63 / 86
第十一章:常識という多様性(ほのぼの編)
第六十三話:鍋
しおりを挟む
~~ 和食店・個室 ~~
湯気を立てるてっちり鍋(フグ鍋)が卓上に置かれる。
私:
おー来た来た、美味しそうだねぇ。
男性社員:
うおー鍋だ。やっぱ冬はこれっすよ。
MtF:
はいはい、落ち着いて。
取り箸とおたまを使って、自分の小皿によそって頂くスタイルよ。
男性社員:
えー、直箸で良くないっすか?
鍋ってそういうもんでしょ。
(空気が一瞬止まる)
イタリア:
……いや、それは "汚い" だろ。
男性社員:
えっ。
イタリア:
皆で共有する料理に、自分の口をつけた箸を突っ込むのは
さすがにマナー違反じゃないか?
女性社員:
私も、正直ちょっと嫌かな。
間接キスは、さすがに……
男性社員:
え、そこまで気にするもの!?
家族鍋とか、男子校時代の同級生との飲みとか、ずっと直箸でしたけど……
私:
あー地域差、と性別かな。
韓国さん:
個人的には、そこまで強い忌避感はありません。
ただ最近の感染症流行の後は、自前の箸と取り箸を分けるのが主流になりましたね。
ムスリム:
私も共有物に直接口を付けた物を入れるのは、
あまり好ましく感じまセン。
男性社員:
うわ、俺が一番ズレてる感じ?
MtF:
ズレてるというより……
「昔は当たり前だった」ってだけね。
私:
今じゃ、回し飲みもしないしねぇ。
私が若い頃なんかは普通だったんだけど。
女性社員:
回し飲みも無理です……
イタリア:
日本の鍋文化は興味深いが、
親密さを前提にしすぎている気はするね。
男性社員:
鍋って、仲良くなるための料理じゃないんすか?
MtF:
だった、のよ。
時代は変わっていくのねぇ。
ムスリム:
距離感を保ったまま、同じ料理を楽しむ……難しい文化デス。
私:
まあ、今日は取り箸で行こうか。
楽しく食べるのが一番だし。
男性社員:
……了解っす。でも具材の投入順序とかは仕切らせてもらっていいっすか!
女性社員:
出た、鍋奉行。
いえ美味しく仕上げてくれるなら、歓迎ではあるんですが。
私:
鍋一つでここまで意見が割れるとはねぇ。
ほんと多様性って大変だ。どうしろと(´・ω・`)
・大皿料理
一つの料理を複数人で取り分けて食べる形式は、一見すると合理的で親密な食事スタイルだが、その受け止め方は文化によって大きく異なる。
日本では大皿料理(鍋も含む)は、親しい関係を前提とした食事様式として発達してきた。家族鍋、宴会料理などに見られるように、同じ皿を共有すること自体が連帯や親密さの証と捉えられてきた側面がある。
一方、欧米では共有料理であっても取り分け用の器具を使うことが基本的なマナーとされる。自分の口をつけた箸やフォークを再び共有の皿に入れる行為は、不衛生・無作法と受け取られやすい。
イスラム圏では、清浄性(ナジャーサ)への意識から「共有物に口をつけた物を戻す」こと自体に忌避感を持つ人は多い。
韓国は伝統的に一つのチゲ(鍋)をみんなのスプーンでつつく文化は非常に強い国だったが、作中にある通り近年の感染症流行を経て衛生観念が劇的に変化。現在の若者や都市部では、個別に取り分けるスタイルが主流になりつつあるようだ。
大皿料理は親密さを前提にする文化と、距離を保つことを礼儀とする文化の境界線に立つ食事形式である。誰かがズレているのではなく、前提としている「距離感」が違うだけなのだろう。
湯気を立てるてっちり鍋(フグ鍋)が卓上に置かれる。
私:
おー来た来た、美味しそうだねぇ。
男性社員:
うおー鍋だ。やっぱ冬はこれっすよ。
MtF:
はいはい、落ち着いて。
取り箸とおたまを使って、自分の小皿によそって頂くスタイルよ。
男性社員:
えー、直箸で良くないっすか?
