ヒナの国造り

市川 雄一郎

文字の大きさ
435 / 762
第15章・古座川町編

松原での目的②

しおりを挟む
 黒岡宅で少しくつろぐヒナは二人で会話するのであった。基本は雑談などではあったが話をしていると高校時代の付き合いの影響か気が合うのか時間が経つのが早かったのである。


 「はははは……楽しいなあ、猫屋敷。君と会話していると時間を忘れるよ。」


 「ええ、私も楽しいわ。久しぶりにこうやって話をしていると時間があっという間に進むわね。」


 会話を楽しむ二人だが、黒岡の懐にはボイスレコーダーが隠されていたのである。


 「あ、君はこの辺の出身?」


 「私は和歌山の生まれだよ。確か到摩君はここの地元だったのね。」


 「ああ、ずっと松原で生まれて松原で育ったからね。この辺のことはかなり詳しいよ。またこっちに来たときは道案内してあげるよ……だけどね……」


 「?」


 黒岡の最後の言葉が少し気になったヒナである。そして黒岡はズボンの右ポケットから何らかの紙を取り出したのである。その紙をヒナに渡したのである。


 「君に渡したかったんだ。これだよ……読んで見るといい……」


 「ありがとう到摩君……どれどれ……?」


 『うら六国ろっこくの時代に東南の朝廷が現れた。これを機に国には二つの朝廷が生まれたのである。』


 『古代文書“某年記ぼうねんき”によるとある時代に車らしきものが降りてきたという。時期は浦氏の当主が置西ちせいの頃である。その車には二人の女性が乗っていたのである。』


 1枚の紙に謎が二つも記されていたのである。だがもちろん意味不明である。


 「(浦置西って誰かしら……?)」


 とりあえずヒナは松浦の元にメモ用紙を送るとある疑問が脳裏に浮かんだのである。


 「(それよりこの記録は誰が書いているのかしら?)」


 ヒナの言う通り、この記録はどこから出てきて誰が記しているのか……謎ばかりが深まる。


 「(一体何の記録かしら……?)」



 その頃、松浦はサトキの元に居たのである。そして二人で会話をしていたのだ。


 「サトッちゃん、あの『黒竜社こくりゅうしゃ』の『黒雲商事こくうんしょうじ』の件だけど……」


 「実は官僚の情報を掴んだんだよ、まっちゃん。官僚の中でナンバー2の福軌ふくき烈也れつやを始め、トップの日紙ひかみ直銅ちょくどうは知っているだろうが……実は幹部の一人に大東だいとうが居るらしいんだ。」


 「大東……?あいつが幹部!?」


 「ああ、そしてな……おっと、ヒナちゃんからまた何かのメモが届いているな。」


 松浦がメモを確認するとヒナにメール機能と思われるもので届いたことを報告したのである。ヒナの携帯電話(竜太からもらったやつ)の画面にメッセージが表示されたのである。


 『ヒナちゃん、ありがとう!!サトッちゃんに渡しておくからな。』


 メッセージを見て微笑むヒナだったが突然背後から送迎をした男性がハンマーで殴り、ヒナを気絶させたのである。


 「桃さん……ナイッス!!」


 「黒ちゃん、よく引っ張ってくれた!!あとは“黒雲商事の幹部”であるこの僕……樫木かしき桃太郎ももたろうに任せてくれよな…………」




 …………黒岡くろおか到摩とうま

 ●1988年生まれ

 ●大阪府松原市出身

 ●趣味はカーレース、ボート、歴史の勉強。



 …………樫木かしき桃太郎ももたろう

 ●旧姓和戸わと

 ●(異世界)セレカムミニオン渓谷出身

 ●黒雲商事・官僚の一人

 ●家族構成不明

 ●趣味はワンダーフォーゲル、旅行、テレビゲーム



 倒れているヒナを見て笑いが止まらない二人。そして桃太郎はニヤリと不気味な笑いを見せて言ったのである。


 「せっかくだからこの女を殺さないでちょっと遊んでみようか。」


 「良いねえ~!!」


 二人の魔の手がヒナに伸びる頃、松浦はサトキのオフィスでパソコンを見ていたのである。するとサトキに真剣な表情で話しかけたのである。


 「以前、洪水を起こした機械だけどこの世界から無くなっているみたいだ。どうやら福軌の野郎は異世界を彷徨うろついているみたいだな。しかも異世界からの通信を受けたんだけどある世界は大洪水で世界が水に沈んでいるらしい。」


 「何だと……!?あの野郎、ここを水浸しにするのに失敗したにも関わらずまだ懲りないで他の世界を沈めているのか……必ず居場所を暴いて倒さねばならんな!!」


 「サトッちゃん、電話だ……もしもし稲田いなださんですか?僕です松浦です。え……何だって!?」


 「どうしたの、まっちゃん!?」


 「サトッちゃん……異世界だけじゃないようだ………………!!」


 とある連絡を受け、顔が青ざめる松浦であった。その頃、尚徳は少し曇りがちな空を見て呟いたのである。


 「(ヒナちゃん……心配だな……)」


 その尚徳の不安は現実と化しそうになっていたのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...