新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~

ネコ軍団

文字の大きさ
236 / 304
第4章 深い森に迷う二人の姉

第236話 無言の連携

しおりを挟む
 深層の大森林ディープフォレストの北にあるフォレストワールへと向かう列車。
 音を立てて揺れる車内でグレンが座席から、見る窓の風景が後方へと流れていく。青々とした木々の先端が赤く染まり始めていた。
 向かい合う四人掛けの席にクレアとグレンが並んで座り、向かいにジャスミンが一人で座っている。福音派のレナードとの話し合いを終えた、グレンとクレアの二人はジャスミンと一緒に駅へ向かいフォレストワール行きの列車に乗っていた。
 窓際に座りの景色を眺めているクレアにグレンが声をかける。

「さすがにフォレストワールは木の町じゃねえよな」
「はい…… うーん。でも……」

 首をかしげて顎に手を置きクレアはやや難しい顔で天井を見ていた。二人の様子を見ていたジャスミンは吹き出すように微笑み口を開いた。

「ふふふ。そっそうでござるな。木のに町はないでござるね……」
「そうですよね……」
「なっなんだ!? やっぱり普通の町じゃないのか?」

 二人の会話に首をかしげるグレンにクレアは笑顔で答える。

「まぁ着いてからのお楽しみってことですよ」
「はぁ…… そうですか」

 不思議な顔をしているグレンにほほ笑むクレアとジャスミンだった。その時……
 グウキュルルルーという音が響いた。音を聞いたグレンが顔をしかめクレアを見た。

「なっ!? 義姉ちゃん! もう…… 腹減ったのか? 時間あったから一緒に昼飯を食ったろ?」
「えっ!? わっ私じゃないですよ!!!! 失礼な! そっそれに……」

 響いた音がクレアが腹を空かして鳴らすという、グレンに彼女は必死に違うと否定していた。ただ、クレアは気まずそうに膝に乗せていた、鞄をそっとグレンから遠ざけ隠すように前かがみなり覆いかぶさるようにした。
 実はクレアの鞄の中にはグレンに内緒で買ったメープル味のクッキーが入っている。
 
「めっ面目ない…… せっ拙者でござる……」
「「へっ!?」」

 音が鳴ってからうつむいていたジャスミンが右手を上げ恥ずかしそうに顔を上げた。向かいに座っていたグレンとクレアが同時にジャスミンを見ると、彼女は頬を赤くしてまたうつむいてしまった。

「えっえっと…… 何か食べる物を…… そうだ!!」

 クレアは鞄を開けて布の包を取り出した。包の中には五枚のクッキーが入っており、彼女はジャスミンにクッキーを差し出す。

「こっこれは……」
「メープルクッキーですよ。おやつに買ったんですよ。一緒に食べましょう」
「えぇ!? 良いのでござるか?」

 ジャスミンに向かって優しくほほ笑みクレアがうなずいた。嬉しそうにジャスミンはクレアのクッキーに手を伸ばした。

「やった! かたじけない」
「召し上がれ」
「うーん! 美味でござる!!」

 クッキーを一口かじり頬を押さえて嬉しそうに笑うジャスミンだった。クレアも彼女に続いてクッキーを自分の口へと運んでいた。
 クッキーを頬張るクレアをやや冷めた目でグレンが見つめている。

「いっいつの間に…… まったく人には一緒の思い出だとか抜かしてて。一人だけ抜け駆けかよ……」
「だっだって…… ごめんなさい。美味しそうだったんだもん……」
「フン」

 腕を組んでグレンはそっぽを向いた。だが…… 彼の口元がわずかににやけていた。グレンの手が自分のコートの懐へと伸びていく。
 クレアとジャスミンは気まずいのかグレンの方を向かずにクッキーを食べていた。

「うん…… なんかいい匂いがするでござるよ……」
「えっ!? 本当だ…… グレン君!!!!」

 ジャスミンの言葉に横を向いたクレアが声をあげた。横でグレンがフカフカのパンの間に、野菜とチーズと魚の切り身にエビが挟んで上から黄色いソースがかかったサンドイッチにかぶりついていた。

