7 / 12
出会い
07. Hard To Say Sorry / 不意打ち
しおりを挟む
師匠はこちらを見つめたまま、固まっている。
「……。」
「……師匠?」
一体どうしたのかと思い声をかけた途端、無言でドアを閉められた。
「……え?」
ん?
どういうことなのか良く分からないが──つまり師匠は、ここまで来てくれた。
迎えに来てくれたのかもしれない。
もしかしたら、私を探させてしまったのかもしれない。
とにかく追いかけなくてはと思い、立ち上がろうとすると、レオお兄様に腕を掴まれた。
「ジジ、ここは俺に任せろ」
レオお兄様はそう言ったが──何だか不自然に笑顔がキラキラと輝いている。
──あまり良い予感はしない。
と思いつつ、一体どうしようというのだろう──とかれの様子を伺っていると──何だか、レオお兄様の顔がゆっくりと近付いてきた──これは、もしかして口付けなんてしようとしている?!
な、何故?! 突然に?!
「な、レオおにい……!」
一気に恥ずかしくなり目をぎゅっと瞑ると──、チュッと、リップ音が聞こえた。
でもそれなのに、唇にも、どこにも何の感触もない。
「え……?」
「ははっ、困ってる。かわいいな」
こ、困っているというか──さっきから混乱しています。
頭にハテナマークを浮かべていると、再びゆっくりとかれの顔が近付いてきたかと思えば、また頬へリップ音だけ響かせて、離れていく。
「あいつは行っちまったよ。……さあ、俺と楽しもうぜ」
「え、え?」
た、楽しもうって──。
一体何が始まるの──もうこれは私、逃げたほうが──とぐるぐる頭を回していると、まるで心を読まれたかのように、逃すまいと指を絡められた。
れ、レオお兄様、さっきから、突然どうして──?
「あともうちょっとだから……」
な、何がですの──?!
「も、もう無理ですわ……!」
何とかかれから離れようと身を捩るが、むしろそれでレオお兄様の力が強まり、ぐいと力任せに抱き寄せられ──。
「い、嫌……」
「ッ貴様ら!!」
その瞬間、耳をつんざいたのは、バアンとドアが開いた音──ではなかった。
ドアだったものは、もはや床に散らばる木の破片と化している。
おそらくドアを破壊した張本人である師匠が、怒気で目を爛々と光らせて立っている。
えっ、というか師匠、帰られてしまったのではなかったのですか──?
「貴様らは非常に、汚らわし……非衛生的だ。よって魔法で煮沸消毒する」
そう言って師匠は懐から杖を取り出した。
ぎゃあ! ま、魔法で釜でも出して、煮られる?!
「……ははっ。やっぱり居た」
小さな囁きだったが、そばにいる私にはたしかに聞こえた。
師匠は私を残して帰ったわけではなかった──レオお兄様にはそれが分かっていたということ?
「クラレンス、悪かったって。返すよ」
そう言うと、体に絡みついていた腕が離れていった。
「……とっとと行くぞ」
師匠がそう言った、なのに──。
──こ、これは──な、何だろう──?
離れた途端、ほっと安心するかと思ったのに──この気持ちは──?
きっと、こんなに物理的に──いや、それよりも精神的に近しく接してくれる人なんて、今まで出会ったことがなかったからだと思う。
今まで私の居た世界では、不躾と言えるほどだ。
私ってば、あんまりうわべだけの付き合いしかしてこなかったからって、おかしくなっているのでは──?
さっき出会ったばかりだというのに、いざさよならというときにこの気持ちは、悲しい? それとも淋しい?
と要らないことをぐるぐる考えていたとき──突然、唇に湿った感触。
「……わりい。ちょっとかわいかった」
「……?!」
え?
今──もしかして今、わ、私の──!
「……僕の所有物をこれ以上汚すな」
師匠の、何だか冷え切った声音──。
しかしそれよりもファーストキスを奪われた衝撃のほうが大きい──。
「でもなあ、こいつ、どしゃぶりの雨ん中でお前を待ってたんだぜ? 怒るより一言詫びくらい要るんじゃねーの」
「……。」
わあ──レオお兄様が師匠に不利な話題に変えた──。
私は、たしかに待っているときは切なかったけど、今はもう忘れていたから別にいいのだけど。
「……フン。行くぞ、ジジ」
「はい、師匠」
師匠のあとを追いかける。
──と、その前に。
「レオお兄様、お世話になりました。……また、明日」
明日会えるか分からないが期待をこめてそう言うと、かれはニカッと笑ってくれた。
「おう、また明日!」
「……。」
「……師匠?」
一体どうしたのかと思い声をかけた途端、無言でドアを閉められた。
「……え?」
ん?
