2度目の高3(さいご)に恋をする。

テラガミコタロウ

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一学期

第2話 Re.高校3年生

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4月1日
春休みが明け、新年度。ついに二度目の三年生が始まった。
今俺がいるのは、俺の通っている高校、蒼春あおはる高校の見慣れた校舎玄関前。ちなみにこの蒼春高校という名前は、学生たちの間で【青春せいしゅん】という意味で縁起が良いとされている。この高校に通えば、もれなく完璧な青春が送れるだとかいう噂があるが、俺はこの高校に3年間通って青春の【せ】の字も拝めた事は無い。噂は時に、尾鰭を付けて伝えられていくものだ。

玄関のドアに、新しいクラスが書かれた名簿が貼り出されている。
それを新三年生全員が自分のクラスを見るために集まっている。
「おぉ! お前俺と同じクラスじゃん! イェーイ!」
一軍らしき立ち位置の男子達が騒いでいるのを横目に、俺は自分の名前を探す。
坂井…坂井……あった。
「三年一組か」
偶然な事に、去年と同じクラスだ。

またもや見慣れた教室に入ると、俺の席は真ん中の列の一番後ろだった。去年一度も引いた事ない席を引いたな。
ここはいわゆる主人公席ってやつだな。
ダメだ、学園もののアニメを見過ぎて、感性がバグってる。

それはさておき、俺が教室に入ってきてから、何か静かになった気が……
「おいお前、留年したんだって?」

急に後ろから声をかけられる。振り向くと、さっき玄関の所で騒いでいた一軍男子達だった。
かなり着崩した制服にカチューシャで押さえてあるオールバックの髪型。まさに一軍。と言うより不良って感じだ。
おそらく留年した俺を馬鹿にしに来たってとこだろう。
「おい、なんとか言えよ」
せっかく売られたケンカ。買ってやりたい気は山々だが、今は怒りを抑えよう。
新学期初日で喧嘩沙汰なんて、洒落にならないからな。
「そうなんだよねー、俺留年しちゃってさー」
俺は作りたくも無い笑顔を無理矢理作り言った。
「チッ、つまんねえやつだな」
俺が口を開いた途端、一軍男子たちはゾロゾロと席に戻って行った。
元々ケンカする気で来たのかよ……


しばらくすると、ザ・熱血教師と言わんばかりの赤ジャージを着た女教師が教室に入ってきた。
「ゲッ……」
「さあみんな! よろしくねー! 今日からこのクラスの担任になりました。松島ルリコです!」
そういって松島は目元でピースをする。
赤みがかったショートヘアに、凛々しげな顔のこの女教師。松島ルリコ。偶然、本当に偶然なことに、この人は俺の元担任だ。しかも三年の時の。

なんでまた三年一組なんだ……

去年担任だった俺にはわかる。松島は、危険だ。
どのあたりが危険なのかというと……
「おぉ!坂井じゃないか! みんな聞いてくれよー、こいつ留年したやつなんだ、だから、今日から二回目の三年ってわけ。まあみんな、可愛いがってやってくれー」
教卓の前に立った松島が、いきなり爆弾発言をし始める。
こういうところだ。この人は俺が思うに、デリカシーというものを前世に捨ててきている。俺は去年、どれだけこいつにメンタルをえぐられてきたことか。

クラス中が一斉にざわつき、俺の方を見る。もうダメだ、帰りたい。

この一年頑張ろうと決めていたが、あの松島が担任になってしまったのなら話は別だ。

「じゃ、気を取り直して……今日は大人の事情で、始業式やったら終わりねー」
というと、下校時刻は10時過ぎか。今は9時。一時間だけの学校なんて、来る意味あるのだろうか。
「連絡事項はこのくらいかな、終わりー」
そう言って松島は教室を出ようとしたが、ふと思い出したかのように振り向く。
「あ、そうだ。明日みんなに一人ずつ自己紹介してもらうから。よろしく!」
自己紹介だと……
留年という肩書きのせいでクラスで少し浮いてしまった俺に普通の自己紹介なんて出来るわけない。まあ浮いてしまった原因はあの松島の爆弾発言のせいもあるが。

松島のやつ……次から次へと無理難題を押し付けてきやがって。


始業式が終わり、下校途中。
俺は学校横の住宅街を歩いていた。俺は家から学校が近いため、歩きで登下校をしている。
前まではケイタと一緒に帰っていたが、今日からは一人。心細いが仕方ない。

しばらく歩き、家も近くなってきた頃、後ろから女子の声がした。

「ねえ、坂井くん。あなた、なんで留年したの」
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