鍋ってそういうもんでしょ。
(空気が一瞬止まる)
イタリア:
……いや、それは "汚い" だろ。
男性社員:
えっ。
イタリア:
皆で共有する料理に、自分の口をつけた箸を突っ込むのは
さすがにマナー違反じゃないか?
女性社員:
私も、正直ちょっと嫌かな。
間接キスは、さすがに……
男性社員:
え、そこまで気にするもの!?
家族鍋とか、男子校時代の同級生との飲みとか、ずっと直箸でしたけど……
私:
あー地域差、と性別かな。
韓国さん:
個人的には、そこまで強い忌避感はありません。
ただ最近の感染症流行の後は、自前の箸と取り箸を分けるのが主流になりましたね。
ムスリム:
私も共有物に直接口を付けた物を入れるのは、
あまり好ましく感じまセン。
男性社員:
うわ、俺が一番ズレてる感じ?
MtF:
ズレてるというより……
「昔は当たり前だった」ってだけね。
私:
今じゃ、回し飲みもしないしねぇ。
私が若い頃なんかは普通だったんだけど。
女性社員:
回し飲みも無理です……
イタリア:
日本の鍋文化は興味深いが、
親密さを前提にしすぎている気はするね。
男性社員:
鍋って、仲良くなるための料理じゃないんすか?
MtF:
だった、のよ。
時代は変わっていくのねぇ。
ムスリム:
距離感を保ったまま、同じ料理を楽しむ……難しい文化デス。
私:
まあ、今日は取り箸で行こうか。
楽しく食べるのが一番だし。
男性社員:
……了解っす。でも具材の投入順序とかは仕切らせてもらっていいっすか!
女性社員:
出た、鍋奉行。
いえ美味しく仕上げてくれるなら、歓迎ではあるんですが。
私:
鍋一つでここまで意見が割れるとはねぇ。
ほんと多様性って大変だ。どうしろと(´・ω・`)
・大皿料理
一つの料理を複数人で取り分けて食べる形式は、一見すると合理的で親密な食事スタイルだが、その受け止め方は文化によって大きく異なる。
日本では大皿料理(鍋も含む)は、親しい関係を前提とした食事様式として発達してきた。家族鍋、宴会料理などに見られるように、同じ皿を共有すること自体が連帯や親密さの証と捉えられてきた側面がある。
一方、欧米では共有料理であっても取り分け用の器具を使うことが基本的なマナーとされる。自分の口をつけた箸やフォークを再び共有の皿に入れる行為は、不衛生・無作法と受け取られやすい。
イスラム圏では、清浄性(ナジャーサ)への意識から「共有物に口をつけた物を戻す」こと自体に忌避感を持つ人は多い。
韓国は伝統的に一つのチゲ(鍋)をみんなのスプーンでつつく文化は非常に強い国だったが、作中にある通り近年の感染症流行を経て衛生観念が劇的に変化。現在の若者や都市部では、個別に取り分けるスタイルが主流になりつつあるようだ。
大皿料理は親密さを前提にする文化と、距離を保つことを礼儀とする文化の境界線に立つ食事形式である。誰かがズレているのではなく、前提としている「距離感」が違うだけなのだろう。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
俺の可愛い幼馴染
SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。
ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。
連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。
感想もご自由にどうぞ。
ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
10年ぶりに現れた正ヒロインが強すぎて、10年来のダメ系幼馴染型ヒロインが敗北しそうな件について。
神崎あら
青春
10年ぶりに再会した彼女はまさに正ヒロインと呼ぶにふさわしい容姿、性格、人望を手にしていた。
それに対して10年間一緒にいた幼馴染は、堕落し酒に溺れ、泰平の世話なしには生きられないペットのような生き物になっている。
そんな対照的な2人のヒロインが戦う(一方的にダメ幼馴染が社会的にボコられる)物語が今始まる!!
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる