新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~

ネコ軍団

文字の大きさ
237 / 304
第4章 深い森に迷う二人の姉

第237話 森の町フォレストワール

しおりを挟む
「木に家が…… くっついてる……」

 グレンが目を見開いて驚いている。幹の太い高い木の中ほどに建物が築かれていた。一つの木の幹に上下に建物が三つから二つ建てられ、木と木の間は手すりのついた通路でつながっていた。夜を迎え暗かったが家や通路に置かれた天灯虫てんとうちゅうが入った籠が町を照らしている。
 驚くグレンにクレアは得意げな顔で口を開く。

「この辺は寒くてデオデフの木が育たないんです。代わりに丈夫で頑丈なキングパインの木に家を作っています」
「へぇ…… だから木の中に町はないって言ってたのか」

 列車の中での会話を思い出すグレンにクレアは優しくほほ笑む。ここフォレストワールはキングパインという巨木の上に家を作り生活していた。

「ふふ。ウィンターツリー魔法王国では木の上に家を作るのは珍しくないんですけどね」
「そういや…… 前にハモンド君がそんなこと言ってたな。地面に家があると変な感じだって……」

 ハモンドの故郷ウィンターツリー魔法王国では、フォレストワールのように家に木を作ることは珍しくない。むしろ女王が住む城はディープスグランに近く木の空洞を削って作られディープスグランの町に近かった。

「さて今日の宿はどうしましょうかね…… ここは商人さんが森の薬草を仕入れたりするので宿はたくさんありますが……」

 木の上に建てられた家を見つめるクレアだった。彼女は今日の宿泊する宿をどこにするか悩んでいた。
 
「大丈夫でござる。ここにも冒険者ギルドで借りている部屋があるでござるよ」
「また誰かが殺されたとかはやめろよ」
「ほほほほ」

 口元に手を当ててごまかすように笑うジャスミンをグレンは目を細め疑った顔で見つめていた。

「じゃあこちらでござる」

 駅舎を指してジャスミンはグレン達を外へと連れて行く。ジャスミンの先導で駅舎から出たグレン達は大きな木の下へと向かう。
 幹に巻き付くように螺旋階段が作られていた。ジャスミンは木の上を指し階段を上りグレンとクレアは彼女に続く。

「フォレストワールは木の上に出来た町でござる。梯子や階段は魔物や盗賊の襲撃などがあればすぐに壊せるようになっているでござるよ」
「ほぉ」

 ジャスミンは階段の手すりに手をおき上りながらグレンに町について説明している。グレンは彼女の話を興味深げに聞いていた。
 階段を上った先は木の幹を中心に円形に作られた広い床が作られていた。床の上に円形に屋台が並んで市場になっていた。幹を中心に並ぶ屋台とそれを囲むように外側に屋台が向かい合わせにあり、食糧や武器など様々な物が売られていた。夜を迎えても市場は人が多く賑わっていた。

「すごい人だな……」
「ここは中央市場でござる。フォレストワールの中心地でござるよ」
「へぇ」
「あっちが教会であちらが冒険者ギルドの出張所でござる」

 ジャスミンが市場の東と北を指していく。中央市場の東側に教会があり、北側に冒険者ギルドの出張所がある。

「でっ本日の宿はこちらでござる」

 西側を指してジャスミンが歩き出した。グレンとクレアは彼女の後を歩いて行く。

「未開地域が広がるフォレストワール近隣の森は薬草やキノコなどの植物の宝庫でござる。特に有名ななのはフォレストベリーで……」

 ジャスミンは市場を歩きながら話しているいる。フォレストワールは森で取れる薬草や魔物毛皮や主な産業である。特に豊富なキノコな草花は錬金術や魔法道具や薬の材料になり取引は盛んで小さな町であるで賑わっている。また貴重な自生する木の実などを管理し高値取引したりもしていた。

「すごい…… この町にも詳しいんだな」
「ははっ。大樹案内人ツリーフェアリーをやっていると深層の大森林ディープフォレストの各町について聞かれることが多いでござるからな」

 グレンが感心すると得意げに話すジャスミンだった。

「あっそうそう。宿で夕食も出るでござるが…… 近くの”芽吹く食欲”という食堂のフォレストベリーのパイは絶品でござるよ」
「おお! それはぜひ! 行きましょう!」

 振り向いて話していたジャスミンの言葉にクレアは目を輝かせていた。中央市場から木と木の間を結ぶ道を歩く。グレンは景色を見ながらふと口を開いた。

「そういや…… キティル達もこの辺に来ているはずだよな……」
「はい。遺跡が指示したのはここから少し北でしたからね」

 モニー浮遊島で見たエリィの反応は深層の大森林ディープフォレストの北であった。

「後でどこにいるか確認して少し話を聞いても良いかもですね……」
「えっ!? なんで……」
「いえ…… ちょっと気になったので……」

 顎に手を置いて真剣な顔をするクレア、グレンは彼女を見ながら首をかしげていた。クレアは一瞬だけ視線を上げジャスミンの背中を見た。
 歩道を進んだ三人にきの中腹の立つ二階建ての細長い建物が見えて来た。木に巻き付くように作られた建物で窓がたくさん並んでいた。

