ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第8章・まさかの新展開

宅配業とトラブルのこと

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ヒナが毛布を被せて一時間くらいすると竜太は目を覚ました。

「ああ、毛布を誰かかけてくれたんか。」

「ヒナさんがかけてくれてましたよ。」

「そうか、ありがとうな。」

「いえいえ、大したことないわよ。」

竜太がとても丸くなっていた。しかしヒナは自分が丸くしたのではなく、丸くなるきっかけを持つ人物がいることに気づいていた。

「やはりあの子か……」

ヒナが呟くと竜太はヒナの様子を伺っていた。そして竜太はある話をはじめたのである。

「この記事読んでほしいんやけど。ええか?」

竜太は真剣な顔をしながらヒナにある新聞記事の切りぬきを渡したのである。

「どれどれ……1996年7月2日付けの記事ね。『1日夜にグリンフォートのサンマルクタウンの民家の高齢の夫婦に暴行を振るったとして同ウィンガタウンに住む宅配業者の渡連間凄(とれま・すごむ)氏を捕らえた。渡連間氏は同日夜、サンマルクタウンに住む凶久(きょうひさ)夫妻宅で宅配の業務について指摘されて「上目線で頭に来た」と夫婦を持っていた飲料容器(ペットボトル)で数回殴ったとして傷害行為を行ったとされる。』……相当頭に来たのね……」

「暴行を庇うつもりはないけどここで宅配業者はバカにされるんだよ。客が上目線でいちゃもんつけてくるからこういう事件も増えるんだよね……俺が宅配業者を経て選挙で訴えたひとつに宅配業者の大変さを理解してほしかったという点もあった。それはテレビに出ても常に訴えていたよ。」

「宅配って何を配るのですか?」

「それは牛乳だったり新聞だったりチラシだったり情報紙だったり……俺は情報紙を担当していたが、楽しくないよマジで。天気悪くても仕事あるし、何より失敗すれば相手は“自分はこの仕事を流れを知っているという知識人ぶって上から目線でなめた発言”をしてくるからたまらないよ。ほかの部門の人も言っていたな。」

「わあ~すごいね……どこの世界も色々あるのね……」

ヒナは色々なことが色々な世界で起きているのを感じた。竜太の話はヒナにとって常に新鮮で何より地獄を経験してきた竜太のことを思うと彼のような苦しむ人が一人でも減る世の中を作りたいとヒナは心の中で思うようになった。

「竜太さん、今度は私の話も聞いてほしいな。」

「ああ、聞くよ。楽しみにしとるわ。」

笑顔でそう返した竜太にヒナは笑顔で返した。

「ありがとう!!」

二人の絆は少しずつ強くなってきた。京介は二人を眺めて竜太の性格を変えてくれたヒナに感謝しているような表情をしていたのである。
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