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      ジークバルト

 舞踏会なんて、なくていいのに。

 王城に行く為に準備をして、ハルを待つ
 セシルに連れられて来たハルを見て、腰が砕けた。
 この前の様に、片方だけ編み込んだ髪に今日は、紫色の宝石が散りばめられて、光の反射でキラキラしてる。前髪も斜めに整えて、ハルの綺麗な顔が丸見えだ。
 服も、紫色に黒の刺繍、反対に俺は、黒に紫色の刺繍がしてあり、対になっているのだが、普通なら、派手になりそうな色合いだが、上品で高貴さがある。
 とにかく、ハルが綺麗過ぎて、クラクラする。
 危険だ。こんなに綺麗なハルを舞踏会なんて、連れて行ったら、誰かに攫われてしまう。いや、そんな事させはしないが。
 行くの止めよう!そうしよう!

 まぁ、ハルのお願いに俺は敗北した。
 その時、セバスに怒られた。
 「旦那様、いくらハル様が可愛いからと言って、行かないとは、何事ですか!公爵家当主として、情けのう御座います。ハル様が楽しみにしていらした事は、誰よりも旦那様が知っているでしょうに。しっかりエスコートして来て下さいませ!」
 はい。
 おっしゃる通りです。

 ハルと、馬車に乗ってる時は、本当に本当に幸せだった。
 少しだけ不安そうだったけど、笑顔で俺にキスしてくれた。
 笑顔で溢す涙のハルの顔が、あまりにも綺麗で、宝石の様な涙を舐める。
 甘いんだ。ハルの涙は。
 愛してる愛してる愛してる。
 ぎゅーとハルを抱きしめて幸せを噛み締める。
 
 王城に着き、本当は抱き上げたいが、ここは、しっかりエスコートする。
 周りの奴らが、ハルに見惚れているのがわかり、圧が漏れそうになる。
 ハルは周りを見て笑う。
 笑わないで、その綺麗で可愛い顔を俺以外に見せないで。
 だから、ハルに笑わないで。耳元で、囁く。
 ホールに着く。
 ハルのビックリ顔。
 呆ける顔まで可愛い。
 駄目だ。サッさと終わらせて帰ろう。

 ハルに行くよ。と声を掛けて陛下の元まで行く。
 俺の優勝の祝いは、後に回してもらい、先にハルの紹介にしてもらう。
 ハルは、ちゃんと挨拶が出来、ホッとしている様だ。
 俺は、番がみつかり、送り人であるハルと、来年婚儀をする事を伝え、ハルを連れて、踊ろうと、振り返る。

 はぁぁもう!振り返ると、皆がハルを興味津々で見ている。
 ハルが不安そうな顔になるだろうが!
 ハルは大丈夫、って言うが、俺が大丈夫じゃない!
 軽く威圧を放つ。
 後ろから、グッ、、うぅ、、とか聞こえるが、知るか!!
 
 踊るハルが綺麗だ。
 ニコニコ笑顔で、俺だけを見てくれる。
 嬉しそうで可愛いくて。
 俺も自然と笑顔になる。
 愛しくて、守りたくて、ずっと側にいたくて、俺の中にこんな感情があるなんて、知らなかった。
 本当に運命だ。
 俺の半身。2人で1つなんだな。
 ハルが俺の番で良かった。
 だから、守る。
 ハルが優しい世界で生きていける様に。


 踊りが終わり、本当は抱き上げたいが、我慢して、グッと抱き寄せ、控え室に向かう。
 セシルの顔を見て、ホッとしてるハルの顔や手を拭いてやる。
 ハルは、料理に目を輝かせてた。
 とりあえず、俺はやるべき事をやらなければ。
 ハルをセシルに任せて、部屋を出た。

 
 陛下の元に戻り、観覧試合の優勝の祝いの言葉を貰う。
 そして、俺の周りには、騎士団、皇国軍の者達が集まり、陛下に忠誠を誓う。
 きっとハルに言えば、見たがったかもしれないが、こんなむさ苦しい所にハルを置いとけない。
 それでなくでも、騎士団の連中に、綺麗だ、可愛いだ、黒髪黒目がエロい、これ言った奴、訓練でボコボコにしてやったがなだから、ハルを控室に連れて行った。

 一通り終わらせて、ハルの所へ戻ろうとホールから出ようとすると、音楽が聞こえて来た。

 ん、ん?何故かいつもと違う?
 ハルだ!!!
 ハルのピアノだ!!
 え?どう言う事だ???
 そう思ってると、ピアノ意外の音がだんだんと小さくなり、ピアノの音だけになっていく。
 部屋へ戻って、ハルが居るか確かめたいが、このピアノは間違いなくハルだ。
 だから、ここから動けない。
 周りを見ると、皆、踊りを止めて、楽団がいるカーテンの方を見ている。
 皆、ハルのピアノに聴き入っている。
 ホール中にハルのピアノの音だけが、響き渡る。
 最後に、優しい一音が響くと、ホールの中に静寂が訪れる。

 それを破ったのは、ヴィーだ。
 ヴィーが椅子から立ち上がり、拍手を送る。
 すると、ホール中が拍手喝采で音のうねりが見える様だ。
 鳴り止まない拍手に、これどうするんだ?
 ヴィーが、スタスタと楽団がいる方へ歩いて行き、侍女がカーテンを開ける。

 ピアノが現れ、ピアノの前に座っていたハルが見えた。
 ハルは、ゆっくり立ち上がり、ヴィーの横に立ち、胸に手を当ててお辞儀をした。

 そして、顔を上げにこりと笑顔になる。

 あぁぁ可愛い。
 いや、いやいやいやいや! 
 あぁ、ハル、どうして?
 1人パニックになっていると、ヴィーが

 「皆様、本日は、私の友人で、そしてサーヴァント公爵の、ジークバルト・サーヴァントの番である、ハル・サクラバに、私がお願いして、ピアノを弾いて頂いたのです。とても、素晴らしいでしょう。私は、初めて聞いた時、とても感動しましたわ、これは是非皆様にも聞いて頂きたいと。ですから、この横な形を取らせて頂きましたわ。もう一曲聴きたくありませんこと?」

 そう聞いた、ホール中からまたうねりの様な拍手が送られている。
 
 ハルは、ペコリとお辞儀をして、ピアノの前に座る。
 そして、素晴らしいピアノを披露する。
 
 俺は、どうすればいいかわからない。
 ハルを皆に見せたくはない。
 だが、この大勢の中でも、嬉しそうに楽しそうにピアノを弾いているハルを、俺だけが独占してもいいのか。
 いや、いいんだ!俺の番だ。
 でも、、、ハルには我慢はさせたくないし、ハルの笑顔が曇る様な事はさせない。

 だから、ちゃんと話をしよう。
 俺に黙ってした事。
 これからの事。
 そう、2人で幸せになろう。
 俺達は、2人で1つだから。。。

 
 
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