どういうことなのか良く分からないが──つまり師匠は、ここまで来てくれた。
迎えに来てくれたのかもしれない。
もしかしたら、私を探させてしまったのかもしれない。
とにかく追いかけなくてはと思い、立ち上がろうとすると、レオお兄様に腕を掴まれた。
「ジジ、ここは俺に任せろ」
レオお兄様はそう言ったが──何だか不自然に笑顔がキラキラと輝いている。
──あまり良い予感はしない。
と思いつつ、一体どうしようというのだろう──とかれの様子を伺っていると──何だか、レオお兄様の顔がゆっくりと近付いてきた──これは、もしかして口付けなんてしようとしている?!
な、何故?! 突然に?!
「な、レオおにい……!」
一気に恥ずかしくなり目をぎゅっと瞑ると──、チュッと、リップ音が聞こえた。
でもそれなのに、唇にも、どこにも何の感触もない。
「え……?」
「ははっ、困ってる。かわいいな」
こ、困っているというか──さっきから混乱しています。
頭にハテナマークを浮かべていると、再びゆっくりとかれの顔が近付いてきたかと思えば、また頬へリップ音だけ響かせて、離れていく。
「あいつは行っちまったよ。……さあ、俺と楽しもうぜ」
「え、え?」
た、楽しもうって──。
一体何が始まるの──もうこれは私、逃げたほうが──とぐるぐる頭を回していると、まるで心を読まれたかのように、逃すまいと指を絡められた。
れ、レオお兄様、さっきから、突然どうして──?
「あともうちょっとだから……」
な、何がですの──?!
「も、もう無理ですわ……!」
何とかかれから離れようと身を捩るが、むしろそれでレオお兄様の力が強まり、ぐいと力任せに抱き寄せられ──。
「い、嫌……」
「ッ貴様ら!!」
その瞬間、耳をつんざいたのは、バアンとドアが開いた音──ではなかった。
ドアだったものは、もはや床に散らばる木の破片と化している。
おそらくドアを破壊した張本人である師匠が、怒気で目を爛々と光らせて立っている。
えっ、というか師匠、帰られてしまったのではなかったのですか──?
「貴様らは非常に、汚らわし……非衛生的だ。よって魔法で煮沸消毒する」
そう言って師匠は懐から杖を取り出した。
ぎゃあ! ま、魔法で釜でも出して、煮られる?!
「……ははっ。やっぱり居た」
小さな囁きだったが、そばにいる私にはたしかに聞こえた。
師匠は私を残して帰ったわけではなかった──レオお兄様にはそれが分かっていたということ?
「クラレンス、悪かったって。返すよ」
そう言うと、体に絡みついていた腕が離れていった。
「……とっとと行くぞ」
師匠がそう言った、なのに──。
──こ、これは──な、何だろう──?
離れた途端、ほっと安心するかと思ったのに──この気持ちは──?
きっと、こんなに物理的に──いや、それよりも精神的に近しく接してくれる人なんて、今まで出会ったことがなかったからだと思う。
今まで私の居た世界では、不躾と言えるほどだ。
私ってば、あんまりうわべだけの付き合いしかしてこなかったからって、おかしくなっているのでは──?
さっき出会ったばかりだというのに、いざさよならというときにこの気持ちは、悲しい? それとも淋しい?
と要らないことをぐるぐる考えていたとき──突然、唇に湿った感触。
「……わりい。ちょっとかわいかった」
「……?!」
え?
今──もしかして今、わ、私の──!
「……僕の所有物をこれ以上汚すな」
師匠の、何だか冷え切った声音──。
しかしそれよりもファーストキスを奪われた衝撃のほうが大きい──。
「でもなあ、こいつ、どしゃぶりの雨ん中でお前を待ってたんだぜ? 怒るより一言詫びくらい要るんじゃねーの」
「……。」
わあ──レオお兄様が師匠に不利な話題に変えた──。
私は、たしかに待っているときは切なかったけど、今はもう忘れていたから別にいいのだけど。
「……フン。行くぞ、ジジ」
「はい、師匠」
師匠のあとを追いかける。
──と、その前に。
「レオお兄様、お世話になりました。……また、明日」
明日会えるか分からないが期待をこめてそう言うと、かれはニカッと笑ってくれた。
「おう、また明日!」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる