ヒナの国造り

第９章・世界の歪み

異世界に吹き飛ばされた竜太②

ヒナを探しに来た竜太はいつの間にか縮まって老夫婦の家にすんでいたのであるが、とりあえず暇なので本を読むことにした。

「これは『先祖の人の話』というタイトルか……」

竜太が目につけたのはこの世界の人物かは分からないが横浜頼北(よこはま・らいこく)という人物の書いた小説である。

「読んでみるか……」

そういうと竜太は読み出したが、読んでいるときに長(おさ)一族の情報が流れていたのである。

『この世界、長一族の一部の人物が何もなきこの世界に降りられ、人類繁栄に貢献された。したがってこの世界の人間は皆、長一族の子孫であるとする。』

どうやらこの世界は“長(おさ)”なる一族が繁栄させた人々によって作られた世界のようである。家系図があるないに関わらず世界が先祖の姿を映し出すという不思議な歴史である。

「長の歴史は今も絶えないのがこの世界の重要な部分じゃよ。」

竜太の元に男性がやって来た。男性はこの世界を作られたときのことを研究しており、この本の内容にある程度詳しかった。

「ワシらは皆、長一族の末裔であり長一族の血を受け継いでいる。先祖表(家系図か？)がなくとも長一族の血が流れているのは事実じゃ。」

竜太は静かに頷く。先祖の話に今まで関心を持たず、先祖のことすら知らなかったのであったからだ。自分にしろ代々農家だと言っていた友人にしろ育ての父やその家族にしろ皆が“長一族”の子孫であることは大きなポイントであった。

「長の一族の皆様が僕のルーツや世界の人間関係をお作りになられたのか……」

そう感じた竜太は感慨に浸った。今まで色々会ったから感慨に浸りながら過ごすのも悪くないかなと考えていたからだ。だがヒナと雪のことが心配である。

「そろそろ行かなくちゃ……！！」

しかし崖を登れない……元の世界に戻るためにこの崖を上がればちゃんと身長も戻るだろうか……ととにかく不安は尽きない。

「竜太君、無理に崖を上ることは出来ない。ワシらには分からないがあるルートがあるという。」

男性は言う。別のルートがあることを……しかしその別のルートというのが今は詳しく明らかにされていないというより男性も知らないようだ。どうも聞いた話らしいという。

「崖を上ることは見てくれたら分かるだろうが出来ぬ。」

竜太が崖の上を見ると岩が大きく出っ張っており確かに登れない。だから別のルートを探すしかないようである。