「着いたでござる! 今日の宿”蛇のねぐら”です」

 細長い建物は”蛇のねぐら”というジャスミンが手配した宿だった。扉の前に立ってグレンとクレアに向かって宿を指して嬉しそうに笑うジャスミンだった。
 彼女は慣れた様子で扉を開けて中へ入った。扉の向こうは右手にカウンターで奥には上下に向かう階段があり、カウンターのすぐ奥の左右には廊下が左右へと伸びていた。

「いらっしゃい。いつもありがとうございます」
「こちらこそ急に部屋を用意してもらって……」
「大丈夫です。じゃあこれ…… 百十一号室ですね」
「了解でござる」

 カウンターには若い金髪の肩まで髪を伸ばしたエルフの男性がおりジャスミンを見て声をかけて来た。彼は慣れた様子で彼女に鍵を渡した。三人が泊まるのは一階の百十一号室だという。
 ジャスミンはカウンターの奥の廊下を右に進む。

「この建物は木に巻き付いてほぼ円形でござるからな。我々の部屋は一番奥にあるので入り口の廊下どっちを進んでも距離はかわらないでござる」

 廊下を歩きながらジャスミンはクレアとグレンに話をしていた。この宿は木の幹に沿って出来たほぼ円形の形をした宿で一階と二階に廊下を挟んで十二の部屋が用意されている。湾曲した廊下には左右に部屋へと続く扉が向かい合わせに並んでいる。

「ここでござるな」

 先を歩いていたジャスミンがとある部屋の前で立ち止まった。彼女は左手にある部屋へと体を向けた。カウンターでもらった鍵でジャスミンは扉を開けた。彼女の背後にそっとグレンが忍び寄る。

「また間違えてないだろうな?」
「ちゃんと鍵で扉が開いたでござろう!!!」

 扉を指して頬を赤くするジャスミンにグレンは舌を出して笑っていた。ムッとした顔でグレンを睨んでからジャスミンは扉を開けた。

「どうぞ……」

 扉を開けたジャスミンは二人を部屋の中へとうながす。ジャスミンの横を通ってグレンとクレアは部屋の中へと進む。

「ここも広いな……」
「ですねぇ……」

 ディープスグランの宿と違い高級そうな装飾はないが、部屋は広間に寝室が二つもありかなり広かった。広間は左手に寝室へ続く扉が並び、右手は壁で棚などが置かれ奥にはカーテンが閉められた大きな窓がある。

「ここも何か理由があって冒険者ギルドで借りられるのか?」
「向かいの部屋の方が広いのもあるでござるが…… 部屋が入り口から遠いのともう一つはあれでござる」
「うん!?」

 ジャスミンは広間の奥の壁にある窓を指した。窓は入り口とちょうど向かい合わせるような位置にある。クレアとグレンは首をかしげて窓に近づく。窓は大きく扉のようで四角いカーテンで外が見えなくなっていた。グレンはカーテンに手をかけ開けた。

「なるほど……」
「景色が悪いからですね……」

 カーテンを開けるとそこには小さなバルコニーがある。ただ、バルコニーの向こう側は巨木だった。この部屋は宿の巨木側にある部屋で景色が見えないのだ。

「観光客には評判が悪くて人気がない部屋なんです。でも……」
「うん!?」

 ジャスミンがやってきて話しながら窓をあけバルコニーに出た。彼女はバルコニーの手すりの前で体をかがめ頭を外にだして上を指した。グレン達もバルコニーへ出て彼女の横に同じようにして指した空を見上げる。巨木の張り出した枝がグレンとクレアの視界に入る。

「おぉ…… これはなかなか」
「魔導ゴンドラで見たのと一緒ですね」

 バルコニー巨木の枝に停まった天灯虫てんとうちゅうが光り、木に光の実がなっているような光景が出来ていた。グレンとクレアは光る木を見て自然と顔がほころんだ。

「ちょうど満月が上にくるとさらに綺麗になるでござるよ。だから私はこの部屋を気に入っているでござる」

 木を見上げる二人の横でジャスミンが視線を空に向けて笑うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。 そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。 30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。 カクヨムで先行投稿中 タイトル名が少し違います。 魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~ https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...