ヒナの国造り

第４章・ドーリンの洞窟と若さの効用のルーツ

洞窟の中の禁断の成分③

翌朝、足を痛めたヒナはさすがにこの日は外に出なかったのであった。すると数日遅れの大雨がブルーサイドを襲った。

「今日は雨だったかな？」

直露は新聞を読むと天気予報は確かに雨であった。しかし降水確率の低さからこの雨が普通の雨でないように感じていたのである。

「ヒナちゃんが洞窟の奥に進んでからこの雨だ……やはりなにかヒナちゃんに近付けさせたくないなにかがあるのだろうか……」

「考えすぎでは？」

「うわぁ！なんだお前か……急に何しに来たんだよ……」

突然、直露の隣に現れたのは彼の妻であった。横の部屋にいると聞こえた話が気になったのか部屋に訪れたと言う。

「直露さんは考えすぎですよ。土地神様がこの村にいる人を嫌ったりはしません。たとえ急にこの村に現れた女の子であっても……」

「そうだよな。考えすぎていたよ。でもなんか引っ掛かる雨だなと思っていたからね。降水確率５０％でまさかの大雨だったからね……」

「土地神様の仕業ではありません。ただ洞窟自体が何かに抵抗しているのかもしれませんね。もしかしたら出したくない何かを隠しているとか……？」

「目的のやつがかなりヤバイものとかかな……？それならそうかもしれないが……」

「まあでもこんな話をしたところで今は雨は止まないでしょう。たぶんにわか雨だと思いますが、今は深く考えずにいきましょう。考えるのはまた後程です。」

「ああ、そうだな。」

会話も終わりヒナが昼寝をしている最中に雨は止み、晴れ空がだんだんと戻ってきたのであった。雨は直露夫人の言う通り、やむ気配がないように感じる天候だったように見えたはずなのにすぐに止んだのであった。

ヒナは起き上がってすぐに洞窟に行こうとしたが足の痛みがまだ収まらない。今日は諦めないといけないなと思いつつ、洞窟の方向を見つめていたのであった。

その夜、この日は客が来てないためか日紙家の家族とヒナだけで食事をすることにしたのである。尚、この日は日紙の弟と名乗る人物が民宿に現れたのである。男前でスーツの似合う感じの若者である。

「ヒナちゃん、こいつが弟の日紙直摩(ひかみ・ただま)で２８歳。今は外の仕事で頻繁に家を空けているけど今日はたまたま帰ってきた日だよ。まだ独り身だからよかったら仲良くしてあげてね！」

ヒナは直摩の顔を見ると少し惚れてしまったようである。

「はじめまして、ヒナさん。私は日紙家の次男の直摩と言います。電話で兄から話を聞いております。これからもよろしくお願いします！」

「直摩さん、はじめまして。こちらこそこれからもよろしくお願いします！」

二人は挨拶を済ませると皆で食事を始めたのである。そして洞窟の話に入り、話が弾んでいた時であった。

「兄貴、明日ヒナさんは洞窟に行かれるのですか？」

「ああ、明日は行くみたいだよ。ねえヒナちゃん！」

「ええ、足も回復しつつありますから明日は洞窟に行くつもりです。」

「ヒナさん、よければ明日は僕も一緒に同伴してもよろしいでしょうか？」

なんと直摩はヒナに洞窟へ行くのを懇願し始めたのである。どちらかといえばアウトドアの雰囲気を出さない直摩の発言に家族全員が唖然としたのである。

「え……危ないですよ……？」

「いえ、僕なら大丈夫です。むしろヒナさんこそ一人で行くのは危険なので僕が同伴した方がいいと思います。」

「直摩、お前大丈夫なのか？」

「兄貴、僕は大丈夫です。だから彼女と一緒に目的地へとたどり着きましょう！！」

急展開を見せた状況にヒナは回答できずただ戸惑うしかなかったのである。