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第4章 深い森に迷う二人の姉
第295話 聖女への道
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ガーラム修道院の奥にある小さな部屋。素朴な小さな机と壁に本棚があり、机の裏側から森の窓からは木漏れ日が優しく差し込んでいた。机の左手には正面にある出入り口とは違う扉がある。
椅子に座るグルファーブル、机の向こう側にはウォルフが膝をついて頭を下げている。ここは福音派の教皇グルファーブルの執務室である。
「彼女が襲われたのですか…… うーむ。問題だねぇ。ウォルフ」
「はっ…… 申し訳ございません」
謝罪するウォルフに頭を下げさせたまま、グルファーブルは彼を見て顔をしかめ口を開く。
「侵入者の詳細は?」
「追手を放ちましたが全て殺されておりました」
ウォルフは悔しそうに答える。彼の視線の先には磨かれ黒みがかって鮮やかに輝く床の木目が見えている。彼の視線の十センチほど先にはフカフカの机が乗った黒い絨毯が見えている。ウォルフの額には汗がじんわりとにじんでいる。
「そうですか。まぁいいでしょう。いくら犠牲を払っても守れれば良いのです」
グルファーブルの言葉に、ウォルフは安堵の表情を浮かべ静かに立ち上がった。視線を立ち上がったウォルフに向けグルファーブルは尋ねる。
「襲撃者のめぼしは?」
「おそらくは…… 冒険者ギルドの者たちかと……」
「ふむぅ…… ルドルフを通じて抗議しておきましょう……」
書類を手に取って目を通すグルファーブルだった。ウォルフが口を開いて話を続ける。
「教育係の息子は生きております…… 彼を粛清しましょうか?」
グルファーブルは視線をウォルフに向けず、書類に目を向けながらしばらく考えていた。
「そうですね…… 挽回の機会を与えなさい。アーリア様は罪を許されるでしょう」
淡々と書類を見つめながら興味なさげにグルファーブルは答えた。ウォルフは黙って彼の言葉を聞いていた。グルファーブルはニヤリと笑ってウォルフに顔を向けた。
「さて…… 復活日まであと三日ですね。料理の手配をします」
グルファーブルは持っていた書類をウォルフに差し出した。ウォルフは書類を受け取り目を通した。
「これは…… よろしいのですか?」
「えぇ。この地で福音派の料理を再現できる者は彼しかいません。ルドルフから通達してもらいます」
嬉しそうに笑うグルファーブルだった。ウォルフは唖然として黙っているとグルファーブルが話を続ける。
「料理はこれで…… あとは彼女の準備ですね。どうですか?」
「いまだにご自覚がないようです」
「そうですか」
ウォルフの答えを聞いて小さくグルファーブルは首を横に振る。
「では…… 以前、話をしていたようにお願いいたしますね」
「あっあれを…… ほっ本当によろしいのでしょうか?」
躊躇するウォルフにグルファーブルは彼を見上げて静かに口を開く。
「何か心配ですか?」
「いっいえ…… お目覚めになったばかりで…… ご負担になるのではと……」
「大丈夫。女神アーリア様が必ずや我々に福音をもたらしてくれますよ。それに…… もう時間もありません。彼女には自覚してもらうんです」
手に持っていた書類をグルファーブルは机に置き力強くウォルフを見た。彼の視線は鋭くウォルフを捉えている。表情は穏やかだが、グルファーブルの視線はウォルフに対して脅しを含み強要している。
「いいですね?」
「ぎょっ御意……」
念を押すグルファーブルにウォルフは頭をさげ了承した。
「もうすぐです…… あなたはこれまで以上に守備に力を注ぎなさい」
「御意!」
左手を胸に置きウォルフは頭を下げた。話が終わりウォルフは執務室から出て行く。グルファーブルの部屋から出たウォルフは廊下を歩いていた。
「ガイルか……」
