ヒナの国造り

第１４章・日常へ戻る時

アディーマでの休息②

一方、ヒナはＭ、ファルル、キララ、将志の義妹、ルミ、リンの６人と同じ湯槽に浸かっていた。普通なら楽しい温泉旅と言えるがこの７人は対立している者同士であり、複雑なものがある。

「(いっそのこと静かにするわ……)」

ヒナはしっかりと黙って一言も発しなかった。すると周りも静かなのでヒナは安堵していた……が……

「ねえ、せっかく対立していた者同士が縁あってこうして集まっているのに静かにしても勿体ないわよ。」

そう言ったのはキララである。精神的に脆い子なのにこの発言はしっかりしていたのだ。

「そうね……なんの話をする？」

ルミもキララと同じ考えだったようだ。

「テーマは“初恋”にしない？」

突然ファルルがテーマを決めはじめたのである。だが、ヒナは恋愛経験がないので話が出来るか……？

「まずは私から！」

手を挙げたのはＭである。

「私が学生時代に『クルトン』の町から『キウイ国』の学校までに通っていた時……」

「え！？『クルトン』から『キウイ国』まで大分距離あるわよ！？」

「私はちゃんと交通手段があるから大丈夫だったわよ。」

早速ヒナにはついていけない展開に話が進んでいたが、皆が関係を忘れて盛り上がる姿が微笑ましかった。

「(よかった……みんなで盛り上がって……)」

Ｍは話を続けた。

「その『キウイ国』の学校のクラスメイトがイケメンでさ……いつも憧れていたのよ！！」

「わ、良いなあ！」

「それでちょっと誘ってみたのよ……『遊ぼう』って……」

Ｗの部下とは思えないＭの照れながらの表情を見て皆は話の展開にワクワクと期待を寄せていた。

「どうだったの？」

「ダメだったわ……“立場が違いすぎる”と言われたわ。」

「あちゃー」

もはや主婦の井戸端会議と変わらない彼女達のトークを見つめて笑顔のヒナである。ところが浴場に入ってきたある女性が険しい顔をしてヒナ達の元にやって来たのである。

「あなた達！！立場も違い、しかも敵対していた関係もあるのに何このじゃれ合いは！！？」

「わっ！あんたは！！」

「私は本名かどうかは皆の想像にお任せるわ。『ビスカイノゥ・ムゲントラ・スクラッチタイガー』と言うわ！！」

「あら！！大物しょ…………むぐっ！？」

ファルルが何か言おうとしたらスクラッチタイガーは口を塞いだのである。

「こら！今言ったら大変だわ！！あんたたち、自分の立場も忘れたの？」

「ちょっとあなた、誰か分からないけど敵味方、立場を無くして仲良くしているのに水を差すかのように邪魔しないでよ！！」

ヒナはスクラッチタイガーに激怒した。美貌を見せびらかすスクラッチタイガーだが性格は男勝りのようだ。