チェスがしたいだけなのに!

奏穏朔良

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【番外編】まさかの異世界転生!?3

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そう、ガブリエルは弓の射手の中でも最後までシヴァと会ったことのない幹部だった。

(え、まって、俺普通にお兄ちゃんムーブかましてたけど相手からしたら敵組織の敗北者のおっさんがショタのフリして兄貴面してるだけのキモイ状態!?)

なんてガブリエルは内心ガタガタ震えていたが、当の本人であるシヴァは全く気にしていないし、何なら気づいていない。如何せんシヴァ本人も最後まで面識のない幹部だったのがガブリエルなので。

まあ、そんな事はつゆ知らず、ガブリエルは思わず頭を抱えた。

(……いや待てよ、そもそもシヴァは前世を覚えているのか……?)

しかし、ふいにそんな疑問が過ぎる。
ガブリエルの中で、かつて弓の射手を壊滅させ、チャトランガのボスとして裏社会を牛耳った『シヴァ』という存在は良くも悪くも噂でしかその輪郭を知らない。

圧倒的カリスマ性。そして先見の才。自らのテリトリーや仲間に手を出されれば容赦のない報復を与える無慈悲さ。かと思えば忠誠を誓った者には例え敵であったとしても懐に迎え入れるその寛大さ。

だが、今のシヴァにはそれらを感じられなかった。
あるのは漠然とした無気力と虚無、そして絶望だ。

(仮に、もし仮にチャトランガのボス、シヴァの転生体だったとして……)

そして前世の記憶があると仮定した場合、彼なら簡単にこの屋敷くらい牛耳ってしまえるのではないだろうか?
すでに外にも手を回しかつての自分の仲間を探していてもおかしくは無い。
そのくらいシヴァというボスは自らの懐へ招いた者には執着があり、尚且つ知略に優れていたはずだ。

(……もしかして記憶が朧気にしか覚えてないとか……?)

そうだ、生まれた時から言語を理解できるだけの朧気な記憶しかないとしたら説明が着く。

(つまりこれから記憶を取り戻してあの恐ろしいボスみたいになる可能性があるってことぉおお!!?)

それワンチャン俺殺されるんじゃない!?!?

従者がいる手前やらないが、ガブリエルは内心、湯をかけられた海老の如く、ビタンビタンとのたうち回る。

だって俺は敵組織の元幹部。
挙句に爆弾魔の殺人鬼。

わぁ、シヴァ様の地雷がいっぱぁい♡
役満だろこんなの。人生がクソすぎる。

(……いや待てよ?)

今、弟が前世シヴァの記憶が曖昧だとして、今のうちにブラコンに育ててしまえば仮に記憶が戻ったとしても最悪の事態にはならずに済むのでは??

「そうだ!兄弟仲良し作戦で行こう!!」

と、決意し拳を高らかに突き上げたガブリエルを、従者は(おやおや、ガブリエル様もすっかりお兄さんになって……)なんてほっこりしているが、残念。前世チャトランガのボス、シヴァはがっつり記憶を持っているし、ガブリエルが警戒すべきなのはシヴァ本人ではなく、先に再会し尚且つシヴァ様の家族枠を手に入れたその事実により嫉妬に怒り狂うチャトランガの元幹部達である。特に直接対敵した野々本 春。
ついでに自分の元上司であり後方半身面しているルドラも控えている。

まあ、そんな事を知りもしないガブリエルはその日以降、シヴァに構いに行くようになった。

「……こ、これ、一緒に読も……?」

しかし、一度弟がシヴァであると認識してしまってからは最初の「初めまして。俺は君のお兄さんだよ(キリッ)」は何だったのか。すっかり前世のように吃り、自信なさげに背を丸めて話しかける始末。
しかも持っているのは明らかに4歳向きではない魔法の指南書。
これには従者や、直前で縋りつかれた侍女もにっこり。

あ~、あんなに大人顔負けの頭脳を持つガブリエル様でも弟にどう接していいかわからなくなっちゃったりするんですね~!年相応で可愛いですね~!でもその指南書は難しいんじゃないかな~!

なんてほっこりしてるがガブリエルの内心は正反対にひんやり通り越して氷河期である。

とりあえずガブリエルは弟を立派なブラコンにするため「にぃに」と呼ばせることに成功した。


そんな風になんとかガブリエルが「兄弟仲良し作戦」を遂行し、日々を過ごしていると、父の客人が珍しい物を見せてくれたのだ。

それはゲールというボードゲームだ。

(……これ、シヴァと遊んだらもっと兄弟仲良くなるのでは?)

いつまでも魔法の指南書や工学書ばかりじゃシヴァも飽きてしまうかもしれない。記憶はなくとも地頭はいいようなので俺が教えることをスポンジのように吸収しているが、常に無気力感が抜けないので楽しんでいるかどうかはわからない。

(子供には子供らしくこういう娯楽の方がウケがいいかも……)

と、さっそく父親に「このゲールってゲーム僕もほしい!ねぇ、父様買ってぇ?」なんてぶりっ子してなんとか取り寄せてもらった。

ボードはそこそこ大きいため、俺が運ぶとヨタヨタしくなってしまい、それに従者が「ガブリエル様!私が運びますから!」と切実な声を上げるもそれは許せない。

なぜなら!俺から渡した方が!シヴァからの好感度が上がりそうだから!

そして結果は、

(……えぇぇええお目目キラッキラぁ……)

もはや完全勝利だろこんなん。

ボードゲームと聞いた瞬間今までの虚無は何だったのか。ハイライトをふんだんに散りばめたキラッキラの星空がシヴァの瞳に映っていた。

(……イヒヒッ、やっぱりこのくらいの歳の子はいくら頭が良くてもゲームの方が楽しいよな。)

なんて思いながらガブリエルはゲールの駒を持ち上げてキラキラ光るその目にルールを説明していく。

(……もっと他のボードゲームも取り寄せてあげよう。勉強もあるから時間はそんなに取れないけど、空いた時間はシヴァの対戦相手になってあげて、いっぱい話をしてあげよう。)

そうしたらこのキラキラした星空はもっと輝かしい空を映してくれるかもしれない。

例えシヴァの転生体だとしても、記憶の曖昧なこの子は少し頭のいい4歳に過ぎない。だから、兄の俺がもっと沢山の世界を見せてあげよう。

絶望する間なんてないくらいに。



お気づきだろうか。
こいつ、ミイラ取りがミイラになってやがる。


**(後書き)**

祝!30万pt突破しました~!!(今更)
皆様本当にありがとうございます!
そして、近況ボードにも載せましたがこれを機にXアカウント作りました。
現在、祖母と兄のW介護で今まで以上に更新頻度が落ちているため更新や進捗等を前もって告知するためのアカウントになります。
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@kanonsakura_
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