気配を感じたウォルフは立ち止まり、視線を横に動かしつぶやいた。彼の背後にいつの間にか神聖騎士ガイルが居て膝をついていた。
ジッとガイルはウォルフの背中を見つめている。ガイルから送られる視線は鋭く、どこか殺気を帯びている。ウォルフが振り向いて動けばガイルは剣を抜き彼に斬りかかりそうな雰囲気を醸していた。
「案ずるなお前たちの処分は免れた。ただ…… 次はないぞ」
「はっはい」
顔を前に向けたままウォルフはガイルに声をかけた。彼の言葉にガイルは返事をし、殺気がスッと消えていく。ウォルフはゆっくりとガイルに体を向けた。膝をついたままでガイルを見下ろしウォルフが口を開く。
「エッレブラッディアートの準備をしろ」
「わかりました。すぐにお持ちいたします」
ガイルは立ち上がり振り向くと、廊下の奥の暗がりに姿すっと姿を消した。
「ふん…… 我々が自立するまでの辛抱だ…… それもこれも彼女自覚が……」
廊下の窓から外を見つめ厳しい表情でつぶやくウォルフだった。
しばらくして…… ウォルフとガイルは地下遺跡を移動していた。鉄格子で閉じられた通路まで二人がやってきた。
「開けろ」
「へい」
鉄格子の向こう側に体色が紫色の魔族が二人立っており、ガイルが声をかけると魔族の一人が南京錠を開け鎖を外す。もう一人の魔族が扉を持って二人を通した。南京錠を開けた魔族は二人が通ると再び鎖をかけ始める。
「彼女はどうしている?」
ウォルフが扉を開けた魔族に声をかけた。
「ぐっすり寝てますよ。ただ…… 女なんでね?」
「なんだ?」
「部下たちが色めきだっているんですよ…… ぐぐぐぐぐ!!!」
「えっ!?」
ウォルフが話をしていた魔族を睨み指を鳴らした。魔族の胸に赤い十字架が浮かびあがる。赤い十字架の上には蛇が巻き付き這いずり回って動いている。十字架が浮かび上がると魔族は苦しみ、立って居られずに膝をういた首を押さえていた。
「たっ助けて…… ブギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
這いずり回っていた蛇が十字架の先端から首を伸ばし、口を開け魔族の胸から首に向かい噛みついた。噛みつくと同時に魔族の頭は破裂し周囲に中身をぶちまけた。鉄格子や壁、さらにウォルフの体に魔族の頭部の肉片や血がかかる。ウォルフは迷惑そうに服についた血肉を払う。
「うっウォルフ様……」
「ガイルよ。何か勘違いしているようだ…… 立場をわきまえさせよ」
ウォルフはガイルに話すと一人で歩いていく。
「もっ申し訳ありません…… おい! こいつを片付けておけ! さっさとしろ」
慌ててガイルは膝をつきウォルフに謝罪をし、南京錠をかけていた魔族に命令をだすのだった。
「はっはい」
魔族は怯えた表情でガイルと同じように返事をした。ウォルフは振り返ることなく一人で歩いていく。慌てて立ち上がったガイルはウォルフを追いかけていくのだった。
ウォルフは地下遺跡から地上へと出た。彼の後に続いてガイルが地上へと出た。
「ムゥ」
「はっ! お前達! 何をしている!!! どけ!」
家を見たウォルフが顔をしかめると、ガイルが慌てて走りだして叫んだ。家の屋根に三人の魔族が張り付いていた。窓から家の中を覗き込んでいたようだ。魔族たちはガイルに叫ばれ渋々といった様子で飛び去った。
不機嫌そうに顔をしかめウォルフは家に入るのだった。二人はディーアの部屋へと入った。ベッドでディーアは穏やかに寝ていた。ウォルフとガイルはベッドの横まで来て膝をついた。
「聖女様…… よかった」
ウォルフは穏やかに眠るディーアを見て安堵の表情を浮かべた。ウォルフの右手をディーアの額の上にかざす。彼女の額に触れないようにウォルフの手は二十センチほど距離を取っている。彼の手が黄色く光りだした。直後にディーアが目を開いた。
「あっ! ウォー君! それにガイルも! こんにちは!」
目を開けたディーアはウォルフを見て飛び上がるようにして体を起こした。ウォルフは慌てて手をひっこめる。
