49 / 127
本編
47.料理上手なお嫁さん?
しおりを挟む
翌日から、僕は散歩ついでに、親子の家へご飯を作りに通うようになった。
酷く衰弱していたチョコチップは息子を思う気合もあってか、数日と経たないうちに驚異的な回復を遂げた。
体調が改善して魔力循環も正常に戻り、以前と同じく土魔法が使えるまで復活していた。
『地の精霊よ、我が魔力を以てこの土を壁にせよ。【土塊防壁】』
チョコチップはお得意の土魔法で、ボロボロになっていた家の壁をどんどんと補修していく。
「わぁー、すごいね土魔法! こんな使い方もあるんだ!?」
目の前で展開される土魔法に僕が感嘆の声を上げると、チョコチップは出来上がった壁を見て満足げに頷く。
「うんうん、これなら何とか親子二人で暮らしていけるだけの仕事には就けそうだな。良かった良かった……ラズベリーも本当にありがとうな。作ってくれる飯のおかげで、心身共にどんどん活力が漲ってくる。この通り元気いっぱいだ、この礼は必ずするからな!」
白い歯を覗かせ笑顔を見せるチョコチップは、数日前まで衰弱死してしまいそうだった姿など見る影もなく、痩せこけていた頬は張艶を取り戻して元気いっぱいといった様子だ。
「ああ、うん。いっぱい食べてくれるだけで僕は作り甲斐があって楽しいよ」
「ラズベリーの作る飯は本当に美味いからな、毎日ずっと食べていたいくらいだ。今日の飯は何にするんだ?」
「どうしようかな、何か食べたい物ある?」
「ラズベリーの作る飯なら何でも美味いけど、そうだな、じゃあ――」
僕とチョコミントがわいわいご飯について話していると、それを微笑ましく見ていたチョコチップが言う。
「家柄が合えばな。ラズベリーをチョコミントの嫁にもらいたいくらいなんだがな。そうしたら、毎日ラズベリーの作る飯が食べられるのにな」
「ぶっ! なっ、なっ、なっ、何言ってるんだよ、父さんっ!?」
チョコミントは吹き出し、変な事を言い出した父親にギャーギャーと騒ぎ出す。
そんな二人の姿を見て、僕は遠い目をして渇いた笑いを零す。
「あ、あははは、は……はぁ」
(いやいや、僕、男だし。女だったとしても、こんな不細工な白豚なんて誰も嫁になんてしたくないよ。憎くき謎の強制力のせいで、僕は相変わらず痩せられないし……ぐすん)
「ラズベリーさえ良ければと思ったりしたんだがな」
「僕、男だし。こんな凶悪顔の巨デブなんて、みんな嫌だよ……」
「なっ! そんな訳ないだろうっ!? ラズベリーは愛嬌があって、かっ、かっ、かっ、か、か、か……かわいいっ!!」
「そんなに無理してお世辞言わなくても大丈夫だよ?」
「無理してないっ! お世辞じゃないっ!!」
「ああ、うん。ありがとう」
「う、うぅ……」
チョコミントが余りに一生懸命に言ってくれるので、僕は幼いのになんて気配りのできる良い子なんだろうかと、感心して微笑ましくなってしまう。
それから、チョコミントは時々何か考え込んでいる素振りを見せていた。
「どうしたの? 何か悩み事?」
「俺、少しだけど土と風の魔法が使えるようになったんだ。ラズベリーの飯のおかげで、元気になって魔力も増した気がするし……だから何かできないかなって……」
「そうなんだね。それじゃあ、お父さんの手伝いとかもできるんじゃない? お父さんきっと喜ぶよ」
「そうなんだけど、それだけじゃダメなんだ。それだけじゃ、この生活から抜け出せない。ラズベリーにも本当は迷惑かけたくないんだ」
「僕の事は気にしなくていいよ、料理は趣味だし。沢山食べて貰えるのも嬉しいし、一緒に食べるのも楽しいから」
「そうか……」
「お父さんも地道に資金を貯めて土地を買い戻すって言ってたし、一緒に頑張ろうよ」
「そうだな……」
その日、チョコミントの表情は晴れず、ずっと何かを思い悩んでいた。
◆
「チョコミントがいないんだが、何処に行ったか知らないか?」
翌日、家に訪れた僕に血相を変えて飛び出して来たチョコチップが言った。
「え、チョコミントいないの? 僕、知らないよ……」
「今朝から何処にもいないんだ、何も言わずに何処かに行く子じゃないのに……何処に行ったんだろうな……」
チョコチップは心配そうにオロオロとして、考えあぐねている様子だった。
