悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

44.アイリのくわだて3

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泣き顔のマリーとそれを心配するそぶりを見せるアイリが歩いてくるのを見つけ、驚くジョン。

「ジョン、マリーがプリムラ嬢にいじめられていたのよ。
それについてお話があるのだけど、ちょっといいかしら?
マリーは、ここで待っていてね。」

アイリはマリーをちらりと見ると、ジョンの袖を引っ張ってすぐそばの木陰に連れて行く。

「これを」

アイリは忍びもっていたマリーの髪飾りを、ジョンのジャケットのポケットに滑り込ませる。

「何とかしてプリムラの荷物に紛れ込ませておいてね。
あと、マリーをどこにも寄り道をさせずに自宅へ連れ帰って。
私はまだやることがあるの。」

アイリはそう言うと、校舎の方へ引き返していった。
ジョンは、それを見送ると校門で立ち尽くしているマリーの元へ駆け寄っていった。

「マリー、お前大丈夫か?」

「お兄様とは話したくありません。
カイル兄様と約束があるのよ……。」

アイリの味方であるジョンとは関わりたくないという態度を露わにするマリー。

「なら、研究棟まで付き添うから。
それならいいだろ?」

マリーの荷物を引き取り、ジョンはアイリに見られていないか慎重に回りを確認しながら研究棟へ向かう。
ポケットの中にあるマリーの宝物の存在を感じながら、マリーにはスパイの件を話そうかと気持ちが揺れ動く。
ふと後ろを振り向くと、今にも泣きだしそうな顔でふらふらと歩くマリーの様子が見え、心がえぐられそうだった。

そうこうしているうちに研究棟へ到着し、呼び鈴を鳴らす。
対応してくれた受付員に、兄の名を告げると、しばらくしてカイルが研究棟から出てきた。
弟妹の様子がおかしいことに気づくと、カイルはジョンの手を引っ張り少し離れた場所へ行く。
そして、マリーに声が届かないように弟を責めたてた。

「何があった!」

「アイリだよ……。
今はまだ詳しくは話せない。
もうすぐ、兄上にもマリーにもすべて話せると思うから、それまでマリーを頼むよ。」

「あの女狐め。またマリーを傷つけたのか!
お前はいつまであの女の尻を追っかけるつもりなんだ……!」

「ごめん……、絶対に今度すべてを話すから。ごめん!」

ジョンは、持っていたマリーの荷物をカイルに押し付けて駆け出すと、妹をちらりと見て走り去っていった。


そのころ、アイリは生徒会室のドアをノックしていた。
中からアンドレアスが出てくる。

「もう、彼女を家へ送っていったのかい?」

「マリーは兄のジョンに託しましたので大丈夫ですわ。
私はさきほど見たことをすべてアンドレアス様にお話ししたくて……。
アンドレアス様のお役に立ちたいのです!」

アイリは大きく潤んだ瞳でアンドレアスを見つめる。

「そうか。それでは、話を聞かせてもらえるかい?」

アンドレアスは訝しく思いつつもアイリの話を聞くことにした。

(プリムラ嬢は少しわがままが過ぎるからな……)

フレエシアとリーリウムは、姉のヴィオラを尊敬する対象として一線を引いた付き合いをしている。
しかし、末の妹プリムラだけは、ヴィオラにべったりと甘えてくる。
ヴィオラとアンドレアスが庭をいっしょに散歩したり、街へ出かけようとしたりすると、必ず付いて来たがったし、実際に付いてきてしまったこともある。

プリムラはもう少しで13歳。
ヴィオラの後ろをついて回っていた頃はさらに幼かったのだから仕方がないことなのだが、アンドレアスはそういう風には考えられなかった。
アンドレアスは常にヴィオラのそばにいて、彼女に愛されたかった。
でも、いつだってヴィオラの愛情はプリムラに対するものの方が深くて大きかったように感じて、悲しかった。

アイリは、そんなアンドレアスの苦悩を知っていた。
アンドレアスの寂しさを埋めてあげられるのは自分なのだと確信しているのだ。

「アンドレアス様、ここでは他の役員の方がいついらっしゃるかわかりません。
良ければ、街のカフェにでも行きませんか?
内緒話をするのに、ちょうどいいお店を知っているんです。」

「ああ、そうだな、そうしよう。」

アンドレアスは、放課後にフレエシアたちが集まることを思い出し、アイリの提案に同意したのだった。
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