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第十二話 愛と友情
しおりを挟む顔を上げたところに見えるオフィスのドアが、突然開いた。顔を出したのは、少し乱れた田舎くさい重めの髪ーー現れたのは、星垣さんだった。眉を下げて、不安そうな目で薄暗いオフィスをぐるりと見渡した後、彼のデスクに突っ伏す私を見つけて驚愕の声をあげた。
「えっ!?しずくさん!?」
彼の声を聞いて、藻沼は私の秘所をいじるのをやめた。藻沼は素早く私の捲り上がったスカートを撫でつけ、ポケットに何かを入れた。
立ち上がった藻沼を見て星垣さんの目は大きく開き、体を石に変えられたかのように硬直させた。
「星垣さん……ちょうど良かった」
「ミツル、お前……何してるんだ!?」
「助けて星垣さん!!」
私は絶叫した。
「助けて……一人で残業してたら、急にこの人に声をかけられて……断ったら星垣さんに嫉妬し出して、押し倒されたんです……」
「えっ……ミツルが……?」
星垣さんはおろおろと、私と藻沼を交互に見た。
「早く……!手を縛られてるんです。お願い解いて…!!」
涙を流して星垣さんに訴えると、彼は弾かれたように慌てて近づいてきた。
「嘘だろ……?ミツルがしずくさんにこんなこと……」
デスクの前に立ち、結束バンドで拘束されている私の手首まで手を伸ばす。星垣さんの手は震えていた。
彼が来てくれて、良かった。これで、星垣さんは藻沼と決別するだろう。あとは二人で会社に訴えて、追放すればいい。私は脱力した頭で勝利を確信した。封印されるのは藻沼、あんただ。
しかし星垣さんの指が結束バンドに触れた時、後ろからそれを穏やかに制止する声が聞こえた。
「星垣さん。あなたはこれを取りに、ここへ戻って来たのではないですか」
藻沼は私のスカートのポケットに手を入れた。星垣さんに見せつけるようにゆっくりと、先ほど入れた何かを取り出す。
「お、俺の財布……」
「え……」
藻沼はデスクの前に回り込み、星垣さんに小さな折り畳み財布を手渡した。私の秘部を舐め回していた口元は、何事もなかったかのように黒いマスクに覆われている。
「桑折さんは、あなたの引き出しを漁っていました。それを見つけて咎めたところ暴れだしたため、仕方なくこのような措置をとったのです」
「な、何言ってるんですか!?財布なんか盗ってません!!」
「ミツル……しずくさんはやってないって言ってるじゃないか……お前も、彼女のこと好きだったのか……?」
困惑する星垣さんの横に立ち、私の手首を掴む。
「星垣さん。まだ分かりませんか。この女はこういう人間なのです。優しくすればどんな要求にも応じる、簡単に手玉にとれる獲物とみなして、好意を利用するような女です」
「まさか……しずくさんは俺の話を楽しそうに聞いてくれた」
「覚えていませんか?あなた、桑折さんの噂を聞きつけたとき、笑っていたじゃないですか。彼女に声をかけられてすぐ夢中になった小野丸さんを見て、『俺は騙されない』と言っていたではありませんか。まさか、自分の事だけは本気で愛してくれると思っていたのですか?」
「……!」
星垣さんは、私から目を逸らした。結束バンドから少しずつ手が離れていく。
「星垣さん!」
「だから、言ったのです。この女だけはやめた方がいいと。いつも私の助言に従うのに、なぜ今回に限って聞かなかったのですか?やはりあなたに物事を一人で判断する力はない。だから私はあなたを守りたかった。こうなる前にね」
「藻沼っ!嘘つかないでよ!!星垣さん、とにかくまずは外してください、藻沼は嘘をついていますからっ……!」
二人に見下ろされるこの状況に耐えきれない。
「あなたは今日彼女に告白すると私に打ち明けてくれましたね。でも、彼女は待ち合わせ場所に現れなかった。それが答えだと思いませんか?」
「違うっ!!私は行こうとしました。仕事が終わらなかったんです。私はちゃんと、星垣さんの話を聞こうとしていました!」
私と藻沼の食い違う主張が星垣さんにぶつかる。星垣さんは今、友情と恋愛の間で、揺れているのだろう。私はこの男を、こちら側に引き寄せなければならない。
「あ……俺はどうしたら……」
「星垣さん、私を信じて!藻沼はヤバい男なの!!あなたとの友情より欲望を優先する卑劣な変態なのよ!」
私は手首をデスクにたたきつけ、注意を向ける。お願い私を信じると言って、私の事が、好きなんでしょ!?必死な私と対照的に、藻沼は極めて落ち着いた声で諭した。
「お任せしますよ。何も悩むことはありません。成功体験に基づいて選択するべきです。いつもあなたを導いていた者は誰でしたか。いつも通り、あなたが信じられる道を選ぶことです」
長い長い数秒間の沈黙が流れた。
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