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第一章・ヒーローに憧れていた男
(1)ヒーローに憧れていた男
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男の子なら冒険アニメを見てヒーローに憧れていた……というのは珍しくないだろう。しかし、もしあなたが突然地味な人生から憧れていたヒーローになったら……どう思うだろうか?この物語はそんな地味な生活から一転した男性の物語である。
…………2016年10月29日朝、大阪。この日の地下鉄の駅で呑気にあくびをしている男性がいた。顔はイケメンで背広を着て、右腕には腕輪、左腕には時計をつけて革のかばんを持っている。
…………竜原虎丞
●1988年1月1日生まれ。
●大阪府出身。
●好きな食べ物……クレープ
●職業……会社員(平)
●趣味……テレビゲーム・カラオケ・パチンコ(時々)
彼は非常に地味であり、性格は大人しいというより静かすぎるのである。仕事は真面目で任された業務はきっちりこなす職人系ではあるが大人しすぎるためか職場では友達がいなかったのである。
それというのも彼は小学生時代から苛められていたからである。他の生徒よりも明るい性格だったがそれをうざがった生徒の嫌がらせから始まり、それが周りに浸透してしまったのである。
「僕、なんか皆に不快なことしたの!?」
「あっ!?おまえの存在自体が不快じゃボケッ!!」
そういう事情もあってか中学時代の後期からついにはあまり喋らなくなり、高校時代ではその性格が災いして苛めを受けたこともあった。
「くそ……覚えとけよ……!!」
そんな虎丞だったが憧れているものはあった。それは『ヒーロー』である。テレビをつければ必ずアニメにチャンネルを合わせて主人公をメインにヒーローに憧れ、悪のキャラクターを強く憎んでいた。
「いいぞっ!!やれやれ!!そんなやつなどやっつけてしまえ!!」
「トラ、うるさいわよ!!」
テレビを見ていて熱くなりすぎて家事をしていた母親によく怒られていた。そして数少ない友達の前では自分のことをこう呼んでいた。
「みんな、俺は『タイガードラゴン』というヒーローだ!!俺は悪を許さない正義のヒーローなんだっ!!」
空き地で友達を集めて虎丞はいつもヒーロー役となり、民間人役の友達を守って悪役をつとめた友達を倒すというヒーローごっこに夢中であった。
「みんな、安心してくれ!!俺がヒーローだ!!だからみんなを俺が守る!!悪は許さないぞ!!おらーっ!!」
しかしそんな楽しいヒーローごっこも高校時代から皆と集まる時間がなくなり、いつの間にか当時の友達とは疎遠になっていたのである。そしてある日、空き地にやって来て拳を丸めてパンチをしていたが…………
「みんな、安心してくれ!!俺が…………ヒーローだ…………!!だから…………な…………みんなを守らせて…………くれよ…………」
誰もいない空き地で虎丞は大粒の涙を流していたのである。涙が止まらず、虚しさと寂しさだけが残ったのである。その日以降から空き地に来なくなり、大学を経て会社員となったのである。
会社員になっても地味さは変わらず、趣味がアニメ鑑賞からカラオケやパチンコに変わってヒーローへの憧れは薄れつつあった。この日も朝にはコンビニでカレーパン二つとグレープジュースを購入した以外、何も変わらない平穏な一日であった。
「カレーパンは温めますか?」
「いや、そのままで。」
「分かりました~」
温めるかどうか聞いた女性店員に丁寧に答える虎丞はいつもと変わりなかったのである。そう……その日の昼までは…………
会社はパソコンを使った事務業務で朝9時に出勤して昼12時から一時間半の休憩があり、夕方5時には業務終了となる。この日も昼になると会社近くのコンビニで昼飯を購入してから会社の自分のデスクで食べてから12時半から一時間だけ会社で許されているプライベートのパソコン使用可能の時間を利用して情報検索したり、ゲームをしたりしている。虎丞はコンビニでハンバーグ弁当を買いに来ると同僚が来ていたのである。
「やあ、竜原!!」
「お、大原じゃないか。お前も来ていたんだな。」
「たまにはな(笑)。ところでお前、いつも物静かすぎるぞ!!たまにはパッとスパーキングになれや(笑)!!」
「ハジけろってことか(笑)。俺はそんな気分じゃない……でもいつも心配してくれてありがとうな。」
会社には気さくな同僚も多く、苛めがないので虎丞には安心できる環境であった。ハンバーグ弁当を購入した虎丞は会社の自分のデスクですぐに食べ終えるといつも通りにパソコンを起動したのである。
「今日は何を検索しようかな……ん?“異世界へ行く方法”だと……?」
トレンドに出ていたキーワードをよく分からないが検索しはじめた虎丞であったが画面が黒くなり、白い文字が表示されたのである。
『あなたも小さい頃にあこがれたヒーローになってみませんか?』
「は?」
虎丞は何これとしか思わなかったが、突然パソコンが光り、その眩しさに虎丞は両腕で目を守ったが…………
「うわあああああああ!!!」
眩しい光が虎丞の視界を覆い、光がおさまると会社にいたはずが全く知らない草原にいたのである。
「は、ここどこやねん?」
辺りを見渡しても何もなく帰り方が分からず焦りはじめた虎丞であった。すると鎧を装着して大きな剣を持った男性が現れたのである。男性の右ほほには大きな切り傷があった。
