錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中

奏穏朔良

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勿論裏でそんなことが起きているなど知りもしないナタは、今日も錬金術に勤しんでいた。
各国はナタの扱いや女神の存在にてんやわんやの大騒ぎなのにこの温度差よ。

ポーションは先日の神官黒焦げ事件の際に色々試し、一通り満足したので、今回は道具の錬成とバフの付与を試そうと、診断所の机にアイテムボックスから取り出したアイテムをゴトゴト置いていく。

(あれ、ヤクルスの角ってもうこれしか無かったっけ?)

そういえば新しいポーションのレシピにヤクルスの角も使ったっけ、とナタはアイテムボックスに表示される数字を眺めながら顎に指を添えた。

(皮が186に対して角が62……)

皮もポーションに使えるか試したため、少しは使って減っているが 、角の残量はその半分を下回る。
自分が思っていたより角を消費していたらしい。

(なら今日は皮だけの錬成試す方がいっか。)

と、今日試す大まかな方向性を決め、近くで包帯を片付けていたカルロの腰に佩いであるナイフを、ホルダーごと強奪した。

「なんでぇ!!?」

それ俺の獲物なの、それないと魔物討伐できないの、と何故かこちらに言い聞かせるような、宥めるような物言いで必死に言い募るカルロ。

それをガン無視所か最早耳にも入らず、ナイフと鞘の形を確認し、ホルダーの構造を確認し、腰のベルトの長さを採寸したナタに、カルロは「魔改造だけはやめてぇぇえええ!!!!」と縋り付いた。

ひと月以上ナタの奇行とその規格外さに付き合わされてきたカルロは、ナタの錬金術師アルケミストとして、武器や武具の錬成が出来ることは知っている。

しかし、ナタの作る武器は規格外のバフが付いているので、加減や調整が非常に難しいのだ。

この前試しに振るったナイフは小ぶりのくせにイノシシ型の大型魔物がミンチになって弾け飛んだ。
恐怖に震えるカルロ達スラムの冒険者に対してニコニコしていたのはナタだけである。

「別に今日作るのナイフじゃないから。」

と手をヒラヒラさせ、ホルダーごとナイフを返したナタに、カルロは警戒感を滲ませながら

「本当か?」

と尋ねる。

それにナタは「ホントホント。」なんて軽く答えながらササッとペンを走らせ、ナイフのホルダーの展開図と何処に何の魔法陣を付与するかを紙に書き出した。

基本的に素材のレア度が高ければより良い効能のバフが。レア度が低ければそこそこの効能のバフを付与することができる。

しかし、魔法陣を増やせばその分素材の耐久性が減るし、下手すれば魔法陣を刻んでいる時に素材が爆散する。

ゲームでは錬成失敗!なんて文字が出て終わりだが、この世界では爆散して素材が消えて終わった。
ゲームでは出来ない直接の付与に調子に乗って魔法陣書き込み過ぎたことを思い出し、ナタはギュッと口を窄める。
くそ、あの素材は勿体ないことをした。

そんなナタの表情にカルロは余計に心配になり、今日はギルドで依頼受けるのやめるか……と、近くの椅子を引っ張り出して腰を落とした。

こういう時ナタを置いていくとろくな事にならないと、カルロは学習したのだ。小さい子から目を離すと何するかわからないからな。
そいつは赤ちゃんじゃなくて普通の17歳だそ。

そんなこんなでカルロが見守る中、ヤクルスの皮、輝きの織物、風属性と水属性の2つの魔法石を錬金釜にぶち込んだ。

もう一度言おう。

錬金釜にぶち込んだ。

ナタは錬金術師アルケミストだからね。
フッとカルロは遠い目をした。

「さーて、上手く形になるかな~。」

と、レードルでグルグル釜の中をかき混ぜながら先程書いた設計図を眺めるナタ。

ゲーム仕様が故の事故現場。
なぜ魔物の皮と布と石ぶち込んでレードルで混ぜると液体になっているのか。

カルロはなんかもう考えるのをやめた。
突っ込むだけ体力の無駄なので。

そしてポンっと軽い弾ける音と、消える液体。
ナタは釜に残った革の艶やかな光沢を纏うナイフを佩くためのホルダーを取り出し、魔力を帯びた指で魔法陣を刻んでいく。

裏地に使われた輝きの織物はナイフを入れるには少し勿体ないほど、細かい粒子が煌めいている。

「はい。あげる。」

「は???」

そんな見た目も高級感溢れるホルダーをその辺の包帯を渡すかのような気軽さでカルロに渡してきたナタに、カルロの口がぽかんと開く。

「風と水の魔石でホルダー内のナイフの刃は自動的に血や脂の汚れを落として最高の切れ味を保てるように設計してみたんだ。あとホルダー内にあることで間接的なバフの付与。主に耐久性や切れ味の向上なんだけど、これのレシピが確立できたら面白いと思うんだよね。武器にも付与して、武具にも付与したら効果はどれくらい変化があるのかな?それとも素材によっては耐えきれなくなるのかな?間接的なら魔法陣の負荷はかからないと思うんだけどこの辺りは追々実験だね。」

という訳だから使ったら感想教えて、と締めくくられたナタの言葉。
なんかもう勢ありすぎて立て板に水っていうより立て板に滝。

カルロの思考はショート寸前である。

「……とりあえず、魔物討伐してくる。」

カルロがため息をつきながらそう言葉をこぼすも、ナタはふんふん鼻を鳴らして新しい設計図を書き始めている。
既に新しいアイディアに夢中なようで、カルロの声は届いていないようだった。

それに再度小さく息を吐いて、簡単な魔物討伐の依頼を受けに、カルロはギルドへと足を向けた。

「なんとなーく嫌な予感がするのは何故だろうな……」

と1人呟きを落としながら足を進めるカルロ。
そんなカルロの背を見つめる人影がひとつ。

カルロ、世の中ではそれをフラグと呼ぶんだぞ。



**あとがき**

前話にエールしていただきました!ありがとうございます!
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感想 4

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みんなの感想(4件)

コゲツ
2026.03.02 コゲツ
ネタバレ含む
2026.03.03 奏穏朔良

感想ありがとうございます!

ソール君!良かったね!格上げされたよ!笑
多分女王の中ではソールの「おもしれー男度」がどんどん格上げされていくと思います笑
なんなら女王の息子たちも「おもしれー男」枠です笑笑

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コゲツ
2026.02.16 コゲツ
ネタバレ含む
2026.02.17 奏穏朔良

感想ありがとうございます!とても励みになります!

最早勘違いが加速する予感しかしませんよね笑
近々カルロ達周りの人間から見ていた視点も書くと思いますのでぜひ楽しみにお待ち下さい!笑

解除
コゲツ
2026.02.02 コゲツ
ネタバレ含む
2026.02.02 奏穏朔良

感想ありがとうございます!

カルロの中でナタは生後1ヶ月のバブちゃん確定です笑

解除

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