悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

文字の大きさ
52 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

52.それぞれの教室で

しおりを挟む
教室では、アイリを阻むための令嬢たちによる壁が作られていた。
アイリはそちらをちらりと見て、リーリウムと目が合うとぱっと花が咲いたような満面の笑みを見せた。

(なにかしら? ヘンリクス様に何かしたのかしら?)

見た目には愛らしいアイリの笑顔も、リーリウムにとっては呪いのように感じられる。
ご機嫌そうなアイリは、ルドヴィクやルヴァリへは近づこうとはせず、前の方の席に大人しく着席した。

「俺たちはもう眼中にないみたいだな。」

ルドヴィクが、ほっとした様子で話す。

「先ほど、ヘンリクス様を追いかけて行って……。
何かあったのでしょうか?」

“逆ハーエンド”か、アンドレアスを目指していると思い込んでいたが、アイリはやはりヘンリクスを狙っているのかもしれないと考えはじめると、不安になる。

「かもしれない。あとでヘンリクス本人に聞いてみるしかないな。」

「そう、ですわね。」

「きっと大丈夫だよ。ヘンリクスはしっかり者だから。それにディナルドもいるしね。」

ルヴァリが、リーリウムをなぐさめる。
まさか、ディナルドがアイリに突破されているとは露とも思っていなかった。

「はい。ありがとうございます。」

リーリウムがルヴァリに笑顔で礼を言うと同時に、教授が教室に入ってきて教壇の前に立つ。
これから、たいくつな授業が始まる合図だった。


プリムラの教室では、今朝のアイリの言動が話題になっていた。

「マリー様とあの非常識な令嬢は親友だったの?」

「マリー様はプリムラ様と仲が良かったのでは?」

「あのように大声で騒がれて、プリムラ様がおかわいそうだわ。」

クラスメイトたちは、口々にプリムラへの同情の言葉を言い合った。

「マリー様は、プリムラ様をだましていたのかしら?」

噂話が、徐々にマリーを悪者にしていく。
マリーは、教室の後ろの方で本を読んでいたが、本を持つ手が小刻みに震えていた。

「みなさん、わたくしは大丈夫ですわ。
きっと、アイリ嬢が何か勘違いをなさっているのよ。
それに、マリーはわたくしのお友だちよ。
わたくしがそう思っているのですから、マリーは何も悪くはないのよ。」

プリムラは、噂話に花を咲かせていた令嬢たちの集団に、あえて大きな声で話しかけた。
マリーにも聞こえるように。

「そ、そうですわよね。」

プリムラにたしなめられた令嬢たちは、そそくさと解散をした。

「マリー、少しよろしいかしら?
うふふ、勝手にマリーと呼び捨てにしてしまっているけれど、許してね。」

そう言って悪戯っぽく笑うと、プリムラはマリーの隣の席に腰かけた。

「昨夜、ジョン様から事情を聞きまして?」

プリムラの言葉に、マリーはこくんと小さくうなずく。

「そう。お兄様をあまり責めないであげてね。
今は、わたくしたちのためにいろいろと尽力してくださっているのだから。」

「はい、ありがとうございます。プリムラ様。」

泣きそうな、小さな声を絞り出すマリー。

「それでね、ヴィオラお姉様からあまり学校であなたと親しくしない方がいいと言われたの。」

ビクンっとマリーの肩が揺れる。

「アイリ嬢にわたくしたちが仲良しなのが見つかると、あなたに危害を加えるかもしれないから心配なの。
だから、残念だけど学園内ではあまり親しくできないのよ。」

「はい。」

プリムラから嫌われたわけではなかったと安心したようで、マリーの穏やかな声が戻ってくる。

「だからね、今度、お休みの日に馬車で迎えを行かせるから、こっそりおうちに遊びにきてほしいの。
またチョコレートのお話しも聞きたいし、マリーともっと仲良くなりたいから。
着てみて欲しいドレスもいっぱいあるのよ。」

「はい! 今度のお休みに伺います。」

涙と安堵が混じったようなマリーの小さな声は、きちんとプリムラにも届いていた。
プリムラは机の下でマリーの手を一瞬だけぎゅっと握ると、にっこり笑って席を立った。
いつ、アイリに様子を見られるか分からない。
まるで秘密の約束をしたようで、マリーもプリムラも少しワクワクとした気分になっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...