僕も心配になって、何処に行ったのだろうかと思考を巡らせる。
「昨日、チョコミントが魔法が使えるようになったから、何かできないかなって言っていたんだけど、何か関係あるのかな?」
「魔法? あの子が使えるのは土と風の魔法なんだが、何かって……まさか、まさかな、そんな筈ないよな……」
チョコチップの表情がどんどん強張り青褪めて暗くなっていく。
そして、貧民街の奥の方へと視線を向けて呟いた。
「まさか、魔鉱石なんかに手を出してないよな?」
「魔鉱石があるの?」
そんな危険な物が近くにあるのかと、僕は驚いて訊き返した。
チョコチップは躊躇いながらも、僕に説明して聞かせる。
「貧民街に接した『腐敗の森』の奥深くにある『毒沼』に巨大な魔鉱石がある」
酷く衰弱していたチョコチップは息子を思う気合もあってか、数日と経たないうちに驚異的な回復を遂げた。
体調が改善して魔力循環も正常に戻り、以前と同じく土魔法が使えるまで復活していた。
『地の精霊よ、我が魔力を以てこの土を壁にせよ。【土塊防壁】』
チョコチップはお得意の土魔法で、ボロボロになっていた家の壁をどんどんと補修していく。
「わぁー、すごいね土魔法! こんな使い方もあるんだ!?」
目の前で展開される土魔法に僕が感嘆の声を上げると、チョコチップは出来上がった壁を見て満足げに頷く。
「うんうん、これなら何とか親子二人で暮らしていけるだけの仕事には就けそうだな。良かった良かった……ラズベリーも本当にありがとうな。作ってくれる飯のおかげで、心身共にどんどん活力が漲ってくる。この通り元気いっぱいだ、この礼は必ずするからな!」
白い歯を覗かせ笑顔を見せるチョコチップは、数日前まで衰弱死してしまいそうだった姿など見る影もなく、痩せこけていた頬は張艶を取り戻して元気いっぱいといった様子だ。
「ああ、うん。いっぱい食べてくれるだけで僕は作り甲斐があって楽しいよ」
「ラズベリーの作る飯は本当に美味いからな、毎日ずっと食べていたいくらいだ。今日の飯は何にするんだ?」
「どうしようかな、何か食べたい物ある?」
「ラズベリーの作る飯なら何でも美味いけど、そうだな、じゃあ――」
僕とチョコミントがわいわいご飯について話していると、それを微笑ましく見ていたチョコチップが言う。
「家柄が合えばな。ラズベリーをチョコミントの嫁にもらいたいくらいなんだがな。そうしたら、毎日ラズベリーの作る飯が食べられるのにな」
「ぶっ! なっ、なっ、なっ、何言ってるんだよ、父さんっ!?」
チョコミントは吹き出し、変な事を言い出した父親にギャーギャーと騒ぎ出す。
そんな二人の姿を見て、僕は遠い目をして渇いた笑いを零す。
「あ、あははは、は……はぁ」
(いやいや、僕、男だし。女だったとしても、こんな不細工な白豚なんて誰も嫁になんてしたくないよ。憎くき謎の強制力のせいで、僕は相変わらず痩せられないし……ぐすん)
「ラズベリーさえ良ければと思ったりしたんだがな」
「僕、男だし。こんな凶悪顔の巨デブなんて、みんな嫌だよ……」
「なっ! そんな訳ないだろうっ!? ラズベリーは愛嬌があって、かっ、かっ、かっ、か、か、か……かわいいっ!!」
「そんなに無理してお世辞言わなくても大丈夫だよ?」
「無理してないっ! お世辞じゃないっ!!」
「ああ、うん。ありがとう」
「う、うぅ……」
チョコミントが余りに一生懸命に言ってくれるので、僕は幼いのになんて気配りのできる良い子なんだろうかと、感心して微笑ましくなってしまう。
それから、チョコミントは時々何か考え込んでいる素振りを見せていた。
「どうしたの? 何か悩み事?」
「俺、少しだけど土と風の魔法が使えるようになったんだ。ラズベリーの飯のおかげで、元気になって魔力も増した気がするし……だから何かできないかなって……」
「そうなんだね。それじゃあ、お父さんの手伝いとかもできるんじゃない? お父さんきっと喜ぶよ」
「そうなんだけど、それだけじゃダメなんだ。それだけじゃ、この生活から抜け出せない。ラズベリーにも本当は迷惑かけたくないんだ」
「僕の事は気にしなくていいよ、料理は趣味だし。沢山食べて貰えるのも嬉しいし、一緒に食べるのも楽しいから」
