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第一章 勇者ああああと妹
1-4 狂行手段
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森から街まで走り詰めだったせいか、だいぶ息が切れて辛い。だいたい私は戦士でも武闘家でもないんだから、運動関連は非常に苦手で手を出したくないのだ。
でも、今はそんなこと気にしてられない。せっかくお兄ちゃんについていくと決めたのに早くしないと置いてけぼりにされてしまう。
先ほどお願いした通り、団長さんたちは私よりも先に走って話をつけに行ったのだ。だから私は彼らの努力も無駄にしてはならない。
街に入り、王城はもうすぐ。街中央の噴水のある十字路を曲がれば直ぐだ!
激しく口呼吸をしながら必死に走っていると、通りに面した家から大きな物音が聞こえた。
陶器が割れる音、何かをはがす音、解体工事をしているわけでもないのに何事だろう。すごく気になったが、今は一世一代の大事な用事がある。無視してそのまま王城へと向かおうとしたその瞬間、中から出てくる人物を見て驚愕した。
「お兄ちゃん!?」
平然と他人の家から出てくる、私の誇るお兄ちゃん。そして何故か埃を被っている。私の方がおかしくなっているのかと思ってその家をじっくり確認したが、やっぱり私の家ではない。
そんな感じで固まっている私をよそに、お兄ちゃんは隣の家へとずかずか入っていった。
「あっ! 待ってよお兄ちゃん! 勝手に入ったらダメだって!」
私の静止も効果を成さず、家へと踏み込んでしまった。
しょうがないと、私も家へとお邪魔する。
するとお兄ちゃんは住民のことなど一切気にすることなく、奥の部屋へと入っていく。
「あっ、すみません。すぐに出ていきますので……」
住民に謝罪をするも、彼らはただにっこり微笑むのみ。そのよくわからない状況を不思議に思ったその瞬間、ガシャーンと大きな音がした。
「お兄ちゃん何やってるの!!??」
その光景は、なんと堂々とした空き巣犯であるか。否、この場合は居空きというのであったか。
お兄ちゃんは物置き場にあるツボや箱をひとしきり破壊し回ってる。
「やーめーてー! お兄ちゃんがそんなことする人じゃないって信じてるからー! だからやーめーてー!」
私はお兄ちゃんの腕にしがみつき、必死の抵抗を続ける。そんな中、お兄ちゃんが物を割るために使っている武器が目に入った。というよりも、その剣は私の視線を吸い込み、捕らえるようにして離さなかった。
この上ない黄金の輝き。剣に興味がない私でも見惚れるほどの調和の取れた美しさ。
「きれい……」
ため息交じりにそんな言葉を吐いてしまうほどの魅力を持った剣。
それは噂に聞く伝説の光の剣か。世界の危機が訪れた時、選ばれし者に与えられるという人類の秘宝。
そんな凄いものでお兄ちゃんは……
ガシャーン! ドーン! バリーン!
「縁起悪いにも程があるよ!? やめてよお兄ちゃん! 絶対器物損壊に使う道具じゃないって!」
人の家を荒らしまくることと、王から授けられたであろう大事なものを雑に、しかも犯罪に使っていることに耐えられず、心の中でごちゃごちゃな焦りが生じる。私は諦めずに止めようとするが、後ろからこの家の住民が声をかけてきた。
「いいんですよ。勇者様が家のものを冒険の道具として使うならどんどん持って行って下さい」
「で、でも……そんなの悪いですし」
何故か私の方が説得されてる間に、いつの間にかお兄ちゃんの姿は物置き場から消えていた。
「またっ! すいません、失礼します!」
急いで外に出る。今度は次の家へ向かおうとしているようだ。
不意にお兄ちゃんが進む逆方向の家々をよく見ると、みんな破片やクズを外に出して忙しく掃除している。
「もしかして……」
年末の大掃除などではない。外に出されるゴミの山、ゴミ置き場には袋の山、忙しく働く清掃業者の山。この大惨事はすなわち……
「全部お兄ちゃんがやったのーーーー!?」
人目を憚らず。私はただただ恥ずかしい思いで呆れた感情を口に出していた。
でも、今はそんなこと気にしてられない。せっかくお兄ちゃんについていくと決めたのに早くしないと置いてけぼりにされてしまう。
先ほどお願いした通り、団長さんたちは私よりも先に走って話をつけに行ったのだ。だから私は彼らの努力も無駄にしてはならない。
街に入り、王城はもうすぐ。街中央の噴水のある十字路を曲がれば直ぐだ!