「こんにちはディーア様……」
「あれ!? おばあは?」
体を起こしたディーアに挨拶をするウォルフだった。二人の姿を見たディーアが首を傾げた尋ねる。
「ディーア様…… 乳母は用事でしばらく戻って来ません」
「えぇ!? そうなんだ……」
ウォルフの言葉に寂しそうにしょんぼりとするディーアだった。
「あっでも…… おばあは最後に見たときは…… 姿が変わって…… あれは……」
ハッと目を大きく見開きウォルフは振り向きガイルを睨む。ガイルは膝をついたまま気まずそうに視線をずっと床に向けていた。
ウォルフは表情を笑顔に変えディーアに声をかける。
「ディーア様…… 少し記憶が混乱しているようですね…… おい!」
振り向きウォルフは右手をガイルに向かって差し出した。ガイルはウォルフに赤褐色の液体が入った瓶を渡す。
「これは?」
「薬です。侵入者が入って来てしまったのでしばらくは周囲がうるさいですからね。これを飲めばよく眠れるようになります」
「侵入者? 違うよ…… あれは……」
優しく穏やかに話すウォルフ、ディーアは首をかしげた。ディーアの言葉にウォルフは目を大きく見開いて焦った様子で彼女に尋ねる。
「ディーア様!? 侵入者にお会いになったのですか?」
「えっ!? ううん…… しっ知らない! ただおばあと一緒に誰かいた……」
「そっそうですか」
ホッと胸をなでおろすウォルフだった。ディーアはウォルフの雰囲気から、怒られるかも知れないととっさに嘘をついた。ガイルはディーアを見て表情を厳しくするのだった。
「じゃっじゃあ…… 薬をお飲みください」
「うん!? 苦くない?」
「大丈夫ですよ」
瓶を開けたウォルフはディーアのベッドに座り瓶を彼女の口元へ持って行った。ディーアは素直にウォルフの瓶を手に取り薬を口に含んだ……
「ゲッ!? 嘘つき! 苦いじゃん!!! あれ…… 私……」
薬を口に含んで顔をしかめてウォルフに苦情を言うディーアだった。しかし、直後に彼女の目はうつろになりぼーっとしてベッドで静かに座る。
ウォルフはディーアを心配そうに見つめるのだった。
椅子に座るグルファーブル、机の向こう側にはウォルフが膝をついて頭を下げている。ここは福音派の教皇グルファーブルの執務室である。
「彼女が襲われたのですか…… うーむ。問題だねぇ。ウォルフ」
「はっ…… 申し訳ございません」
謝罪するウォルフに頭を下げさせたまま、グルファーブルは彼を見て顔をしかめ口を開く。
「侵入者の詳細は?」
「追手を放ちましたが全て殺されておりました」
ウォルフは悔しそうに答える。彼の視線の先には磨かれ黒みがかって鮮やかに輝く床の木目が見えている。彼の視線の十センチほど先にはフカフカの机が乗った黒い絨毯が見えている。ウォルフの額には汗がじんわりとにじんでいる。
「そうですか。まぁいいでしょう。いくら犠牲を払っても守れれば良いのです」
グルファーブルの言葉に、ウォルフは安堵の表情を浮かべ静かに立ち上がった。視線を立ち上がったウォルフに向けグルファーブルは尋ねる。
「襲撃者のめぼしは?」
「おそらくは…… 冒険者ギルドの者たちかと……」
「ふむぅ…… ルドルフを通じて抗議しておきましょう……」
書類を手に取って目を通すグルファーブルだった。ウォルフが口を開いて話を続ける。
「教育係の息子は生きております…… 彼を粛清しましょうか?」
グルファーブルは視線をウォルフに向けず、書類に目を向けながらしばらく考えていた。
「そうですね…… 挽回の機会を与えなさい。アーリア様は罪を許されるでしょう」
淡々と書類を見つめながら興味なさげにグルファーブルは答えた。ウォルフは黙って彼の言葉を聞いていた。グルファーブルはニヤリと笑ってウォルフに顔を向けた。
「さて…… 復活日まであと三日ですね。料理の手配をします」