「なっなにを食べてるんですか!」
「えっ!? もぐもぐ…… ゆでた川エビと魚の塩漬けとチーズのマスタードソースサンドだけど…… うまああああ」

 とぼけた顔でサンドイッチに食べたグレンだった。サンドイッチはかなりの美味だったのか、グレンは笑顔で頬を押さえ満足げに口を動かしていた。
 クレアが前を向くとジャスミンと目があった。二人はどちらかともなくうなずいた。

「あーん」

 ニコニコと笑いながら大きな口を開け、再度グレンはサンドイッチにかぶりつこうとした。そこへすっと手が伸びて来た。伸びて来た手がグレンの手首をつかみ、サンドイッチが彼の口に運ばれるのを防いだ。

「へっ!?」

 いきなり手を掴まれたグレンは目を寄せやや間抜けな顔で、口の直前で止まったサンドイッチを見つめていた。

「今です! ジャスミンさん!」
「承知!!」
「あっ! こら!」
「無駄ですよ」

 ジャスミンが立ちあがりグレンの手からサンドイッチをひったくった。慌ててジャスミンを追いかけ立ち上がろうとするグレンだったが、クレアが彼の肩へと手をかけ押さえこんだ。

「クソ! あぁ……」

 押さえ込んで来たクレアの肩越しに向かいに座ったジャスミンが、サンドイッチにかぶりつく光景がグレンに見えた。

「うーん。美味でござる…… はい。クレアさん」
「あーん」

 ジャスミンがニコニコと笑ってサンドイッチをクレアの口元へ持って行くく。グレンを押さえながら器用に振り向いて口を開けるクレアだった。グレンから奪い取ったサンドイッチをクレアの口へとジャスミンが運ぶ。クレアはサンドイッチにかぶりついた。

「もぐもぐ…… うまああああああああ!!!」
「ふふふ」

 一口食べてグレンと同じ反応をするクレアを見てジャスミンは笑顔になっていた。

「もぐもぐ。こんな美味ひいもの…… もぐもぐ…… 独り占めにするなんて…… グレン君…… 最低です…… もぐもぐ」
「あぁ! もう! 食うかしゃべるかどっちかにしろ! それやるから!」
「もぐもぐ…… にこ!」

 食べながら説教する義姉に義弟はあきれ、そこまでしてほしいならとサンドイッチを差し出すのだった。クレアは口を動かしながらグレンに向かってにっこりと微笑むのだった。グレンが買ったサンドイッチは大半がジャスミンとクレアの胃袋におさまった。
 ガタガタと揺れながら汽車は北へと進んでいく。森は徐々に秋が深まっていき、窓の外は緑から赤や黄色へと変わっていく。やがて外の景色が暗くなり、木に止まる野生の天灯虫てんとうちゅうの光がぽつぽつと見えるだけになっていった。

「そろそろフォレストワールですね」

 窓を見ながらクレアはつぶやいた。動く窓の風景が徐々に遅くなってなっていった。デオデフの木ほどではないが幹が太く高い木が並ぶ、森のど真ん中に汽車は停まった。

「終点フォレストワールです。」

 車掌が客車を歩きながら乗客に呼びかけていく。

「フォレストワールに着きましたね。行きましょう」

 窓の景色を見ていたクレアが振り向き、グレンとジャスミンに声をかけ笑顔で立ち上がる。外を見たグレンは真っ暗でわずかに森が見えるだけで家も何もない光景に首をかしげた。

「着いたって…… ここがフォレストワールなのか……」
「えぇ。そうですよ。ほら行きますよ」

 グレンの手を取って客者の出口を指して微笑むクレアだった。グレンはクレアの手を引かれ客車を降り、二人の後からジャスミンが続く。
 ホームに立ったグレンは周囲を見渡して首をかしげる。客車の外には木製のホームと大きな駅舎があるだけだった。
駅の周囲には背の高い木が立った深い森があるだけだった。

「ここがフォレストワールのなのか? ただの森じゃないか?」

 不思議な顔でまた首をかしげるグレンにクレアが顔を向けた。

「いえフォレストワールですよ。上を見てください」

 ニコッとほほ笑んでクレアは木の上を指した。グレンは顔をあげ彼女の指した方角に視線を向けるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。 そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。 30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。 カクヨムで先行投稿中 タイトル名が少し違います。 魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~ https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...