「お前が選ばれし戦士なのか……?」
「は?何のことですか……というかあなたは誰ですか?」
どこか分からない世界に来ていきなり“選ばれし戦士”だと言われても困惑するしかない虎丞であった。
第1話・終わり
…………2016年10月29日朝、大阪。この日の地下鉄の駅で呑気にあくびをしている男性がいた。顔はイケメンで背広を着て、右腕には腕輪、左腕には時計をつけて革のかばんを持っている。
…………竜原虎丞
●1988年1月1日生まれ。
●大阪府出身。
●好きな食べ物……クレープ
●職業……会社員(平)
●趣味……テレビゲーム・カラオケ・パチンコ(時々)
彼は非常に地味であり、性格は大人しいというより静かすぎるのである。仕事は真面目で任された業務はきっちりこなす職人系ではあるが大人しすぎるためか職場では友達がいなかったのである。
それというのも彼は小学生時代から苛められていたからである。他の生徒よりも明るい性格だったがそれをうざがった生徒の嫌がらせから始まり、それが周りに浸透してしまったのである。
「僕、なんか皆に不快なことしたの!?」
「あっ!?おまえの存在自体が不快じゃボケッ!!」
そういう事情もあってか中学時代の後期からついにはあまり喋らなくなり、高校時代ではその性格が災いして苛めを受けたこともあった。
「くそ……覚えとけよ……!!」
そんな虎丞だったが憧れているものはあった。それは『ヒーロー』である。テレビをつければ必ずアニメにチャンネルを合わせて主人公をメインにヒーローに憧れ、悪のキャラクターを強く憎んでいた。
「いいぞっ!!やれやれ!!そんなやつなどやっつけてしまえ!!」
「トラ、うるさいわよ!!」
テレビを見ていて熱くなりすぎて家事をしていた母親によく怒られていた。そして数少ない友達の前では自分のことをこう呼んでいた。
「みんな、俺は『タイガードラゴン』というヒーローだ!!俺は悪を許さない正義のヒーローなんだっ!!」
空き地で友達を集めて虎丞はいつもヒーロー役となり、民間人役の友達を守って悪役をつとめた友達を倒すというヒーローごっこに夢中であった。
「みんな、安心してくれ!!俺がヒーローだ!!だからみんなを俺が守る!!悪は許さないぞ!!おらーっ!!」
しかしそんな楽しいヒーローごっこも高校時代から皆と集まる時間がなくなり、いつの間にか当時の友達とは疎遠になっていたのである。そしてある日、空き地にやって来て拳を丸めてパンチをしていたが…………
「みんな、安心してくれ!!俺が…………ヒーローだ…………!!だから…………な…………みんなを守らせて…………くれよ…………」
誰もいない空き地で虎丞は大粒の涙を流していたのである。涙が止まらず、虚しさと寂しさだけが残ったのである。その日以降から空き地に来なくなり、大学を経て会社員となったのである。
会社員になっても地味さは変わらず、趣味がアニメ鑑賞からカラオケやパチンコに変わってヒーローへの憧れは薄れつつあった。この日も朝にはコンビニでカレーパン二つとグレープジュースを購入した以外、何も変わらない平穏な一日であった。
「カレーパンは温めますか?」
「いや、そのままで。」
「分かりました~」
温めるかどうか聞いた女性店員に丁寧に答える虎丞はいつもと変わりなかったのである。そう……その日の昼までは…………
会社はパソコンを使った事務業務で朝9時に出勤して昼12時から一時間半の休憩があり、夕方5時には業務終了となる。この日も昼になると会社近くのコンビニで昼飯を購入してから会社の自分のデスクで食べてから12時半から一時間だけ会社で許されているプライベートのパソコン使用可能の時間を利用して情報検索したり、ゲームをしたりしている。虎丞はコンビニでハンバーグ弁当を買いに来ると同僚が来ていたのである。
「やあ、竜原!!」
「お、大原じゃないか。お前も来ていたんだな。」
「たまにはな(笑)。ところでお前、いつも物静かすぎるぞ!!たまにはパッとスパーキングになれや(笑)!!」
「ハジけろってことか(笑)。俺はそんな気分じゃない……でもいつも心配してくれてありがとうな。」
会社には気さくな同僚も多く、苛めがないので虎丞には安心できる環境であった。ハンバーグ弁当を購入した虎丞は会社の自分のデスクですぐに食べ終えるといつも通りにパソコンを起動したのである。
「今日は何を検索しようかな……ん?“異世界へ行く方法”だと……?」
トレンドに出ていたキーワードをよく分からないが検索しはじめた虎丞であったが画面が黒くなり、白い文字が表示されたのである。
『あなたも小さい頃にあこがれたヒーローになってみませんか?』
「は?」
虎丞は何これとしか思わなかったが、突然パソコンが光り、その眩しさに虎丞は両腕で目を守ったが…………
「うわあああああああ!!!」
眩しい光が虎丞の視界を覆い、光がおさまると会社にいたはずが全く知らない草原にいたのである。
「は、ここどこやねん?」
辺りを見渡しても何もなく帰り方が分からず焦りはじめた虎丞であった。すると鎧を装着して大きな剣を持った男性が現れたのである。男性の右ほほには大きな切り傷があった。
「お前が選ばれし戦士なのか……?」
「は?何のことですか……というかあなたは誰ですか?」
どこか分からない世界に来ていきなり“選ばれし戦士”だと言われても困惑するしかない虎丞であった。
第1話・終わり
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