グルファーブルは持っていた書類をウォルフに差し出した。ウォルフは書類を受け取り目を通した。
「これは…… よろしいのですか?」
「えぇ。この地で福音派の料理を再現できる者は彼しかいません。ルドルフから通達してもらいます」
嬉しそうに笑うグルファーブルだった。ウォルフは唖然として黙っているとグルファーブルが話を続ける。
「料理はこれで…… あとは彼女の準備ですね。どうですか?」
「いまだにご自覚がないようです」
「そうですか」
ウォルフの答えを聞いて小さくグルファーブルは首を横に振る。
「では…… 以前、話をしていたようにお願いいたしますね」
「あっあれを…… ほっ本当によろしいのでしょうか?」
躊躇するウォルフにグルファーブルは彼を見上げて静かに口を開く。
「何か心配ですか?」
「いっいえ…… お目覚めになったばかりで…… ご負担になるのではと……」
「大丈夫。女神アーリア様が必ずや我々に福音をもたらしてくれますよ。それに…… もう時間もありません。彼女には自覚してもらうんです」
手に持っていた書類をグルファーブルは机に置き力強くウォルフを見た。彼の視線は鋭くウォルフを捉えている。表情は穏やかだが、グルファーブルの視線はウォルフに対して脅しを含み強要している。
「いいですね?」
「ぎょっ御意……」
念を押すグルファーブルにウォルフは頭をさげ了承した。
「もうすぐです…… あなたはこれまで以上に守備に力を注ぎなさい」
「御意!」
左手を胸に置きウォルフは頭を下げた。話が終わりウォルフは執務室から出て行く。グルファーブルの部屋から出たウォルフは廊下を歩いていた。
「ガイルか……」
気配を感じたウォルフは立ち止まり、視線を横に動かしつぶやいた。彼の背後にいつの間にか神聖騎士ガイルが居て膝をついていた。
ジッとガイルはウォルフの背中を見つめている。ガイルから送られる視線は鋭く、どこか殺気を帯びている。ウォルフが振り向いて動けばガイルは剣を抜き彼に斬りかかりそうな雰囲気を醸していた。
「案ずるなお前たちの処分は免れた。ただ…… 次はないぞ」
「はっはい」
顔を前に向けたままウォルフはガイルに声をかけた。彼の言葉にガイルは返事をし、殺気がスッと消えていく。ウォルフはゆっくりとガイルに体を向けた。膝をついたままでガイルを見下ろしウォルフが口を開く。
「エッレブラッディアートの準備をしろ」
「わかりました。すぐにお持ちいたします」
ガイルは立ち上がり振り向くと、廊下の奥の暗がりに姿すっと姿を消した。
「ふん…… 我々が自立するまでの辛抱だ…… それもこれも彼女自覚が……」
廊下の窓から外を見つめ厳しい表情でつぶやくウォルフだった。
しばらくして…… ウォルフとガイルは地下遺跡を移動していた。鉄格子で閉じられた通路まで二人がやってきた。
「開けろ」
「へい」
鉄格子の向こう側に体色が紫色の魔族が二人立っており、ガイルが声をかけると魔族の一人が南京錠を開け鎖を外す。もう一人の魔族が扉を持って二人を通した。南京錠を開けた魔族は二人が通ると再び鎖をかけ始める。
「彼女はどうしている?」
ウォルフが扉を開けた魔族に声をかけた。
「ぐっすり寝てますよ。ただ…… 女なんでね?」
「なんだ?」
「部下たちが色めきだっているんですよ…… ぐぐぐぐぐ!!!」
「えっ!?」
ウォルフが話をしていた魔族を睨み指を鳴らした。魔族の胸に赤い十字架が浮かびあがる。赤い十字架の上には蛇が巻き付き這いずり回って動いている。十字架が浮かび上がると魔族は苦しみ、立って居られずに膝をういた首を押さえていた。
「たっ助けて…… ブギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
這いずり回っていた蛇が十字架の先端から首を伸ばし、口を開け魔族の胸から首に向かい噛みついた。噛みつくと同時に魔族の頭は破裂し周囲に中身をぶちまけた。鉄格子や壁、さらにウォルフの体に魔族の頭部の肉片や血がかかる。ウォルフは迷惑そうに服についた血肉を払う。
