女神のつくった世界の片隅で従魔とゆるゆる生きていきます

みやも

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第2章 夏

◆ねっちりもっちりポーショングミ誕生!

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私は今、裏手の雑木林――通称「裏山」で、秋口にぷっくりと赤く熟れる、甘い甘いイチジクのような実を収穫している。
……と言っても、まだ熟すには早すぎる、青くて小さくて、とてもじゃないけど美味しそうとは言えない未熟な実ばかりを。

まあ、そもそも「イチジク」って呼んでるけど、本当は異世界の何かであって、見た目が似てるってだけなんだけどね。でもそんなことは今はどうでもいい。

肝心なのは――なぜ熟す前に収穫しているのかってこと。

それは、未熟なイチジクからは「ペクチン」が採れるから!

ペクチンって言うのは、果物とか野菜に含まれる天然の“とろみ成分”で、ジャムやゼリーをぷるっと固めてくれる植物由来の素材なの。しかも、ゼラチンと違って温度管理がいらないから、保存も調理もずっと楽!

つまり、このペクチンがあれば――
モニュッと美味しい“グミもどき”が作れちゃう!
グミっていうか、正確には「パート・ド・フリュイ」。ねっちり美味しい果実の宝石のことだね。

未熟な実を割り、中の繊維質な果肉を取り出して漉し布に包み、精霊水の中で揉みしだく。とにかく、ひたすら揉む、揉む、揉む!

ペクチン液ができたら、いくつかに分けて保存しておく。
今回はこれを使って、チャレンジングなお店の新商品を作ろうと思っている。
それは……「ポーショングミ」。

薬師ギルドの規約があるからポーションそのままを販売することはできないけど、お菓子として加工すれば話は別。
バフ飯と同じく、もうそれは立派な料理の一つ。

私は前から思っていたの。
市場に出回っている“ポーション”は、高すぎる。そして、消費期限もやたらと短い!
その価格の背景(※1)は今なら理解できる。
でも、それでも納得しきれない思いはある。

なぜなら――

うちには、そんな高価なポーションを気軽に買えるような立場じゃない、“疾風ハンター”という大切なお客様たちがいるからだ。
彼らは、かつて私が勝手に使ったポーションにすら、きちんと代金を払おうとしたほど誠実で律儀な子たち。そんな子たちが、負担に感じず手に取れるものを作りたい。
ポーションじゃなくても、体を守れる手段を。

お菓子なら、きっと買える。

……これが、ある意味では危ない橋だということもわかってる。
一応、作る前に“薬律”で「食品」は対象外だってことも確認してるから違反ではないけど、私が今から作るグミもどきはきっと“バフ”を超えてくる。
それを薬師ギルドが知ったら……どうなるかなんて、私にも予測がつかない。
そもそも、私が作り上げるものはだいたい「食」と「薬」の境界線が曖昧だ。

だけど……それでも、私は作る。
大切な人達のことは自分の手が届く範囲だけでもちゃんと守りたいの。
本当はこの手で直接守れたらそれが一番いいんだろうけど、私にはシヴァさんやジェイさん達みたいな力はないから…。
この手が、直接誰かを守れないなら、せめて「作る力」で支えたい。

かつての私なら――
波風を立てるのを怖がって前に進めなかったと思う。
けど、ここで出会った人たちが、そんな私の心を変えてくれた。

今でも変わりなく友達でいてくれるアンジーさんやリアムさん、ずっとうちの常連さんでいてくれる疾風のみんな、おばあちゃんやケイトさん達、今もそれぞれの場所で戦い続けている転生組のみんな。それに、お調子者だけど頼れる騎士様たちに、オタ活仲間のお姫様たち――。ここで出会ったみんなが、私の“日常”を彩ってくれた大切な人たちなの。

だから、自分の力で誰かの役に立てるなら、困難があってもその道を選びたいと思えるようになった。

……まあ、万が一の時は「王妃様に相談できないかな?」なんて甘えもあったりして…。
――いやいや、だめだめ。それはちょっと都合が良すぎるでしょ。私はただの平民だし。

ともかく! 今は私にできることを、一つずつ。

目を閉じて、「調薬」「薬膳」「調理」スキルをフル稼働。
集中、集中――!

手順は簡単。
鍋に「上級回復薬(リンゴ味)」を入れて、砂糖と 剣陽花ブレイドサンフラワーの単花蜜(※2)、そしてペクチン溶液を加える。火を入れてしっかり沸かし、最後にレモン果汁を加えれば一気に固まり始めるから、ここからはスピード勝負!

すばやく混ぜて流し缶に注ぎ、常温で固める。
固まったら、小さく切り分けて――完成!

使用した剣陽花ブレイドサンフラワーの単花蜜は、ただの甘味料じゃない。
“気力・魔力・体力の回復補助効果”付き。だから、ポーションと一緒に摂ると回復速度がグンと上がるの。
それに、この蜂蜜って、とってもきれいなのよね。
赤橙色の蜜の中に、青や黄色、紫の粒子がまるでスノードームみたいに舞ってるの。
だから、出来上がったグミもどきも、まるで星屑をちりばめたみたいな素敵な見た目になると思うのよ。

作ってたらついうっかり興が乗ってしまい、手が止まらなくなって気付けば――

上級回復薬グミ(リンゴ味)
魔力回復薬グミ(ホットワイン風味)
温活薬( 千輪香せんりんか単花蜜)
火耐性グミ(火薬草エキス)
毒耐性グミ(粒立アロエジャム)
疲労回復グミ(梅シロップ)
浄化グミ( 白月ラナホワイトエキス)
虚弱改善グミ~安眠効果付き~( 蜜奏みつかなでシロップ)

と……色とりどりのグミもどきが、テーブルいっぱいに山となって並ぶ。
赤、青、黄色、オレンジ、白、緑、桃色……それは、まるで宝箱から溢れ出た宝石のようで「パート・ド・フリュイ」がなぜ“果実の宝石”と称されるのかがよくわかる光景だった。

鑑定もしてみたけれど、すべてのグミもどきにポーションの効果もきちんと反映されていた。
さすがに一粒では効果が薄いけれど、3~5粒もあれば十分。

そして私は、今までにないほど、静かに、でも確かに感じている。
――この手で生きていく。
この力で、誰かを守るために。
不安もあるけど、恐れだけで止まるつもりはない。


(※1)第二章夏◆換金と素材受け取り
(※2)第二章夏◆季節の箱庭:夏の蜂蜜づくり


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