新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~

ネコ軍団

文字の大きさ
143 / 303
第3章 灼熱の砂海を渡る一輪の花

第143話 良い人いないかな

しおりを挟む
 歩き出してすぐにキティルがふと振り向いた。グレンが立ち止まってランタンで天井を照らしている。投げたせいでランタンの持ち手が少しだけ歪んでいる。

「どうしたんですか?」

 キティルがグレンに声をかけている。天井を見ていたグレンが彼女に視線を向けた。

「足跡を見てたんだ。出て来たのは二匹だろ…… それにしちゃあ多いなって」
「えっ!?」

 ランタンを再度かざして照らしグレンが天井を指をさす。キティルは彼が指した先に視線をむけるとリザードマンの足跡がたくさん残っている。長い間放置されていたドラゴンスローン洞窟は床や天井や壁に誇りや砂がたまっており手足の後が残りやすい。数を見れば明らかに二匹では足りない数だった。ただ、キティルは首をかしげた。

「でも、それってここの洞窟を何度も往復してれば増えるんじゃ……」

 キティルの言う通りでリザードマンが移動を繰り返せば足跡の数は増える。もっともな指摘を受けたグレンは指先をそっと動かす。

「まぁそうだけどな。あれを見ろ」

 グレンが新たな場所を指した。キティルの視線がまた彼の指す先へと移動した。

「えっ!? すごい大きいですね」
「だろ? 他のやつらの倍くらいある…… さすがにあれはさっきの奴らとは違う。おそらくは……」

 ランタンに照らされた天井に大きなリザードマンの足跡があり、明らかにさきほど対峙した二匹のものではなかった。
 
「キングリザードですね」

 クレアの声が聞こえた。少し先で彼女も立ち止まり、二人と同じように天井をランタンで照らしていた。キングリザードはリザードマンの群れを束ねるボスのような存在で体が大きく通常のリザードマンの個体よりも強い。

「群れのボスがいるってことは本格的にここにお引っ越しをしたんでしょうね」

 真剣な表情で天井を見つめるクレアの鼻先をランタンの灯りが照らす。グレンは天井を見ながらつぶやく。

「住み着きやがったか…… 危険だしぶっ潰しとくか!」
「ダメですよ。また、ワルッカさんに苦情が行くじゃないですか」

 キングリザードを討伐する気満々だったグレンをクレアが止めた。

「でっでもさ。仕事中に偶然遭遇したから…… これはあくまで……」
「キッ!」

 食い下がろうとするグレンを睨むクレアだった。睨まれたグレンは顔をしかめて不満げにする。クレアはさらに言葉を続ける。

「今日の目的はキティルさんに絵を見せることです。魔物の討伐は別途冒険者さんへ依頼しますよ」
「わかったよ。はぁ…… !?」

 グレンは頭をかく仕草をしながら首を横に振った。クレアはグレンを見て小さくうなずきにやりと笑い彼の横に来て肘でつつく。クレアに視線を向けたグレンに彼女は顎で前を指す。前にはランタンで天井を照らしているキティルの姿が見えた。
 ハッとしたグレンは笑顔でうなずく。グレンを見たクレアは笑顔で口を開く。
 
「あーあ。冒険者さんが近くにいればお願いできるんですけどねぇ。ついでにサポートって形で私達が……」
「おいおい。義姉ちゃん! そんなに都合よく。冒険者なんかいるかよ。ここは砂海の真ん中にある洞窟だぜ!」
「あぁ!! そうでしたね……」

 二人はわざと大声で話して会話をキティルに聞かせるようにしていた。会話を聞いたキティルは二人に顔を向ける。グレンとクレアは顔を背けしてやったりという顔をした。二人に気づかずにキティルは静かに手をあげた。

「あっあの! 私…… 冒険者ですが……」
「だよな!」
「ふふふふっ! じゃあこちらへ」
「えっ!?」

 手をあげ自分が冒険者だと言った直後にグレンとクレアの二人はニヤリと笑った。二人はキティルを挟むようにして洞窟の壁際へと連れて行く。壁際にクレアを立たせた、グレンとクレアの二人は彼女の前に並んで立つ