「うっウォルフ様……」
「ガイルよ。何か勘違いしているようだ…… 立場をわきまえさせよ」
ウォルフはガイルに話すと一人で歩いていく。
「もっ申し訳ありません…… おい! こいつを片付けておけ! さっさとしろ」
慌ててガイルは膝をつきウォルフに謝罪をし、南京錠をかけていた魔族に命令をだすのだった。
「はっはい」
魔族は怯えた表情でガイルと同じように返事をした。ウォルフは振り返ることなく一人で歩いていく。慌てて立ち上がったガイルはウォルフを追いかけていくのだった。
ウォルフは地下遺跡から地上へと出た。彼の後に続いてガイルが地上へと出た。
「ムゥ」
「はっ! お前達! 何をしている!!! どけ!」
家を見たウォルフが顔をしかめると、ガイルが慌てて走りだして叫んだ。家の屋根に三人の魔族が張り付いていた。窓から家の中を覗き込んでいたようだ。魔族たちはガイルに叫ばれ渋々といった様子で飛び去った。
不機嫌そうに顔をしかめウォルフは家に入るのだった。二人はディーアの部屋へと入った。ベッドでディーアは穏やかに寝ていた。ウォルフとガイルはベッドの横まで来て膝をついた。
「聖女様…… よかった」
ウォルフは穏やかに眠るディーアを見て安堵の表情を浮かべた。ウォルフの右手をディーアの額の上にかざす。彼女の額に触れないようにウォルフの手は二十センチほど距離を取っている。彼の手が黄色く光りだした。直後にディーアが目を開いた。
「あっ! ウォー君! それにガイルも! こんにちは!」
目を開けたディーアはウォルフを見て飛び上がるようにして体を起こした。ウォルフは慌てて手をひっこめる。
「こんにちはディーア様……」
「あれ!? おばあは?」
体を起こしたディーアに挨拶をするウォルフだった。二人の姿を見たディーアが首を傾げた尋ねる。
「ディーア様…… 乳母は用事でしばらく戻って来ません」
「えぇ!? そうなんだ……」
ウォルフの言葉に寂しそうにしょんぼりとするディーアだった。
「あっでも…… おばあは最後に見たときは…… 姿が変わって…… あれは……」
ハッと目を大きく見開きウォルフは振り向きガイルを睨む。ガイルは膝をついたまま気まずそうに視線をずっと床に向けていた。
ウォルフは表情を笑顔に変えディーアに声をかける。
「ディーア様…… 少し記憶が混乱しているようですね…… おい!」
振り向きウォルフは右手をガイルに向かって差し出した。ガイルはウォルフに赤褐色の液体が入った瓶を渡す。
「これは?」
「薬です。侵入者が入って来てしまったのでしばらくは周囲がうるさいですからね。これを飲めばよく眠れるようになります」
「侵入者? 違うよ…… あれは……」
優しく穏やかに話すウォルフ、ディーアは首をかしげた。ディーアの言葉にウォルフは目を大きく見開いて焦った様子で彼女に尋ねる。
「ディーア様!? 侵入者にお会いになったのですか?」
「えっ!? ううん…… しっ知らない! ただおばあと一緒に誰かいた……」
「そっそうですか」
ホッと胸をなでおろすウォルフだった。ディーアはウォルフの雰囲気から、怒られるかも知れないととっさに嘘をついた。ガイルはディーアを見て表情を厳しくするのだった。
「じゃっじゃあ…… 薬をお飲みください」
「うん!? 苦くない?」
「大丈夫ですよ」
瓶を開けたウォルフはディーアのベッドに座り瓶を彼女の口元へ持って行った。ディーアは素直にウォルフの瓶を手に取り薬を口に含んだ……
「ゲッ!? 嘘つき! 苦いじゃん!!! あれ…… 私……」
薬を口に含んで顔をしかめてウォルフに苦情を言うディーアだった。しかし、直後に彼女の目はうつろになりぼーっとしてベッドで静かに座る。
ウォルフはディーアを心配そうに見つめるのだった。
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