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第10章・団結に向けて
周参見野一族と竜太の繋がり③
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日紙家の名前を出すと激怒した英寛をなだめようと西村は話をごまかしたのである。
「ところでスーザック村内に洲山野という地名がもう無いみたいですが……」
すると英寛はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの笑顔を見せたのである。
「ああ、洲山野集落はもう無い。周参見野家の先祖に嫁いだ女子が洲山野家唯一の子供だったからだ。」
「ということはもう跡継ぎが誰もいなかったのですね……」
「1618年あたりから洲山野氏は名声があったが数百年すると一族が減り、彼女の4代前が分家筋の女子と結ばれてからは本家筋しかなくなり、3代前が皇帝の王女と結ばれて2代前がアマウス王朝末裔の東口家の女子と結ばれても共に男子一人しか恵まれず、彼女の父親が当時は親交の深かった“日紙家”から母親を迎えても女子一人しか恵まれなかった。そしてその女子が周参見野家に入ったことから彼女の両親の死をもって洲山野家は途絶え、集落はスーザック村に完全に統一されたのだ。」
「だから“洲山野”という名前はなくなったのですね……僕の父方は庄屋の家柄とは聞いていましたが母方はこんな家系だとは知らなかった…………」
「本当に素晴らしい一族だったようだ。そして洲山野家とも我々とも繋がりのある因縁の日紙家について話をしたい。」
「日紙家に何が……?」
「日紙家は元々“火上(ひかみ)”家と呼ばれていて1700年辺りから今の日紙家となったのだ。火上宗丈(ひかみ・しょうじょう)こと日紙丈直(ひかみ・じょうちょく)は身分や身上(一身)などで人を見るのを嫌う純粋な方で彼の夫人も元々身分の高くない家柄であったという。病気や生まれつきの病状で働けない人達を助けたい思いから医者となり、治せない病気を治そうと日々努力されていたという。実家はドーリンやブルーサイドなどに土地を持つ大地主の家柄だが心は民と繋がっていたのだ……」
「そんな方の子孫とうちと一体何が……?」
「何がというがお前は5年前のあの事件を覚えていないのか!?」
「あの事件といいますと?」
「日紙家の一族9人が家に仕掛けられたダイナマイトで爆死した事件だよ。」
「あ……その……5年前は地元(関西)に戻っていて事件のことは知らなかったです……その時に周参見野一族の集まりにはいませんでしたし……」
「そうだったか。すまん、すまん。詳しく説明しよう。」
話をごまかしたはずだったのに英寛と西村の会話がいつのまにか日紙家の話に戻っていたのである。ちょうど5年前の頃は西村はヒナのいた世界に戻っていたために日紙直伸(起訴済)が起こしたダイナマイト事件(※1)を知らなかったのだ。
「あの事件は日紙直伸という男が親戚の集まる日紙家の住宅にダイナマイトを仕掛けて親族9人を爆死させた事件だ……」
「ひ、酷い!!」
「ああ……その事件の際に私の娘がそこにいたのだ……娘は12年前に日紙家に嫁いで幸せな生活をしていたのに当時5歳の一人娘を残して無念だったに違いない……」
「それで日紙家を憎むように……」
「それも当然だが、事件後にあの男(直伸)は殺すことを前提でしたと新聞記者に言っていたらしくそれを最近知ってからは怒りが収まらない……」
「僕も許せないです。でも同じ日紙家の方も被害者がいます。」
「分かっている……直露君(議員)らには罪が無いのは分かっている……だが、自分は『日紙』という名を聞くだけで怒りが沸き、もうその名をあまり聞きたくないのだよ……」
怒りを知った西村はそれからはブルーサイドの日紙家のことを口に出さないよう気を付けることにしたのである。
※1……第5章の『直伸拘束作戦⑦』から『あの日の事実②』の物語を参照。
「ところでスーザック村内に洲山野という地名がもう無いみたいですが……」
すると英寛はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの笑顔を見せたのである。
「ああ、洲山野集落はもう無い。周参見野家の先祖に嫁いだ女子が洲山野家唯一の子供だったからだ。」
「ということはもう跡継ぎが誰もいなかったのですね……」
「1618年あたりから洲山野氏は名声があったが数百年すると一族が減り、彼女の4代前が分家筋の女子と結ばれてからは本家筋しかなくなり、3代前が皇帝の王女と結ばれて2代前がアマウス王朝末裔の東口家の女子と結ばれても共に男子一人しか恵まれず、彼女の父親が当時は親交の深かった“日紙家”から母親を迎えても女子一人しか恵まれなかった。そしてその女子が周参見野家に入ったことから彼女の両親の死をもって洲山野家は途絶え、集落はスーザック村に完全に統一されたのだ。」
「だから“洲山野”という名前はなくなったのですね……僕の父方は庄屋の家柄とは聞いていましたが母方はこんな家系だとは知らなかった…………」
「本当に素晴らしい一族だったようだ。そして洲山野家とも我々とも繋がりのある因縁の日紙家について話をしたい。」
「日紙家に何が……?」
「日紙家は元々“火上(ひかみ)”家と呼ばれていて1700年辺りから今の日紙家となったのだ。火上宗丈(ひかみ・しょうじょう)こと日紙丈直(ひかみ・じょうちょく)は身分や身上(一身)などで人を見るのを嫌う純粋な方で彼の夫人も元々身分の高くない家柄であったという。病気や生まれつきの病状で働けない人達を助けたい思いから医者となり、治せない病気を治そうと日々努力されていたという。実家はドーリンやブルーサイドなどに土地を持つ大地主の家柄だが心は民と繋がっていたのだ……」
「そんな方の子孫とうちと一体何が……?」
「何がというがお前は5年前のあの事件を覚えていないのか!?」
「あの事件といいますと?」
「日紙家の一族9人が家に仕掛けられたダイナマイトで爆死した事件だよ。」
「あ……その……5年前は地元(関西)に戻っていて事件のことは知らなかったです……その時に周参見野一族の集まりにはいませんでしたし……」
「そうだったか。すまん、すまん。詳しく説明しよう。」
話をごまかしたはずだったのに英寛と西村の会話がいつのまにか日紙家の話に戻っていたのである。ちょうど5年前の頃は西村はヒナのいた世界に戻っていたために日紙直伸(起訴済)が起こしたダイナマイト事件(※1)を知らなかったのだ。
「あの事件は日紙直伸という男が親戚の集まる日紙家の住宅にダイナマイトを仕掛けて親族9人を爆死させた事件だ……」
「ひ、酷い!!」
「ああ……その事件の際に私の娘がそこにいたのだ……娘は12年前に日紙家に嫁いで幸せな生活をしていたのに当時5歳の一人娘を残して無念だったに違いない……」
「それで日紙家を憎むように……」
「それも当然だが、事件後にあの男(直伸)は殺すことを前提でしたと新聞記者に言っていたらしくそれを最近知ってからは怒りが収まらない……」
「僕も許せないです。でも同じ日紙家の方も被害者がいます。」
「分かっている……直露君(議員)らには罪が無いのは分かっている……だが、自分は『日紙』という名を聞くだけで怒りが沸き、もうその名をあまり聞きたくないのだよ……」
怒りを知った西村はそれからはブルーサイドの日紙家のことを口に出さないよう気を付けることにしたのである。
※1……第5章の『直伸拘束作戦⑦』から『あの日の事実②』の物語を参照。
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