ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第15章・古座川町編

松原での目的①

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 河内松原駅に向かうために近鉄南大阪線のあべのばし駅から準急列車に乗車したヒナは不安と緊張感から席に座りながらうずくまるかのような体勢であった。


 「(緊張感……半端ないわ……)」


 すると電車は河内松原駅に到着したのである。電車を降りて改札口を通過するとある男性がいたのである。


 「やあ、はじめまして。」


 「はじめまして……」


 「猫屋敷さんでしょうか?」


 「は……はい。」


 どうやらヒナを迎えにきたようであった。だがヒナは誰か分からないので当然不安はあるようだ。


 「まさか……私の何が目的で……!?」


 「違いますよぉ!!僕達はそんな目的ありませんよ!!」


 どうやら怪しい人物では無さそうだ。ただ一つ気になることがあるので男性に質問したのである。


 「ところでこの目的は古座川と何らかの関係はありますでしょうか?無ければあまり関わりたく……」


 「あります。来ていただければ誠意を持って説明します。」


 男性は強気で言い切ったのである。ヒナは不安こそあれど彼の車に案内してもらい、乗車したのであった。


 「松原ははじめてですか?」


 運転しながら男性がヒナに質問したのである。ヒナは即答で“初めて”と言おうとしたのだが……


 「初めては初めてですけど……この光景何か見たことがあるような気がします。」


 「見たことがある?」


 「ええ…………」


 ヒナはすぐには思い出せなかったが、ある記憶を頭のなかに浮かべると何かを思い出したようである。


 「(これは…………『ロージーパイン』に似た光景だっ!!)」


 ヒナが思い出したのがロージーパインの光景だったのである。しかし結構似ているのでまた異世界へと帰ってきたのかと思ったのであった。


 「猫屋敷さんは異世界へと行かれたことがおありでしたか……」


 「ええ……」


 「僕も実は松原にずーっと住んでいますが生まれは“セレカムミニオン渓谷”です。ただ、異世界生まれと言えば変な目で見られるので“松原生まれの松原育ち”で通ってきました。」


 「え、異世界生まれの方ですか!?全然気がつきませんでした。」


 「分からないですよ、普通は。見た目は変わりませんし、特徴も人と変わりませんからね。ただ来た側の人はこの世界の空気にあまり馴染めないことが多いですねえ……僕も小さい頃はこの世界に違和感がありましたからね……今は大丈夫ですが。あら、到着しましたよ。」


 話をしていると気がつけば到着したようだ。着いたのは深居ふかい神社じんじゃから少し抱け離れた木造のアパートである。するとアパートの前に手を振る男性がいたのである。


 「おーい、はじめまして!!」


 どうやらヒナを松原に呼んだ人物のようである。ところがヒナは笑顔で迎える男性の姿を見て驚いたのである。彼はどう見てもどこかで会った顔だったからだ。


 「僕だよ、猫屋敷!!黒岡くろおか到摩とうまだよ!!」


 「到摩君!!」


 この黒岡という人物はヒナの高校時代のクラスメイトであった。地方から来て全く周りと馴染めなかった頃にヒナが声をかけてくれたことをきっかけに少し仲良くなったのであった。大阪出身とは聞いていないので知らなかったようであった。尚、彼の父方祖父は松原市一津屋の出身だが彼は松原市小川で生まれ育ったのである。



 …………黒岡くろおか到摩とうま

 ●1988年生まれ

 ●大阪府松原市出身

 ●趣味はカーレース、ボート、歴史の勉強。



 黒岡の案内で家に上がると古い家の割には本棚は綺麗で難しそうな本が並び、少し植物を育てているらしく元気に成長しているという。
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