ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第9章・世界の歪み

異世界に吹き飛ばされた竜太①

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竜太は焦り始めたのである。雪はいないし、そもそも身体が子供の頃に戻っているのに驚きを隠せないからだ。

「いやいや、何をしたらこうなるねん!!こんな展開誰も望んでへん!!つーか“主役のいないパーティー”みたいな展開やないけこれ!!」

もはやアタマが混乱しているのか竜太は誰に対して言いたいのか端から見れば分からないような発言を連発しているのである。すると高齢の女性が竜太にヒナの世界で言うごはんと味噌汁と素麺と卵焼きを用意してくれたのである。

「あんた、本当に可愛らしいわ。」

「俺が……?可愛らしいだと……!?」

「ええ、あんたはワタシらの孫によう似とる。子供と縁を切られてから寂しくて寂しくてずっと二人で生きてきたけどあんたに出会えて嬉しかった。」

「あんた……いい人達だな。」

「ゆっくりしていきな。」

竜太は食事を頬張りながら二人の顔を見つめていた。実の孫を見つめるような目で見られる内に自身も祖父母のことを思い出していた。

「(俺のじいちゃんもばあちゃんも元気しとるかな……?)」

そう思うとあることを思い出したのである。そういや何でこんなところにいるのかということである。

「ばあさん、聞きたいことがある。」

「なんだい?」

「俺は一体どうしてここに居たんだ?」

すると女性は話を聞かせてくれたのである。

「あんたはあの海岸から流れてきたんじゃよ。どこかから飛び降りてきたようじゃがふっくらしたもの(エアバック?)が身体にくっついていたから助かったようじゃ。」

「(ああ……小屋で変なものを飲まされてからそういや意識がない……)」

呟いていると彼は酔っぱらって小屋の近くの崖から転落した記憶を頭のなかで思い出せたのである。

「(崖から落ちる前、コーヒーを宇佐鷺とかいうやつから飲まされてそれでなぜか酔いつぶれて崖の方へ向かった。そしてプールと勘違いして飛び降りた……そこから助けられるまでの記憶は呼び起こせないが少なくともここで何かがあって今の自分になってしまったわけか……)」

記憶を呼び戻した竜太は宇佐鷺という人物に騙されたという悔しさと雪の安否を心配し始めたのである。

「どうしたのだ?なにか心配事があるんか?」

男性が声をかけてくれた。

「はい、僕の知り合いの……いや、友人の女性と女の子が行方不明になって男仲間で探していて…………」

「心配なんじゃな……大丈夫じゃよ。お前は瞳を見てわかるが優しい男の目をしている。必ず神はお前を助けてくれるから……」

どうも夫婦は竜太の身体が縮んだことを知っていたようだ。だが、孫みたいな存在だと思えるから優しくしてくれた。この言葉からも竜太は二人の優しさを感じとることができたのだ。
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