激しく口呼吸をしながら必死に走っていると、通りに面した家から大きな物音が聞こえた。
陶器が割れる音、何かをはがす音、解体工事をしているわけでもないのに何事だろう。すごく気になったが、今は一世一代の大事な用事がある。無視してそのまま王城へと向かおうとしたその瞬間、中から出てくる人物を見て驚愕した。
「お兄ちゃん!?」
平然と他人の家から出てくる、私の誇るお兄ちゃん。そして何故か埃を被っている。私の方がおかしくなっているのかと思ってその家をじっくり確認したが、やっぱり私の家ではない。
そんな感じで固まっている私をよそに、お兄ちゃんは隣の家へとずかずか入っていった。
「あっ! 待ってよお兄ちゃん! 勝手に入ったらダメだって!」
私の静止も効果を成さず、家へと踏み込んでしまった。
しょうがないと、私も家へとお邪魔する。
するとお兄ちゃんは住民のことなど一切気にすることなく、奥の部屋へと入っていく。
「あっ、すみません。すぐに出ていきますので……」
住民に謝罪をするも、彼らはただにっこり微笑むのみ。そのよくわからない状況を不思議に思ったその瞬間、ガシャーンと大きな音がした。
「お兄ちゃん何やってるの!!??」
その光景は、なんと堂々とした空き巣犯であるか。否、この場合は居空きというのであったか。
お兄ちゃんは物置き場にあるツボや箱をひとしきり破壊し回ってる。
「やーめーてー! お兄ちゃんがそんなことする人じゃないって信じてるからー! だからやーめーてー!」
私はお兄ちゃんの腕にしがみつき、必死の抵抗を続ける。そんな中、お兄ちゃんが物を割るために使っている武器が目に入った。というよりも、その剣は私の視線を吸い込み、捕らえるようにして離さなかった。
この上ない黄金の輝き。剣に興味がない私でも見惚れるほどの調和の取れた美しさ。
「きれい……」
ため息交じりにそんな言葉を吐いてしまうほどの魅力を持った剣。
それは噂に聞く伝説の光の剣か。世界の危機が訪れた時、選ばれし者に与えられるという人類の秘宝。
そんな凄いものでお兄ちゃんは……
ガシャーン! ドーン! バリーン!
「縁起悪いにも程があるよ!? やめてよお兄ちゃん! 絶対器物損壊に使う道具じゃないって!」
人の家を荒らしまくることと、王から授けられたであろう大事なものを雑に、しかも犯罪に使っていることに耐えられず、心の中でごちゃごちゃな焦りが生じる。私は諦めずに止めようとするが、後ろからこの家の住民が声をかけてきた。
「いいんですよ。勇者様が家のものを冒険の道具として使うならどんどん持って行って下さい」
「で、でも……そんなの悪いですし」
何故か私の方が説得されてる間に、いつの間にかお兄ちゃんの姿は物置き場から消えていた。
「またっ! すいません、失礼します!」
急いで外に出る。今度は次の家へ向かおうとしているようだ。
不意にお兄ちゃんが進む逆方向の家々をよく見ると、みんな破片やクズを外に出して忙しく掃除している。
「もしかして……」
年末の大掃除などではない。外に出されるゴミの山、ゴミ置き場には袋の山、忙しく働く清掃業者の山。この大惨事はすなわち……
「全部お兄ちゃんがやったのーーーー!?」
人目を憚らず。私はただただ恥ずかしい思いで呆れた感情を口に出していた。
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