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第三章 ボラン島と月夜姫

掘って掘って掘り進め2

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「鉄ちゃんありがとう! 」
 掘削機のスピーカーからルナママの声が聞こえた。
「へへ、ちょろいちょろい」
「じゃー行きますよ。センサーの示す方向に掘り進みます。ピコピコ、ピコピコ! 」
「おー! 」
 鉄ちゃんはツルハシとスコップを肩に担ぐと同じく車のトランクから出てきた大きな道具箱を肩から下げた。
 掘削機は回転すると岩山を斜めに掘り始めた。細かくなった岩や土は、自動で伸びるベルトコンベアで外に運ばれる。

「すっげー全部自動だ! 」

 驚く鉄ちゃん、その横を1メートル2メートルと穴は長くなっていく。

「よし、行くぞー」
 私もつい大声を上げて穴に入ろうとした。
 と、頭に何やら衝撃が。
 ポン!
 なんだろ。
 頭に何かのったぞ。
 そして確認した、あれ、工事用のヘルメットだ。それも鉄ちゃんが被ってたやつだ。

「月夜ちゃん現場はヘルメット被らないと危ないよ、俺の貸してあげるね」
 鉄ちゃんが微笑んだ。

「でも、臭くない? 大丈夫? 」
 鉄ちゃんがすまなそうにそう言った。
「ちょー臭い! でも大丈夫! 」
「我慢してね」
「我慢する! 」
 私は笑顔でそう言った。

「あのーお二人さん」
 翁じいが声をかけてきた。
「なーに」
「申し上げにくい事ですが………」
「??? 」
「じいやは閉所恐怖症でして、生身で穴には入れません」
「えっ? そうなの、初めて聞いた」
「なので、見張りでここにいまーす! 」
 というと白いリムジンへと走って行った。

 変なの? いつも穴に落ちるとうひゃーとか言って喜ぶのに、ま、いいや。

「じゃあ鉄ちゃん二人で行こう! 」
「任せとけ! 」
 私と鉄ちゃんは二人で並んで穴へ入っていった。

 穴の中は結構快適だった。
 掘削機が空調を調整したり、照明を取り付けたりなんでもやってくれる。
 時折、ベルトコンベアからバランスを崩した土が落ちるが、それを咄嗟に鉄ちゃんがスコップでベルトコンベアに乗せ直す。

 それ以外は会えなかった時を埋めるようにいっぱいお話しをした。
 私の話はそれこそ夢のような話しばかりだったけど、鉄ちゃんから聞くクラスメイトの話しや、私のお友達の話しやら、穴を掘ってるのを忘れるくらい楽しかった。
 ご飯時になると掘削機を止めて坑道の外に出て、草原に敷物を敷いて三人でルナママの作ったご飯を食べた。

 鉄ちゃんは何を食べても美味しい美味しいと大声で言った。その度にルナママはピコピコ喜んだ。
 そして又二人で穴に入っていき、土を乗せ直したり、お話ししたり………

 パパとママも二人で研究してる時はこんなふうに楽しかったのかな? 



 ——掘削機はどんどん掘り進む。



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