「そうか……」
「お父さんも地道に資金を貯めて土地を買い戻すって言ってたし、一緒に頑張ろうよ」
「そうだな……」
その日、チョコミントの表情は晴れず、ずっと何かを思い悩んでいた。
◆
「チョコミントがいないんだが、何処に行ったか知らないか?」
翌日、家に訪れた僕に血相を変えて飛び出して来たチョコチップが言った。
「え、チョコミントいないの? 僕、知らないよ……」
「今朝から何処にもいないんだ、何も言わずに何処かに行く子じゃないのに……何処に行ったんだろうな……」
チョコチップは心配そうにオロオロとして、考えあぐねている様子だった。
僕も心配になって、何処に行ったのだろうかと思考を巡らせる。
「昨日、チョコミントが魔法が使えるようになったから、何かできないかなって言っていたんだけど、何か関係あるのかな?」
「魔法? あの子が使えるのは土と風の魔法なんだが、何かって……まさか、まさかな、そんな筈ないよな……」
チョコチップの表情がどんどん強張り青褪めて暗くなっていく。
そして、貧民街の奥の方へと視線を向けて呟いた。
「まさか、魔鉱石なんかに手を出してないよな?」
「魔鉱石があるの?」
そんな危険な物が近くにあるのかと、僕は驚いて訊き返した。
チョコチップは躊躇いながらも、僕に説明して聞かせる。
「貧民街に接した『腐敗の森』の奥深くにある『毒沼』に巨大な魔鉱石がある」
30
あなたにおすすめの小説
オークとなった俺はスローライフを送りたい
モト
BL
転生したらオークでした。豚の顔とかマジないわ~とか思ったけど、力も強くてイージーモードじゃん。イージーイージー!ははは。俺、これからスローライフを満喫するよ!
そう思っていたら、住んでいる山が火事になりました。人間の子供を助けたら、一緒に暮らすことになりました。
子供、俺のこと、好きすぎるのやめろ。
前半ファンタジーっぽいですが、攻めの思考がヤバめです。オークが受けでも別に大丈夫という方のみお読みください。
不憫オークですが、前向きすぎるので不憫さは全くありません。
ムーンライトノベルズでも投稿しております。
王子様の耳はロバの耳 〜 留学先はblゲームの世界でした 〜
きっせつ
BL
南国の国モアナから同盟国であるレーヴ帝国のミューズ学園に留学してきたラニ。
極々平凡に留学ライフを楽しみ、2年目の春を迎えていた。
留学してきたレーヴ帝国は何故かblゲームの世界線っぽい。だが、特に持って生まれた前世の記憶を生かす事もなく、物語に関わる訳でもなく、モブとして2年目を迎えた筈が…、何故か頭にロバ耳が生えて!?
憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。
Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。
満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。
よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。
愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。
だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。
それなのに転生先にはまんまと彼が。
でも、どっち?
判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。
今世は幸せになりに来ました。
【完結】その少年は硝子の魔術士
鏑木 うりこ
BL
神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。
硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!
設定はふんわりしております。
少し痛々しい。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる