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ネコ軍団

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第2章 闇に沈む鉱山を救え

第86話 道具屋の来客

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 翌日、グレンとクレアの二人はハンナに会うため、ロボイセの南にある職人街へとやってきていた。武具店や加工屋がならぶ通りは、商人や職人や冒険者などが行き交いにぎやかだった。
 とある店の軒先に置かれた棚に真っ白な猫が寝ていた。それを見たクレアは嬉しそうに近づき撫でて声をかける。

「こんにちはー。元気ですねぇ。偉いですねぇ」

 体を前に傾けて声を弾ませ、クレアは猫の背中をお撫でながら話しかける。棚から少し離れたところでグレンは彼女を見守っていた。クレアは猫に顔を近づけて何かつぶやいた。

「にゃー!」
「そうですか。ありがとうございます」

 クレアの言葉に元気よく鳴いて答える猫、彼女は笑って優しく背中を撫でるのだった。クレアは何度か猫の耳元で何かをつぶやきそれに猫が鳴いて答えると言うのを繰り返した。

「じゃあ…… またね」

 名残惜しそうにクレアが猫からはなれ、二人は歩くのを再開する…… 隣を歩くクレアにグレンは前を向いたまま尋ねる。

「なんだって?」
「尾行や監視はありません。それと…… ハンナさんとブライアンさんの他にもたくさん居るみたいですね。彼女達も一緒です。おそらくは……」
「なるほどね。じゃあ話は早く済みそうだ」
「ですねぇ」

 クレアとグレンは前を向いたまま嬉しそうに笑うのだった。
 少し歩くとハンナの家が見えてくる。彼女の家は町の他の建物とは違って、煙突がある緑色の屋根の木と石で出来ていた。
 以前に来た時とは違い煙突は煙をだしておらず静かにたたずんでいる。クレアはハンナの家の小さな木製の扉をノックする。すぐに扉が開きハンナが姿を表した。彼女は二人を見て安堵の表情を浮かべた。

「やぁ。こんにちは…… どうぞ」

 一歩前に出たハンナは周囲を伺ってから二人を家の中へと通す。グレンとクレアは家の中へ入る。
 扉の向こうは魔法道具職人であるハンナの作業場で、部屋の左手壁際の中央に煙突が付いた大きなレンガで組まれたかまどがある。かまどの向かい側の壁際に作業台があり周囲にはハンマーなどの道具が置いてある。今日は作業をしないのかかまどの火は落とされている。
 昼間なのに左右の壁と入り口横にある窓の全てにカーテンがかけられ薄暗い。
 作業場の奥には居住スペースへ向かう扉があり、その前にはハンナの師匠ブライアンが立っている。ブライアンの横に見かけない人物が立っていた。上等な服に丸い体型をした短い白髪混じりの髪の中年の女性で、優しい目をして指には大きな赤い宝石がついて指輪をしている。

「こんにちは」

 クレアとグレンは女性に挨拶をして彼女の前へ向かう。女性はクレア達を見てにこやかに微笑む。

「私達は……」
「冒険者ギルドの支援員…… クレアさんとグレンさんですね」

 名乗ろうとしたクレアだったが、女性は二人のことを知っていた。首をかしげたクレアが女性に尋ねる。

「あなたは?」
「私は鉱石商のフラックと申します」
「そうですか。あなたが」
 
 フラックは自分の胸に手を置いて名乗った。すぐにクレアに向かって右手を差し出す。クレアはニコッと笑って彼女の右手を掴み挨拶をした。

「後ろに二人が居ますよね? それに…… 周囲を仲間さん達で囲ってるみたいですけど…… 大丈夫です。私たちはあなた達の敵ではありません」
「えっ!?」

 握手をしたままクレアはフラックの後ろにある扉を見てる。彼女は穏やかに笑っているが目は真剣だった。

「それとも私達を捕まえますか? 抵抗組織さん」
「そっそれは私の商会をロボイセの教会が勝手にそう呼んでるだけです……」

 手に汗をかきながら、フラックはクレアから手を離した。ブライアンは小さくうなずき、横を向くと自分の背後の扉をノックした。

「二人共。でてきなさい」

 ブライアンの言葉に反応し扉が静かに開いた。そこにはメルダとキティルが立っていた。キティルは気まずそうにして、メルダは目を鋭くして不機嫌そうにしてる。

「キティル…… メルダ……」

 グレンが二人の名前をつぶやく。二人はグレンの言葉に反応することはなかった。
 扉の前から全員が作業場のかまどの前へと移動した。かまどを背にしてグレンとクレアが並んで立ち、その向かいにブライアン、ハンナ、フラックの三人が並んでいて、キティルとメルダは三人の後ろに居る。

「すまんのう。ここは作業場じゃ椅子など気の利いたもんはないぞ」
「かまいません。少しお話をしたかっただけですから…… じゃあ始めましょうか」
「ちょっ! ちょっと待ってくれ」

 クレアを制したハンナが窓へ行ってカーテンの隙間から外の様子をうかがう。その様子を見ていたクレアは微笑んでハンナに声をかけた。

「大丈夫ですよ。尾行はいませんよ。今日はある二人組が第五十三坑道へ魔物狩りへ行くのでそっちに付きっきりでしょうからね」
「そっそうか」

 窓の外を見ていたハンナは少し恥ずかしそうに振り向き、ブライアンの横へと戻ってきた。彼女が戻るとクレアがにこやかに話しを始める。

「じゃあ、話しを聞いてください」

 クレアは第五十三坑道を調査して起きたことを話し始めるのだった。

「ダークオーシャンワーム…… そんなものまで持ち込んでいたなんて……」

 話の途中でフラックが悔しそうにつぶやいた。クレアはニッコリと微笑んで彼女に答える。

「でも、もう大丈夫です。駆除は済んでますし操っていた魔獣使いは私達の手にあります」
「それは素晴らしい…… さっそく作業再開の準備をしないとですね」

 クレアから話しを聞いて、フラックは嬉しそうにしていた。真顔で静かにクレアはフラックを見ながらうなずいた。笑ったフラックはブライアンに顔を向けた。

「ブライアン! 水抜き道具の準備をお願いします」
「おう! まかせておけ」

 右手で威勢よく胸を叩くブライアンだった。フラックはさらに彼に尋ねる。

「準備には三日くらいかかりますか?」
「はぁ!? 何をいってやがんでい。今日中に終わらせるぞ。なぁハンナ!」
「師匠…… さすがに…… それは無理だ。せめて二日はもらわないと……」

 威勢よく隣に立つハンナの肩を叩くブライアンだった。迷惑そうにハンナはブライアンの言葉を否定した。
 ブライアンは眉を引くつかせ眉間にシワ尾をよせる。
 
「なっなんだと!? こののろまが!!」
 
 ハンナに悪態をつくブライアンだった。だが、いつものことなのか彼女は動じることなく彼をたしなめる。

「のろまじゃない。かまどに火も入ってない。水属性クリスタルの手配にそれを動かす装置の調整にだって時間がかかるのは分かるだろう。師匠…… あんたがボケているだけだ」
「なんだと!? うるせえ!!! とにかくさっさと準備をしろ!! それとお前が設置に行くんだからな」
「あぁ。師匠はもうとっくに足腰にガタが来てるからな。大丈夫、しっかかりと私が代わりを務めてやるぞ」
「うるせええ! さっさと始めるぞ」

 ニヤリと笑いながら話すハンナに、ブライアンは恥ずかしそうに作業台をさして準備を始めるように命令するのだった。

「ふふふ。お願いしますね」

 二人の様子を見てフラックは微笑んでいた。間髪いれずにクレアがフラックに向かって口を開く。

「では、ハンナさんの護衛の依頼を受付のプリシラまでお願いします。こちらで最高の護衛を用意しますから」
「えぇ。わかりました」

 フラックは笑顔で答える。グレンとクレアは顔を見合わせてうなずく。それを見たメルダが慌ててフラックとクレアの間に割り込んで来た。

「まっ待ちなさい。この人達は冒険者ギルド! つまりは教会の人間よ。信用できないわ」
「えっ!? しっしかし……」

 困った顔でフラックはグレン達に顔を向けた。メルダはグレンとクレアに厳しい視線を向けている。だが、クレアはこうなることがわかっていたのか、特に驚くこともなくクレアはメルダに向かって微笑んだ。

「だったら二人も一緒にハンナさんを護衛すれば良いんですよ。冒険者なんですから!」
「なっ!? ふざけないで! なんで」

 メルダはクレアの提案を拒否した。するとクレアはメルダを見つめ腕を組む。

「ふふふ。メルダちゃんとキティルちゃんじゃ無理ですかねぇ。テオドール時代からランクも一つしか上がってないみたいですしね……」

 見下したように笑ってクレアだった。クレアはメルダに対してあからさまに挑発していた。メルダはそんな彼女を鼻で笑い挑発には乗らない。

「ふん。無駄よ。あんたの挑発になんか乗らないわ」

 右手を前にだしてクレアに厳しい表情を向けるメルダ、クレアはそんな彼女を見てニヤリと笑う。

「残念ですね。地底湖にはテオドールで見た石柱と同じものもあったのに……」
「えぇ!? 本当ですか!?」

 クレアの言葉にキティルが食いつく。彼女は行方不明の親友エリィを探す手がかりを求めて、メルダと古代遺跡を探す旅をしている。この町に来たのも古代遺跡が発見されたという噂を聞いたためだ。二人は何度か地底湖への調査を行おうとしたが魔物に阻まれてできなかった。フラックと行動をともにしてるのは、魔物を駆除し古代遺跡を調べるためだった。

「キティル! ダメよ!」
「でっでも…… 石柱にエリィ…… エリィの……」

 メルダはキティルを止めた。彼女は目に涙をためてうつむいてしょんぼりとした表情をする。

「えぇ…… うぅ…… キティル……」

 うつむくキティルの横でメルダは困惑した様子を見せる。その様子を見ていたグレンとクレアはニヤニヤと笑っていた。

「もう! わかった。行くわよ。キティル」
「本当!? ありがとう」

 顔をあげて嬉しそうにキティルがうなずく。クレアは二人を見てニッコリと微笑むのだった。
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