「なっなにを!?」
「大丈夫。任せておけ! 義姉ちゃん! 頼む」
「はーい」

 鞄に手を入れたクレアは一枚の紙を引っ張り出した。彼女はキティルの前に紙を差し出して見せる。

「こっこれは?」
「緊急依頼書ですよ。簡単に言うとこの紙を使えば冒険者さんにその場で依頼を発行することができるんです」
「へぇ…… そんなものがあるんですね」

 優しくほほ笑むクレアだった。キティルはジッと書類を見つめる。緊急依頼書は急な魔物襲来などで正規な依頼を発行できなかった場合に使う書類である。以前は口頭で指示をして緊急な仕事を冒険者にさせていたが、報酬が話と違ったりとトラブルが多く緊急時でも契約書を交わすことになった。

「誰でも使えるわけじゃないですよ」
「そうそう。冒険者ギルドの受付担当だけなんだ」
「えっ!? じゃあなんでクレアさんが?」
「義姉ちゃんは課長だし受付にもヘルプで入ったりするからな」

 得意げにうなずくクレアに不思議そうにするキティルだった。クレアは人手が足りない時は受付にヘルプで入ることもある。なお、同じ支援課にいるハモンドも受付のヘルプにはいることはあるが、グレンは接客試験に合格してないため受付業務はできない。

「じゃあ今からキティルさんにキングリザードの討伐を依頼します」
「えっ!? でも私だけじゃ」
「大丈夫。もちろん俺と義姉ちゃんもちゃんと補助するからさ」
「はぁ」

 胸を叩くグレンにクレアは少し不安そうにうなずくのだった。クレアは自分の職員証を依頼書にかざす。職員証から一筋に光が出て依頼書に届く。
 
「名称はキングリザード…… 報酬は八百ペルに緊急手当てプラス二百ペルと…… えっと冒険者ランクはB2でしたよね?」
「はい」

 職員証の光がクレアの言葉に反応し強く光る。光は依頼書に空欄を埋めて文字を書き込んでいく。最後に担当冒険者の名前だけが空欄で残る。

「じゃあ最後に冒険者の指輪をかざしてください」
「はい」

 キティルは首にかけていた指輪を依頼書にかざす。彼女の名前が空欄に書き込まれたが、その横に小さくに黄色に文字が表示された。クレアは依頼書を見て首をかしげる。

「あら!? 警告…… 仮名キティルパーティ? あぁ! そうか。パーティ名がまだ決まってないですね」
「ごっごめんなさい。四人の意見がバラバラでなかなか決まらなくて……」

 クレアに向かって謝るキティルだった。冒険者が三人以上で行動をする場合はパーティとみなされ冒険者ギルドでパーティの名前を登録する必要があるのだ。キティル達は四人なので冒険者パーティの名前を登録する必要があるのだが、名付けでもめておりまだ決まっていなかった。

「この間もサウンドロックで仕事を受けたらタミーさんって人に注意されて……」
「あぁ。あいつ真面目だもんな。仮名だと記録が煩雑になるしなるべく早く頼むな」
「はっはい……」

 キティルの肩を叩くグレン、彼女はしょんぼりとうつむくのだった。クレアは依頼書を鞄にしまうと道の先を指した。

「よし。じゃあこれでキングリザードに遭遇して討伐しても問題ありませんね」
「おぉ。行こうぜ」
「はい」

 三人は洞窟のさらに奥へと進むのだった。しかし、リザードマンの襲撃はなく目的地である絵が描かれた部屋へと三人は到着した。

「義姉ちゃん…… こんなに暗かったっけ?」
「いいえ…… もう少し明るかったですね」

 部屋の入口に立って中を見ながら話す真剣な表情で話す二人をキティルは心配そうに見つめていた。

「確かリザードマンって…… 巣を暗くする習性がありましたよね」
「あぁ。暗い場所でも見える目を持っているからな」
「間違いなく巣になってますね。グレン君、キティルさん。気をつけて進みましょう」

 キティルとグレンはクレアの言葉に大きくうなずいた。真っ暗な部屋へ三人はクレアを先頭に足を踏み入れるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...