ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第5章・地獄の懸垂と古代都市の復活阻止と成分の正体

悪魔の直伸⑥

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山道で突然旅のお供をしたいと言われ、困惑するヒナ。そして女性はいきたい場所を告げたのである。

「私は直伸さんのところに行きたいです!」

「私も直伸さんのところに行くのよ。あなたはどうしてかな?」

「私はあの人に恨みがあるのです!!!私の妹があの人に殺されたのです!!」

衝撃だった。女性の発言が本当なら直伸は殺人者ということになる。勿論直伸はその過去を隠蔽しているのである。

「詳しく聞かせて。」

「はい、私は柏之山雪(かしのやま・ゆき)と言います。妹は私より一つ年下で仲の良い姉妹でした。姉が英商事(えいしょうじ)家に嫁いでからはまだ十代の私達が親の助けをしたりしていました。」

「仲の良い妹さんだったのですね……」

「はい。それで義理のお兄さん(姉の夫)が私達二人を成人になったら一緒に自分の事業に手伝いに来てもらうと言ってくださったほど私達は離れ離れになることすら辛いほど仲の良い姉妹でした。ところが……」

この雪の話はあまりにも衝撃的なものがあったのだ。これは世間に知れていない直伸の愚行の氷山の一角である。

「ある日、私が家に帰宅すると妹が血を流して倒れていました。すぐに病院に運ばれましたが既に亡くなっていました……私も両親も姉も義理のお兄さんも皆、泣いていました。私自身辛さが大きくて気が狂いそうになるくらい苦しかった……」

「どうして直伸さんが犯人とわかったのかな?」

「実は義理のお兄さんが事件について事業の仲間達に情報を聞いてもらうよう頼んでくださっていて自分でもずっと調べて下さっていたのです。そしてある日、直伸さんの親族らしき人が捜査上に浮上して逮捕されました。義理のお兄さんのお陰で逮捕にまで漕ぎ着けました。すると彼(実行犯)が私の母との面会で『直伸さんから依頼されて殺した』と発言されていたようです。」

「詳しくは解明したの?」

「義理のお兄さんのお母様の実のお兄さんである医学博士の熊尾清太(くまお・せいた)先生が死因を調べて下さったのですが小刀で何ヵ所か刺されていたような跡がありました。」

「こんな感じの小刀かな?」

ヒナがオーシャン・エメラルドの小刀を見せると雪は驚いたようだ。

「それに近い感じです。結構切れ味は強いですか?」

「結構切れるわよ。特製品なの。」

「そうでしたか……恐らく妹もこのような小刀で切られ……た……うぅっ……」

小刀を見た雪は突然涙を流し、言葉を濁らせた。無理もないはずである。自分の愛する妹が切られて刺されまくったのと同じ小刀が目の前にあれば辛さが増してくるはずである。

「ごめんなさいね。こんなもの見せちゃって……」

ヒナが少し目を潤ませて謝ると雪は言葉を濁らせながらもヒナをフォローしたのである。

「ちが……んです……うぅっ……見せてと言ったの……わた……しですから……ぐすっ……それで熊尾先生も突然亡くなって……」

「え?どうして先生が……?」

「分からないです……急に発作でと……聞いて……ます……」

とんでもない話である。妹の命を奪われ、遠い親戚も突然亡くなって雪は相当辛い思いをしたのがヒナには伝わってきたのであった。
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