健気な公爵令息は、王弟殿下に溺愛される。

りさあゆ

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・・・ルーがいない。

自分の執務室に、ルーカスが居ないのが、寂しくて仕方がない。
そして、目の前に書類の山がある。

はぁぁ~
溜め息ばかり出る。

「殿下。辛気臭いんで、止めてもらって宜しいですか?」
「・・・うるさい。」
「まぁ、ルーカス君が居ないのは、寂しく感じますね。癒しがないと言うか、潤いがないと言うか。」
「・・・まぁな。」
「ですが、同じ王宮にいるのですから、すぐに会えるんではないですか?休憩の時には、ルーカス君の所に行ってるでしょ?」
「・・・・・・」
「はい。さっさと仕事して下さいよ。」
「・・・やってる。」

ライアンは、肩をすくめて、呆れたように俺に新たな書類を渡す。

それから、黙々と仕事を続けるが、やはり頭の中ではルーカスの事を考えてしまう。

ここの所、顔色も良くなり体調は良くなってきたのは、素直に嬉しい。
休憩の度に、ルーの所に行くのだが・・・

あの、女の医師が居る事が多い。
主治医だから、と、自分に言い聞かせるが
だとしても、ルーが楽しそうに嬉しそうに話をしている場面を見ると、胸が苦しくて仕方がない。

俺が、ルーの部屋に入った時には、ルーは嬉しそうに笑う。
その度に、何度抱きしめたいと思ったか。
だが、あの主治医がいるから、頭を撫でる事しか出来ない。

主治医のルーを見る目が、患者を診るそれではない。
俺は、分かる。
絶対にルーは、渡さない。
ルーは、俺のものだ。

休憩に入って、早速ルーの所へ向かう。

扉を開けようと、手を置くと、中からルーの声が聞こえ、その言葉に手が止まる。

「・・・・好き。大好き。でも、僕では駄目だよ。もっと素敵な人がいるよ。」

これ以上聞いていられなくて、ふらふらとルーの部屋を後にした。


・・・・何も考えられない。
胸が、締め付けられるくらい、痛くて苦しい。
上手く息が出来ない。
ルーが俺の側からいなくなる?
嫌だ!!!
知らず涙が溢れる。

あぁ、こんなにもルーの事が好きなんだな
いや、好きなんかじゃ収まらない、愛してるんだ。

・・・ルー・・俺のルーカス・・・

俺は、諦めるしかないのか?
本当に、兄としてしか側に居る事は出来ないのか?
・・ははっ、一生独身決定だなぁ~。
ルー以外に愛する人は、もう現れはしないだろう。

そして、自分に言い聞かせる。
死んだ訳ではないのだ。
ルーは、生きている。
愛し愛される関係にはなれないが、兄として側に居れるじゃないか。
今までそうして来たんだ。
これからも、そうだ。
俺のルーへの気持ちに蓋をすれば良い。
ルーが俺以外の人と、幸せになるならそれで良い。
ルーの幸せが、俺の幸せだから・・・・



それから、数日が経ち。
ルーの体調も良くなり、ここ最近は庭園で過ごすことが出来るようになった。
庭園のベンチに座って、本を読んでいる事が多く、休憩の時に訪ねていくと、嬉しそうな顔で迎えてくれる。

・・・可愛い・・・

やっぱりルーが可愛くて、思わず手が出てしまい、ルーの頭を優しく撫でてしまう。

「ルー、今日の調子はどうだ?」
「今日はね、凄く身体が軽いんだ。外の空気も気持ちいいし。」
「そうか、良かった。ん?何の本読んでるんだ?」
「あ、えっとね。少しね、自分が病気になってから、ね、えーと、少しなんだけど病気の事を知りたくて、アンナ先生に本を貸してもらったの。」
「・・・・そうか。」

あぁ、駄目だな。
ルーの口から、アンナ先生と聞いただけで胸がムカムカと、嫉妬に駆られてしまう。
変な事を口走りそうになる前に、ルーに執務室に帰る、と言ってその場を後にした。

執務室に戻り、黙々と仕事をする。
今日の予定も終わり、部屋を後にしようと立ち上がると、ライアンから、
「殿下、マリウス様がお待ちですが、どうされます?」
「ん?今日の予定にあったか?」
「いえ、マリウス様が、殿下の仕事が終わり次第、面会したいと申し出があったのでお待ち頂いております。」
「わかった。今から向かう。」

執務室を出て、応接室へ移動した。

部屋に入ると、マリウスが「よう!」と片手を挙げる。

「何だ?どうした?」
「すまないね。お疲れの所。」
「いや、今からルーの所に行く所だ。」
「弟がお世話になって、すまないな。」
「・・・俺の我儘だ。」
「ふふっ、そうだな。」
「で?何だ?」
「いや、ルーをそろそろ家に返してもらってもいいかな?」
「~っ、い、いや、だ。」
「ははっ!ライ。拗らせてんな?」
「ゔぅー、嫌だが・・・そうだよな。」
「すまないな。両親がルーを手元に置きたいらしい。かなり寂しがってるんだ。」
「わかった。今から、一緒にルーの所に行こうか。」

そのまま、2人でルーの元へ向かう。


ルーの部屋に入ると、ルーはマリウスが居る事にビックリしていた。

「兄様!」
ルーは、嬉しそうにマリウスに駆け寄り、マリウスの胸に飛び込んで行くと、マリウスもルーを優しく包み込む。

「ルー?顔を良く見せて?」
ルーが腕の中から顔を上げると、
「ん、顔色も良くなってきたな。」
「うん!皆に良くしてもらってるよ。」
「良かった。」
「兄様?どうしたの?」
「ルー、父様と母様が会いたがってるんだよ。家に帰ろう。」
「僕も、父様と母様に会いたい。ライ?いいかな?」

「あぁ、もちろん。明日には帰れるように手配しとおこう。」
「ありがとう!ライ!」

俺は、ルーの笑顔にしばし、見惚れていた
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