ヒナの国造り

第１７章・ステラガーデン死刑台編

処刑台の二人

　一方、処刑台の上には剣を持った男性と恐らく死刑対象者を抑える役であろう男性が二人いたのである。


　剣を持った男性は【谷たに威宣たけのぶ】であり、『シュロ地区タージイン』の出身である。見た目は６０代の男性である。彼を見た死刑対象者の一人は呟く。


　「ああ、あれは谷威宣だな。父方祖父は元競輪選手で本人も競輪の道を目指していたのに母方の『太地護たいじもり家』に出入りする機会が増えてからおかしくなったと聞く。タージインはちょっと何かがある場所なだけに彼もタージイン色に染まったのかね。」


　すると別の人達が言う。


　「彼には確か鋼一という息子がいたよな。」


　「いた。確か今日は・・・少し前までいたはずだが居なくなってるぞ・・・」


　「どこへ行ったんだろう？」


　「そもそもあの二人ってちょっと違うよね？」


　「確かに違うな。」


　どうやら谷には息子がいるらしいがその息子がどこかへと行ったようである。


　「この辺りに確かいたからすぐに戦力外や粛清などはあり得ないはずだ。」


　「なぜだ？」


　話の焦点は谷からいつの間にか居なくなった息子に変わっていたのである。


　もう一人の押さえ付け担当らしき男性は【串本原くしもとはら多九郎たくろう】と言う。彼は『シュロ地区シクトーモ』の出身であり、父の跡を継いで地元の議長を務めていた人物であった。彼も６０代で母方はヒナの世界の出身という。


　「何で彼が・・・」


　「議長時代は清廉な人物だったのに・・・なぜグリーンウッドフィールドなんかと・・・」



　しかしヒナは呟いた。


　「(違うわ・・・あの人達は騙されている。もしかしたらグリーンウッドフィールド・・・だっけ・・・その人に洗脳されているのかもしれない・・・！！)」


　するとヒナの背後から聞き覚えのある声が聞こえたのである。


　「きみぃ・・・ネタバレしたらつまらないよね・・・？」


　「あなたは！？」


　ヒナが振り向くと誰もいなかったのであった。不気味に感じたヒナはうつ向いて黙りこんだ。


　「(あの声・・・古座川かどこかで・・・)」


　ヒナの耳に聴こえたのは聞き覚えがある声のようだった。