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その後①強制告白
振り回されている内に
しおりを挟む私は怒りに震えた。でもさっき、力任せに投げつけた魔力の塊さえも軽く弾かれてしまった。最近練習出来ていないから、当然かもしれない。
どういう事?帰ったら、問い詰めてやる。いつもはハヤトのホウキの後ろに乗って二人乗りで向かう彼の小屋に、初めて一人で帰る。ゴブリンが辺りをうろつく森の中だけど、今ははらわたが煮えくり返っているから怖くない。場所はもう覚えているし、自分のホウキで真っ直ぐに目指した。
思い切りドアを開けて中を確認するが、ハヤトはまだ帰ってきていなかった。早くこの怒りを直接ぶつけたいのに……!!
カバンを放り投げて、彼のベッドの枕を殴りつけて、彼の帰宅を待つ。ハヤトが帰ってきたら。帰ってきたら。帰って、来たら…………
そこで私はハッと我に返る。あれ?私、何してるの?どうしてここにいるの!?魔法をかけられてもいないし、彼に捕まってもいないのに、一人でここに帰ってきちゃったの!?
逃げるチャンスだったのでは?ハヤトの態度なんてどうでもいいじゃない。ハヤトの目的が分からなくても、逃げられさえすればそれでいいはずだ。それなのに私は一人、彼の小屋で大人しく彼の帰りを待っている。
カバンを拾い、慌てて玄関へ向かう。ドアをひねるが、動かない。内側からは開かないように魔法がかけられているのかもしれない。しまった…………!
無駄だと分かっていてもガチャガチャと動かそうとする。私はなんて馬鹿なんだろう。うんざりしているのに、この生活に慣れ始めてきてしまっている。この様子じゃ窓も開かない。バカ、バカと自分を罵りながら奮闘していると、急に何のブレーキもなくドアノブが動く。そして突然ガチャリと開いたドアから、ハヤトが顔を出した。
「オリビア、いたんだ!ただいま……!!」
ハヤトは私を見るなり荷物を手放し、私を強く抱き寄せた。
「ちょっと……やめて!私は怒っているの!なんなのよ今日のあの態度は!?どういうつもりよ!!」
彼の腕の中でもがきながら、大声で捲し立てる。
「ごめんね……!つい意地悪したくなっちゃった。僕に翻弄されるオリビアが可愛くて……でも、凄く嬉しかったよ」
私をなだめるように背中をさすり、私の頭に頬ずりする。
「何よそれ!私はあなたのおもちゃじゃないのよ!しかも私の友達を見せつけるようにそばにおいて……いい加減にしてよ!!」
「気付いてくれたんだ。オリビアは僕のいたずらに全部反応してくれるね。そういう所が好きだなぁ」
「うるさい!私で遊ぶのやめ……んむっ」
顎を持ち上げられて強制的に口を塞がれる。ハヤトは眉を下げ、喜びをたたえた瞳で私を見つめながら、何度も角度を変えて私の唇をついばむ。
「ん……っ、やめて!」
「オリビアの唇、柔らかいね。もっとキスさせて」
「いや!もう離して!私はあなたの事なんか好きじゃない!!」
「好きだって言ってくれたじゃないか」
ハヤトの胸を力いっぱい押すがびくともしない。嬉しそうに被さられ、また唇を塞がれる。ようやく離れたと思ったら、今度は私の膝裏に腕を差し込み、ひょいと私を抱えて小屋の奥にあるベッドへ運ぶ。
「やめてってば!!帰してよ!!」
「帰る?君の家はここだよ。自分でここに帰ってきてくれたんだろ。嬉しいよ。可愛いなぁ、僕の事そんなに好きなんだね」
「うっ……違う!間違えたの!!」
痛いところを突かれて焦る。なんなの、この変わりようは?
「オリビアが怒って震えてたの凄く可愛かった。興奮したよ。あれだけでイキそうになった。でも今度こそOKするから、また挑戦してよ」
「嫌だ!!もう絶対しない!!」
「機嫌直して。僕もちゃんと大好きだから」
片手で私の両腕を軽々とまとめ、空いた手で私の襟のボタンをプチプチと外す。私はこれからの行為に怯え、逃れようと暴れて手足をジタバタさせるが、ハヤトは体を密着させて私を押さえつける。
でも、夢中で私を求めてくるハヤトを見て、私は信じられない事に少しだけ安心してしまっていた。
まずい。どうしよう。心まで支配されたらいけないのに、学校で冷たい視線を浴び続けている私は優しさに飢えていた。それもハヤトのせいだというのに。
逃げたい。もう解放して欲しい。そう思っているのにいつもより抵抗の弱い私に、ハヤトはニヤリと笑いかけた。
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