスリの調合を頼まれていた闇医者のカオリはある場所へと向かっていた。
そこは街から離れた公民館のような廃墟だった。
カオ「・・・」
カオリは廃墟へと入っていく。
どんどんと廃墟の奥へと進んでいく。
すると向かう先にある人物がいた。
カオ「・・・やっぱりいましたね……。エト。」
廃墟の奥には組織『BB』の闇医者、エトがいた。
エト「・・・誰かと思えば懐かしいツラだな。」
カオ「アナタならここにいると思ってましたよ。変わらないですね、アナタは。」
カオリは微笑をうかべた。
それとはうらはらにエトはカオリを睨んでいる。
エト「私になんの用だ?医者崩れが。」
カオ「それはアナタも同じでしょう。今はテロ組織の闇医者ですか。大したものですね。ふふ。」
エト「お前だってヤクザ専門の闇医者やってんだろが。…お前のことは調べた。随分私達の邪魔をしてくれてるみたいだな。」
エトは一連の出来事にカオリが絡んでいると知っていた。
カオリはコツコツと足音が響かせながらエトに近づく。
エト「・・・で、わざわざ私に会いに来たくらいだ、いったい何の用だ?」
カオ「・・・単刀直入にいいます。アナタがつくったクスリ『オビディエンス』を私に渡してください。」
エト「・・・なぜお前がソレを知っている?」
カオ「アナタがクスリを使って人を『犬』にしてるのは知ってます。……そもそも『オビディエンス』は裏社会で一部で出回ってたことくらいは知ってます。私も裏社会の人間なのでね。」
カオリはクスッと笑いながらそのまま話を続けた。
カオ「そしてその『オビディエンス』を使って拉致した刑事を幹部の忠実な『犬』にした……というところまでは知ってます。まったく…たいしたマッドサイエンティストですね。」
エトの顔が少し歪む。
エト「お前には言われたくないな。残念だがお前の知ってることは少し間違えている。」
カオ「ほぉ、では教えてもらえますか?」
エト「ふっ、まぁいいだろう。確かに『オビディエンス』は『犬』を製造するために調合したものだ。裏社会に一時期、試験的に流通させたのも事実だ。だがシロサキの『犬』に投与したモノは違う。」
カオ「・・・なるほど。つまり新作だと?」
エト「そうだ。『オビディエンス』は旧作。新作は『オビディエンス』より遥かに強い効力を持ったクスリだ。まだ完成とまではいってないがな。」
エトは少々自慢げにカオリに話す。
まるで自分の方が優秀だとアピールするかのように。
エトはそのまま話を続けた。
エト「…私の推測からすると、お前らは『オビディエンス』で刑事を元に戻すつもりだったんだろうが、生憎ソレでは不可能だマヌケが!」
カオ「・・・相変わらず口が悪いですね。……なるほど、少し困りましたねぇ。」
カオリは再びエトに近づく。
エトもまたカオリに向かって歩く。
エト「昔のよしみだ、お前とお前のペットは殺さないよう私からリカ様にかけあってやる。これ以上リカ様の邪魔をするなら容赦はしない。」
カオ「やはりあの女でしたか、アナタが入れ込んでるのは。ふぅ~ん、こっちではリカっていうんですね。」
カオリはニヤケ顔で言った。
カオ「あの女に惚れ込んで、いつかは自分のモノにしたくて闇医者としてそばに居るって感じですか。」
エト「・・・待て。お前、リカ様を知ってるような口振りだな。何故知ってる?『こっちでは』とはどういうことだ?」
カオリはリカを知っているようだった。
カオ「おや、思わず口が滑っちゃいましたね。守秘義務があるのでこれ以上は御答え出来ませんねぇ。」
エトの表情が少し歪んだ。
エト「ふざけんな殺すぞ。答えろッ!!」
エトは怒声をあげるが、カオリは薄ら笑いを浮かべている。
カオ「おやおや、嫉妬ですか。アナタの知らないリカを私だけが知ってて羨ましいですかァ?」
エトはギリギリと歯を噛み締める。
エト「お前は昔からそうだった!このクソ野郎が!!ぶっ殺す!!」
エトはカオリに近づき、カオリの白衣を掴もうと手を伸ばした。
エト「ッ!?……てめぇ………ッ!」
カオリの白衣を掴んだエトの手から血が滲み出ていた。
カオ「こう見えて日頃ヤクザを相手に仕事してますからねぇ。身を守る術は心得てます。まさか私が丸腰でノコノコと来たと思ってたんですか?」
カオリは白衣の内側に自身に刺さらないよう細工された針を仕込んでいた。
エト「く、クソが……」
エトはその場で膝をつく。
カオ「頭に血がのぼりやすいのが昔からアナタの悪い癖です。アナタが昔と変わらない馬鹿で助かりました。」
カオリは薄ら笑いしながらエトに言った。
エト「ぶっ殺す……ぶっ殺す!」
しかしエトは身体が上手く動かなかった。
カオ「安心してください。麻酔薬ですよ。人間を無力化するにはこれが1番効果的ですからね。」
エトは意識はあるものの、麻酔薬のせいで身体の感覚が無くなっていた。
カオリはトンッとエトを床に倒して馬乗りになり、メスを手に取った。
カオ「選びなさい。クスリを渡すか、今ここで意識を保ったまま解剖されるか。」
エト「・・・クスリを使ったところで刑事は元に戻らねぇよ。お前なら分かるだろ!」
カオリはニッと笑った。
カオ「分かってますよ、そんなことは。」
エト「だったら!何故危険を犯してまで!?」
カオリは立ち上がり、エトを見下ろす。
カオリ「・・・愛する娘の為ですよ。」
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる